わたしごと 冬の先
月乃助

暗いそらのした
森の樹皮質のぬくもりが、
重さをました広大な冬の夜をささえている


不思議な安寧をやくそくされ
みちびかれるように 生きる
神々しく 雪をいただいた山のうちふところで


私は、ここで
母がそうであったように
占いを業(なりわい)とする


河瀬の魚のなみだを知り
山を見つめ
月の満ち欠けを とう


月にいちど 電車にゆられ
地下鉄にのりつぎ
森では聞くことのない言葉をはなす人にまじる


婚期を逃したと なげく女の
親が病にたおれた娘の
仕事がないと気落ちする 初老の男の
話に耳をかたむける


私は、ただわらって
どのひとりにも 大丈夫だと言ってあげる
心配の種が 枝葉をしげらせないように
そのために、
私があるのかもしない



街でなにがしかの糧をえて
森にもどる
玄米と野菜と、くだものを買い
手にお金が残れば、少しのお酒を買う



小さなバイクで
雪の上をすべりながら 灯のない家にもどり
白い息のなかで 寝床にもぐりこむ
かめのような湯たんぽに おとこのぬくもりを
思い出しながら、




星のあかりのそのすぐしたで、
冬の眠りにつく
山に住む女神の子守唄を
風のようにききながら







自由詩 わたしごと 冬の先 Copyright 月乃助 2012-02-12 14:49:47縦
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