飛ぶときに必要なものがあるとすれば決心ではなくて、飛んでいる「当然」なのだと思う。決心なんて、どれほどもろくて役に立たない(でもそれなりに美しい)だろう。
娘が壁に手を置いて、しゃんと背をのばし立つ ....
 街路樹の枝先が芽吹いて淡いみどり色が眼に清々しい。そんなある春の日のことである。
 太一が運転する青いヴィッツは、ウィークデイの東名高速を西に向かって快調に走っていた。途中、海老名のサービスエリア ....
8月下旬に僧羽高校では時の打つ音にあわせて縄を告訴する。

枯れ枝を折る時には決して縄を指に置いてはいけないし
またそうした同行者に席を譲ってはいけない。-トコスの法典-

壁の中でジェ ....
車両で目覚めると自分一人。
一体、あいつらはどこで降りたのか?
今までにどれくらいの数をこなしたのか?
盗まれた僕の財布は
公衆のゴミ箱か、そこらの物陰で
息を引き取る―。運良く誰かが拾い上 ....
パリの街は
特に珍しいものもない
立ち止まる時
運河を流れる水がある
今朝食堂でなんとか手にしたパンは
かりかりでおいしかった
奪い合いだった
団体客が来ていて
飯の
争奪戦だっ ....
あめがふるとしにたあくなるけどしにたあいていてもかくしてくれる から好き。くるまとかさあああって走っていくけどなんでそんなしずかあなのさ。もともともとがあああてうなったりしてどんとつぶしていったりしな .... シンプルに濁点をひろう
歩幅は正確に保ったままで
ぼくたちにはちいさな物語しかない
そうしたフレーズには語弊があって
信号に、プロミスの看板に、防空壕に
わらいながら灰色の花をか ....
まっさらのシャツにボンゴレ・ロッソのトマトソースがついてしまう日曜日、葉巻を吸い紫色の煙をくゆらせるのはドン・カルネデス、追跡はまだ始まったばかり。
だれもがあの平和な午後を境にして、変ってしまった ....
ひとは
母音だけで会話するときに
かならずしも
自分に正直だとはかぎらない
相手に誠実だともかぎらない

水色のキャンディが
口の中で溶けていく速さで
きみはやがて
いろいろなことを ....

けたたましい山羊の蹄が頭上を通過する
夕べの取引先からのメールが
全て獅子唐に変わっていた朝だ
二、三日前から不穏な空気が送電線を伝って来て
この朝の微睡みの中
それは形づいていったん ....
泳ぐ人々の
夢で見られた
歌の練習をした廃屋に
きみの写真が飾ってある
と言ってくれたっけ
でもそうやって
憧れているわけにもいかない
細かな雨をまとった電車は
地面の下に
郊外を滑 ....
■僕らが17歳だったころ

1971年。17歳の南沙織は「17歳」という、そのまんまやーん!な曲名をひっさげ、鮮烈なデビューをかざる。
そしてその18年後の1989年、同曲のカバーが森高 ....
1)たくてんが消えた夜

「さるソハ」 (ひんほうにんの家)

老爺: このくそ母あ、汎飯に猿ソハ足す奴かあるか。
老破: くそ死屍い、人並みに枷い手から聖托言いな。
中年嫁: お示威ちゃ ....
ちいさながじゅまるの鉢植えを夫が買ってくれた。土曜日、駅のよこにある小さな、閉店間ぎわの花屋で。つめたくて、青い、「2」という数字がかたどられた陶器に入っている。

植物の方が、動物よりもなじ ....
何を残していくべきか、何を食べなければならないのか、どのような回転数が一番ふさわしいのか、そんな問いたちを浜辺の光の中へそっと解き放つ。浜辺はやがて郊外となり市街地となり事務所となる。そこからさらに遠 ....

きみがほめてくれた鼻梁のさきから

からだはくさりおちていきます

(崖にたつ風車たちがうつろにめをまわして

入水自殺をこころみるたぐいの


そうして盲いるときは

 ....
なにもかも
粉砕
ナイフでは永久に
無理な救いと
手を
つないでいた
椎間板を守りながら飛ぶ
ポリゴンの鳥が
ひきずりだした
わたしたちの赤い国旗
万歳 ....
おそろしいことの予兆は楽しいマーチでくるはずだから、きっと大
丈夫。ヒーローアニメの最終回で主人公が悪役にやられても、ハッ
ピーエンドはドタキャンにならない。愛すべき味方が空から飛んで
きて ....
「い、一生分はあるぞ?」



「あの子ったらはりきってるみたいね。」
お母さんが笑いながら言うと、お父さんもしんぶんを
読みながらしきりに『い、一生分はあるぞ?』うなず
きます。
「 ....
きみを
たいせつにされていない時間をくべて
かなしい町にしよう
はじまりしかない町

  わたしが保証されるほど
  糸が切れていくようなので
  まちがったままでいいのです、
  す ....
朝の四時ごろ、おばあちゃんが眠れないといって
起きてきて気づいたのよと母が言った
首をさするとだらりとした感触がした
まるで濡れているようだった
溶けた泥のようだった
午前五時の空気がよ ....
半年ぶりにかえった家はおどろくほど暖かく(ガス・ストーブをいれたの、と母)、慣れない匂いがした。住人が減り、それとちょうど反比例するように増えていく飾られる写真。

ウエディング・ドレスを着る。い ....
半身麻痺のお婆さんの
両手を引いて後ろ向きで歩く 
介護青年だった、10年前の僕 

いつも面会中にさりげなくにこやかに 
見守っていた初老の娘さんと 
古都鎌倉の喫茶「扉」で 
偶然顔 ....
暗いそらのした
森の樹皮質のぬくもりが、
重さをました広大な冬の夜をささえている


不思議な安寧をやくそくされ
みちびかれるように 生きる
神々しく 雪をいただいた山のうちふところで
 ....
車庫へ還らぬバスは
停留所にも停まらない
ただ辻々で
わずかな客を乗せて行く
代金は要らない
誰もが代償を払っているから

今日は五人だけ乗っている
眼鏡を失くした男と
手紙を置いて ....
自らの意思に反して 
もう一人の私が 
何処か遠くへ歩いてゆき 
おーい、と呼んでも聞こえない 

永遠に列車の来ない 
線路の上を歩いていたら 
地に伸びる私の影が、口を開き 
耳傾 ....

ある日の深夜

僕をじっと見る
餌の器をじっと見る
再び僕をじっと見る

知らんぷりして
パソコンに向かっていると
いつの間にか後ろに回り込んで
爪が出ていない肉球で
僕 ....
誰か知らないか
人工衛星しか登場しない
SF短編小説を

その作品を見い出したSF作家は
それを書いたSF作家が残すに価する作品は
その一編だけだと評していた

でも確かにそのSF短編 ....
遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの


鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営み ....
冬の昼間を首から切って
空から巨大な葉が一枚
落ちてきた
その交差点には人が点在しており
時々神社の境内の苔生した石の上に小さな赤い虫がいることがあり
手をついて座るときに色をつけるが
お ....
メチターチェリさんのおすすめリスト(382)
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