即興(春を待つからだ)
橘あまね

遠くのほうで 貝殻色の天蓋に
やがてちいさな穴があき
こぼれる石笛の一小節を縫い付けた
あかるい羽衣の 恵みを象徴してもたらされるもの


鉱物たちがふくんでいる 大きな知恵の営みと
なまの肉が発する熱っぽい言葉
深いところから分かち合うひとしずくです
息を凝らして 拍をかぞえて
刻むことのひそやかな歓び
互いを見つめる区切りごとに
新しい季節が隠れている


温度をたくわえて 動作を秘めて
光を待つかい 追いかけるかい
暦を書き込まれていく一条一条に
無二の配色があり
読み上げられるあえかな文字たちの
すべらかな刹那
流れるとおりに 運ばれるままに


自由詩 即興(春を待つからだ) Copyright 橘あまね 2012-02-09 20:48:52
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