鳴かない猫
nonya



ある日の深夜

僕をじっと見る
餌の器をじっと見る
再び僕をじっと見る

知らんぷりして
パソコンに向かっていると
いつの間にか後ろに回り込んで
爪が出ていない肉球で
僕の背中をトントンする

鳴けばいいのに
お腹がすいた




ある日の早朝

鏡の中の僕を見上げる
風呂場のドアを見上げる
再び鏡の中の僕を見上げる

面倒臭くて
そのまま髭を剃っていると
いったん視界を外れてから
思いっ切り爪を出して
僕の太股に攻撃を仕掛けてくる

鳴けばいいのに
風呂のふたの裏側に溜まった
水滴が舐めたい




ある米国の裏町を仕切っていた
ボス猫の末裔のDNAが
そうさせるのか
君は
鳴かなくて
媚びなくて
容赦なくて
猫タワーの最上段から
すぐに泣いてしまう人間達を
見下ろすのが好きなのだ




ある日の夕暮れ

聞き覚えのない
猫の鳴き声が聞こえてくるので
窓からそっと覗いてみると
いつの間にか締め出された君が
玄関のドアをうらめしそうに
見上げていた

ごめんごめん
君の声忘れていた





自由詩 鳴かない猫 Copyright nonya 2012-02-11 11:52:56
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