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夜の入口にて
誰かと誰かが話している
太陽が無限に没した後
地球という宝石箱はぶちまけられ
夜の入口にて
誰かと誰かが話している
蠢く闇に包まれて
密やかに、密やかに
....
白い部屋に横たわり
独り時が過ぎるのを
さっきからずっと眺めている
)右足の親指が急につり
)反り返ったまま動かない
無音無言の部屋のなか
時は流砂のように流れていき
私が上げる ....
折り重なる記憶の襞が
一枚一枚剥がれ落ちては色褪せ
何の感情も伴わずに
震えている、震えている
脱力して
欠落はせずに
只々遠く平板になっていくもの
反芻される記憶の渦に
今 ....
縁側で
ぷっと
西瓜の種飛ばし
放物線の先を
追っている
幼い子供が
独り居て
遠い夏の日
夏の午後
その日を生きる
幼子が
風に吹かれて
風に吹かれて
名無しで ....
未来から
遠い遠い過去の木霊
確かに響いてくるのなら
私たちはもはや何処にも属さず
あらゆるものに優しく開かれ
柔らかに終わりを待てばよい
)あまたの感傷を一つの確信に変え
ふる ....
熱風吹く光の午後、
女の子が木に登って
何かを夢中で取っている
何を取っているの?
思わず私がそう問い掛けると
女の子は秘密を見られた顔をして
突然姿を消してしまう
木の下に ....
あくび一つしてみては
生の実感とやらを
噛み締める
この明るい昼日中、
ひっきりなしに白雲流れ
外気は熱波、うねりにうねり
私は不安と恐怖を抱え
青い空を眺めている
歪んだ視界に映 ....
この深夜、
網戸越しの夜風に当たりながら
独り在ることに寛いで
宇宙の時流に乗っていく
すっと孤独に留まりながら
この隙間だらけのあばら家に
雷鳴が轟くのを待っている
境界の門が開く ....
静けさ 揺れる
春の雨、
光の空から
降り注ぎ
宇宙を回遊する言ノ葉たち
凝集しては時を刻み
思考の流れをこの界へ
屈曲しながら艶やかに
在る物、在る物、造形する
静けさ 奥 ....
透明な雨が降り
冬の夜を静かに濡らし
私は宇宙の孤独に座る
開けた窓から雨の匂いが流れ込み
濡れていく遠い森のざわめき始めて
貴女の声は透明な水底に沈んでいく
夢の蝶、舞う
遠去かる
宇宙の縁に触れ 燃えあがり
忽然と消え また現れ
あらゆる現の美をよろめかせ
その軌跡のおぼろな輪郭を
響かせて 響かせて
呼ばれている呼ばれている
この水の色開けて明るむ空に
アンテナが視界を邪魔しているが
呼ばれている呼ばれている
片足は泥水に浸かったまま
片手は雲を掴んだまま
己魂急かされて
何かが ....
暗闇に浸っている
暗闇に酔っている
ゆったり落ち着く
午前二時二十分に
俺は闇と対峙する
三歳から在る闇と
時が消滅していく
俺は闇に沈みいく
凄く落ち着き払い
俺は墜落していく ....
憧れと郷愁の感情は
対象を全く欠いたままに
どうしようもなく湧きあがり
魂の奥処に垣間開く
渦巻く宇宙の輝きの余韻
響き木霊し流れ出す
そうしてまた、
森羅万象と繋がり合う
止 ....
全ての想念をさっさと放棄して
全てのやり残しをさっさと諦めて
ぼんやり朦朧と夜陰に沈んだ
とき
夢も無く記憶の奥の眠り底
宇宙の調和に入っていける
のはなぜだろう?
(目覚めるなり
....
ああ なんていい風だろう
みんみん蝉が緑の木立に鳴いて
大きな鳥が素早く飛び立ち
鬱々とした気分が
涼やかに洗い落とされていく
この高曇りの八月十一日
[目を閉じれば未だ
橙 ....
暗闇のなか
玉ねぎを炒める香が
道向こうの団地から
風に乗ってやって来る
瞬間、
懐かしい顔顔顔 浮かんで
自然と涙が溢れ流れる
〈温ったかいな温ったかいな〉
僕は公園のベンチに座りな ....
道端で色褪せていく
この盛夏に色褪せていく紫陽花よ
アゲハ蝶がその繊細な触角を動かし
咲き誇った花から花へと優雅に飛び廻る時
あの青々と濡れ光っていたおまえは
早くも凋落の一途を辿っている
....
月見草
銀に揺れている
透明な水流になびき
引き寄せられ
傷んだ身体
俺は引きずっていく
引きずられていく
寒風吹き荒ぶなか
青、蒼、碧
陽光余りに眩しいこの真昼
俺の ....
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
孤立
は
死病
だ
人は人と
繋がらなければ
生きていけない
のに
金を持って
いないと
キリストだけ
を信じて
いないと
健康で
いないと
胃ナイト
クエネェシ ....
愛娘が毎朝八時に起こしに来る
歪み捩れた時空の層を超えるのは
なかなか大変だそうだ
[合鍵を作ってやろうか?ちゃんと電車に乗って来いよ]
おはようのキスをしながら僕は言う
[そんなことし ....
この夜に目が覚め
この夜底に触れる
私にはもはや
親兄弟家族親族はなく
現世的無縁仏だ
円やかな現世孤児だ
そこでは
私という存在が剥き出しで
そこでは
私という存在が真っ裸 ....
激情を極め
静けさを極め
祈りながら認識し
認識しながら祈る
この飢え切った界で
この哀しみの界で
導かれ 諦め
静謐に包まれ
光り輝くあの日の君を 僕は決して忘れない
失う
出会い
築いては
失い続けて
底を貫く本質
掴み取れたのか
沈んでしまうのか
進む船の舵取り主は
己が意志、病に抗う意志
沈んでしまうのなら仕方ない
精一杯やるんだ、もう ....
哀しみ降って来る
一斉に響きとなり
冷え震え降って来る
どうしようもないね、
この欠損だけはもう
ひたすら雨の降り続く
ひたすら鈍色の大海に
しとしとしとしと静か
大海に雨の降り続 ....
太陽よ、
絶え間無く爆発し続ける太陽よ
この地球の善も悪も曖昧も
均等に照らし出す太陽よ
その偉大な開け透けの愛
その圧倒的で広大なる愛
どうしたら
この私的感情の波を
あなたに合流さ ....
小学生時、
休み時間の校庭で
クラスメート達と遊んでいる最中
ふと空を見上げ
僕は目撃した、
覆い尽くしていた黒雲が割れ
垣間見えた空の青が裂け
一条の燃え響く光の帯
校庭で遊ぶ生 ....
長坂の
途を巻いて
舞い降りた天使は、
寄せ波引き波に気を合わせ
光の響きを七色の虹に変えて
足早に石灰岩の舞台に水を打ち
消え逝く人々の祈りを聴き取る。
独り独りの限界と可能性、 ....
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