黒猫
春日線香

泳ぐ人々の
夢で見られた
歌の練習をした廃屋に
きみの写真が飾ってある
と言ってくれたっけ
でもそうやって
憧れているわけにもいかない
細かな雨をまとった電車は
地面の下に
郊外を滑り落ちていく
あの柱時計の周りを行けば
きっと会えるかもしれない
枝を離れたばかりの
いつもと違う花を
飲み込んだ心臓は
新しい血になればいいと
ぱくりとドーナツを食べて
血になるはずだと
猫は言うんだけど
本当に?


自由詩 黒猫 Copyright 春日線香 2013-06-13 04:50:53
notebook Home 戻る