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電車に乗ると
二つ先に海岸駅という名の駅がある
海岸駅、と言っても
降りてから海までは男の人でも
歩いて三十分以上かかる
近くまでたどり着いても
海岸線に沿って細長く続く
フェン ....
生き物として残り時間はもうそう多くない
やっかいなのはいつまで、なのかは誰にもわからないこと
いっそ自分で決めてしまえば楽になるのかしら
喫茶店でクリームソーダを飲みながら
思い出を誰かに ....
階段に
月の花びらが落ちている
けだもののまばたきの前を過ぎ
けだものの舌に拾われる
何も無いところに花びらを見るものなど
邪険に扱ってもいいのだ
邪見に扱うこ ....
遥かな静かさの声に
耳を傾けてみれば
自らが今に在ること、
過去からの行為
今生を貫き頭部へ
滲み拡がり幾重にも
未来未知へ棚引き入りつ、
静かさの声の尚も遥か
此処 ....
左右の花瓶に生けた
百合の花
花びらの隙間に
ひと雫の涙
もう二度と会えないんだ
花の香りに慰められるのは
僕の方
空っぽの手のひら
重ねる君の手はない
閉じ込めた記憶
....
とけてゆく熱視線
ついにあなたはサングラスをつけて
塁にランナーはいない
どちらのチームにもヒットさえない
何が当たり前なのか知れないが
きっと引退した先輩は
テレビでこの野球中継 ....
人間が
あれほど残酷で
おぞましくなれるのなら
私は鬼で蛇なのが良い
虐め抜く時の
あの生き生きとした声
明らかに虐めることを
楽しんでいる
それが人だと言うのなら
私は望ん ....
洗濯機のとなりで
展覧会があった
淡い色だった
人々が行儀よく
並んでいた
わたしも会場に
入りたかったけれど
チケットを
衣服と一緒に
洗濯してしまった
昨夜折った笹舟を ....
初夏はまだ始まったばかりだというのに、早生まれのトンボがもう死んでいる、アスファルトの上にその細い細い機体を傾けて、まだ生きていたかった、みたいに、そのうすいガラスのような透明な羽を、そよ風にかすかに ....
くすりと笑う君の
世界はとっくに
喪失されていたんだね、
気付かずにいた僕を置いて
くすりくっすり ひっそりと
剥き出し硝子窓を震わせ続け
余りに露骨なままそのままに
外界に曝され野晒し ....
成功は作れる
と、手ごたえを得てるでしょう
作画崩壊しとるだろうが
おめでとう、おめでとうだろうが
自分のできる範囲で
できる事をすればいいんです
僕にできることが
君にでき ....
梅雨の晴れ間に
見たことのない虹を見た
太陽の周りにくっきりと虹が囲む
「縁」と「円」が同音で同義語のような
丸く温かい「和」と「輪」と「環」を点で結んで
カーブを描いて 輝きが踊り ....
おとつい買ったばかりの
ミドル丈のレインブーツ
人気のない舗道に目をやりながら歩く
おおきな水たまりもへっちゃら
雨はアジサイの植え込みを揺らして
色づく花房に打ちつける
....
ある日
私は
死という扉を開けて
冒険に出かける
もちろん自死ではないだろう
どんなに辛いことがあっても
とても幸せな1日に出会えると分かったから
もう絶望しなくてもいい
お散歩するよ ....
僧侶の方が
学者から聞いたという話を聴いた
生命の尊さの話
胎児がいる羊水は
何十億前の太古の海と同じ成分だと
何十億年かけて人間に進化したことを
母親は十月十日で ....
庭の紫陽花がうっすら青く色づいて
季節は嘘つかないね、などとつぶやいてみる
紫陽花は土壌の性格によって
色が変わると知った理科室で
人みたいだなとおもった
そんなふうにわたしが紫陽花を怖れて ....
私たちが逢う処には
いつも薔薇の天蓋
時にその薔薇は清浄の白
時に夢幻の淡紅
あるいは情熱の深紅
あるいは此の世には無いはずの至高の青
深淵の漆黒
いずれにせよ其処には
....
薄暗い森林の山道、
根っこの浮き出た
凸凹の急斜面を
ひたすらに登りいく
人、人 また、人
登山服姿の後ろ背の
視える夜陰の寝床で
ひとり横たわり
耐える病魔は誰のもの
森林を縫 ....
この頃
テレビをつければ
全ての人が
中学生に見える
あなたは17年前です
幻聴みたいな本当がそう云う
間違ってりゃしまへんかね?
なのだが
どうも信じたくなる美しさだ
....
梅雨時の雨あがりに、まだ濡れている、
いくつもの、
綿毛となったタンポポが、
まるで細密な白いガラス細工のように硬質化している、
それぞれに、
きわめてミクロな水晶の玉の粒を、
無数に煌め ....
廃れた土地
命が終わる
俺は見た
何も言えず
裂ける絆
崩れる平穏
巣を破壊された
蟻のように
権力者の踊り
そのリズムは永遠に
搾取の唄
その調べは永遠に
地獄の ....
アナベルの咲きそろう庭に遭い
手で触れることを
ためらって
六月の午後にあがった
冷たい雨
潤ってあざやかな花房に
そっと 顔を寄せると
控えめで甘い匂いは
....
きみの柔らかな手のひらで
冷えた肩を包んでくれたなら
ぼくは大空を舞う鳥になる
高く 高く どこまでも
澄みきった空を目指し
青く溶けて自由になれる
やがてあたりは暗くなり
たくさん星が ....
アップデート
とか言っても
本邦生産現役は
実は屁とも思ってない
わからないのである
一応、外面だけはおもねるふりをして
アッププデートとか言ってみるが
実は何もわからないの ....
彼は何をぐずぐずしているのか
さっさと問題を解決したまえ
これが健常者の意見である
だが僕はぐずぐずしていたいのだ
絶賛ストライキ中だ
もう三十年にもなる
効果はバツグンよ
....
角度に実直に
ながれる水
起伏に忠実に
うねる水
感情に従順に
あふれる水
代謝に一途に
したたる水
速さを競って
にごる水
優しさに慣れて
とどこおる水
正しさを嫌っ ....
都会にポッカリと空き地
照らすのは日の出から
カンカンぎりぎりと草原に
射し込めてこの爽やかさ
今日という日の 日日草
翳りだけ待たされて
鼻先につん!とくる
風は明日を感じさせない ....
スカートのホックがかからなくて
手を離した
十分に太りすぎた
決して焦らないこと
こんな自分を否定しないこと
まずは健康を願うこと
ほんの少しの回復を喜ぶこと
心が和らいでい ....
きみの何気ない頬笑みでぼくは生かされている
交差する熱視線は刹那から永遠に続くと思った
きみの手のひらはとても柔らかく暖かくて
冷たいぼくの手を優しく包んでくれた
戸惑うぼくの頬は少年のよ ....
洗足池で
花見をしながら
屋台の前のテーブル席で
生ビールを飲む
桜色の{ルビ提灯=ちょうちん}が
気持ちよさげに
ゆらゆら
揺れる
周囲には
いくつもの
しゃ ....
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