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嵐の夜の、その翌朝、ひるがえるはずのない翼の夢に目醒めて、少年は歩き出した。岬の奥の家から、岬の先端の、海を臨む小高い丘陵へと。四年に一度の大きな時化の夜。その騒乱を波の背中に残して、空はひ ....
いつになく帰りの遅い彼を待ちわび、
うわぁーあたし超健気じゃーん?と肩で感じながら
鏡に映った腫れぼったい瞼と戦う。
ただいま
おかえり
今日はどうだった
特に何もなくてユキと騒いでた ....
{引用=八月の月で海鳴り
それでも僕らは響く波音を知っていた}
僕は今、紺碧の{ルビ海=マーレ}を閉じ込めた窓辺から
君に宛ててこの手紙を書いている
{ルビ ....
道端の親切にありがとうを言うおばあちゃん
電車のなか転職雑誌を広げて居眠りをするおじさん
パパの腕の中幸せそうにねむる赤ん坊
雑踏の中 たちどまるわたし
たすけてといえない教室
....
楠は#100、#150、#180、#220、#280、#400の順に紙やすりを当てると
曇りがとれて、すべすべになるんだ。
きょうは暑かった。
日が傾いて、ようやく軽くなった風が子供たちの声 ....
−祈りは役に立たない
いつか言われた
その言葉ずっと胸にひっかかっていたけど
やっぱり認められない
何かできることあるかなぁと探しても
何だかひとつも見つからなくて
結局いつも ....
あなたが
中古
静かに軋む二輪車の
匂い
角を曲がる
何かを思い出し
もう一度角を曲がる
イニシャルを失ったまま
あの縄跳びもまた
どこかへ行くの
駆け込み乗車は
錆びて
....
ゆうべのお日様と反対側の窓から
パリっと香ばしいクロワッサンとカフェオレを照らしていく
キッチンでは片手に乗るのからホームベースほどのお弁当箱に
基本は20品目の彩りと怒りと愛情をつめていく
....
その目
口
息
そのひそやかな
かなしみ よろこび
土のように
草のように
這うゆめ
翼は
灰色の空へ
海へ
(失うもの)
忘れる力
忘れぬ力
(沈 ....
ハーブの浴槽を
かき混ぜて
えらいねえらいねって
かき混ぜて
わたし、泣いてはいませんでしたか。
いいえ、それでも笑っていたんだと思います。
はらはらとこぼれていくのです。
あの小さ ....
白紙に色をのせるよに
言葉をぺたぺた並べていくと
彩に戸惑いうかびあがるは
像を結ばぬ心の調べ
淡にまぶされきわに立つのは
濃さに瞑れたきおくの階
筆に馴染んだ絵の ....
うたれるなら
雨がいい
果てるなら
土砂降りの中
世界が遠のく瞬間に
私は流星をみる
ここ何日か太陽光線により熱が体にこもってしまう
やっぱりこの夏の日差しというのは特殊で
例えば正義超人が本来持っていたような悪の観念と化学反応を起こし
恋をさせようとしたり
事件を起こ ....
1メートル50センチの
大きなトカゲが
突然下を向いて
ごぼっごぼっと吐いた
緑色のドロドロとしたものを
苦しそうに吐いた
トカゲは目をつぶって吐いた
わたしはそれをかき集め
ふと思い ....
遠い飛行機のような音を立てる
夜の、曇天
その鳴動、鳴動、鳴動、
大気は夜を続けるも
わたしは仰向けの形、ひっそりと静まり返り
暗く目を開けるだけで
何かを促す性能はな ....
森のかなたへ
碧をたどる
濡れた黒髪
指でなぞる
空をそのまま
うつしたような
蒼のしずく
ぽとり
ぽとりと
堕ちてゆく
ふかい水路へ
そこから生 ....
バスルームの飾り棚に
置き去りにされていた
JAZZの香
蓋を開けた刹那に
よみがえる記憶
ああそれは
一年も前のことで
そういえば私は
まだ泣いてもいなかった
立ち止まる午後
見上げる空
見下ろす街
切り取った直線のシルエット
時は規則正しく歩き
赤で止り
青で進む
直線の上
歪んで転がるもの
わき目に時は行く
....
夏を告げる鐘が鳴ると
少年たちの中で 天国が走り出す
光源のない白い光に満ちた中を
球や三角錐や立方体の闇が
行進する
思考線をよぎる空中魚族
(この椅子に坐るといつも
感応しようとしすぎてneuroticになるんだ)
その視軸 ....
3歳の{ルビ姪=めい}が
遠視矯正めがねを初めてかけて
鏡に映る見慣れない顔とにらめっこ
「似合うよ」
後ろから見守るママが言うと
にっ と{ルビ微笑=ほほえ}む君の目は
人よりも ....
何故かホームレスは街に棲む
しょざいなげに地下道に
初夏の花咲く公園に彼らは居る
両手いっぱいに袋を下げて
おきまりのレゲエ状態のヘアスタイル
かの国でも何故か彼らは
ショッピングバックを ....
梅雨の夜風に混じり込む体臭の湿気
雲にまいた砂混じりの渇いたため息
無気力にぽっかりあいた満月の
光子すらはらんで
みな本当の風を知らない
それらをすっかり失われた
古代の技術で精製し ....
壊れかけたラジオが
なぜだか中国語の放送だけを受信する
意味はまるでわからないが
聞き覚えのある声だ
演説口調に冒されて
空間は異次元的に歪んでゆき
西壁はすっかり半透明の灰色の寒天に ....
手首の上をながれてゆく触覚を足の裏に溜める。肌からにじみでる殺意が皮脂に溶け込んでしまうのは、私の内なる単子が水を吸った海綿だからだ。水色の球面を幾度となくめぐり、針をうしなった摩擦力。角の取れた立方 ....
久しぶりに家に帰ったら
家が他人行儀な素振りを見せた。
玄関の扉は
「いらっしゃい」
と、言い掛けて
「おかえりなさい」
と言い、
ベッドは
「ごゆっくり」
と ....
ああ 空に降る
冷たいしずくよ
どうしてそんなに
私のほほを濡らすのか
ああ あの暗い空から
美しいしずくが
いくつも沈んできて
今ここで つどうのか
冷えた手足は
あやしく ....
橋の下には
川が流れている
たくさんの落ち葉の側には
木が立っている
枕の上には僕の頭がある今、
天井の片隅からきみが僕を見ている
庭で猫が鳴いている
ああ、僕は死んでいるんだね
暗い ....
街が夕焼けに染まるころ
通勤快速を降りれば足早になる
車内の熱気にゆであがってしまった
君はきっと
夕方の空気が好きに違いない
商店街を駆け抜ける自転車に
危うくひかれそうになって ....
今日いる場所も
明日いる場所も
ひとつの裏側
表側としか感じることが出来ない
かもしれない
ひとつの裏側
ここは寒いが
そこでは暑い
君はたしかな表側
同時に君は
ひとつの裏側
....
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