風は曇り
硝子のひと欠け
わずか わずか
と つぶやかれ はじまる
蝶の生まれやすい午後
葉と葉のあいだ
やぶにらみの空から
静かな土から
さらに高く さらに低 ....
しずまりかえった夜
の浸透圧で
ゆるやかににじむ
染まりゆく夜
染まりきるころには
わたしたち 空っぽ
恋は死ぬ
愛は死ぬだろうか
輪郭は想う
幻色で、つめたく卵
うすく微 ....
寝室の時計をさがしてる
秒針は、一様に母の心音よりも
はやい
ねむれない
ねむれないの
ぼくを抱いた鼓動は
たん、 たん、 たん、
寝室の ....
その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど
無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき
それは
一群れのシロツ ....
落書きは消さない
向かい風にむかって
ときおり模様を懐かしむ
みあげた空がいとおしいなら
転べ、青い獅子
記憶にとどめたい
最後の絵を抱えて
知らない鳥がさえずる日々
それはまったく猥雑に響き
混雑する津軽の店内に
どうでもよい配置をさらしていた。
昼間、
どんぶりを積んで厨房へ持って行くときに
滑って転んだ。
白いどんぶ ....
僕は同じ光景を何度か見るんです
バイトの終わり 裏口のドアを出る
するとそこで 先輩の女性が
煙草に火をつけ 何かを心で転がしているような
そんな光景
バイトの終わり 施設の廊下への ....
いまは
稲刈りが済んでも
束ねられない藁束が
三十年ほど前には田んぼの隅に
何十と積まれていて
秋には
それが子どもの遊び
それで基地を作った
床を敷いて
階段を作って
壁を囲んで ....
自分の投稿した作品にポイントが入ると、嬉しいです。
それはもう、半端じゃなく嬉しいです。
一応は「良い」という証としてのポイントであります。
しかし、「頑張れ!」だとか「仕方がないなぁ」だと ....
いくどめの夏の陽を
やわらかな肌に射し
花と笑い
鳥と歌う
口もとから
こぼれるものが
微笑みであるように
眼から
あふれるものが
光とな ....
火の粉は
陽の寝そべる雪原に降りそそぎ
炎に弾ける冬毛の音が
なにもない空を跳ねてゆく
うさぎは
しおれた耳の先を焦がす
遠い朝に添えられた指先を
食んでいた ....
うつむく おもてをしろくして
みだれ黒髪 風へすき
雨のくる のをそぞろまつ
かすみのころもを まとう月
かごとゆられて {ルビ何所=どこ}へやら
{引用=個 ....
脳裏にやきつくのは 掴んだ手の感触。
繋いだんじゃない。握ったんじゃない。掴んだんだ。
そして電車に乗った。流れ込む電車。
君の手の感触は僕の体を各駅停車へと導く。
はにかんでもっと ....
ガラス窓の外にはすでに
手の届かない場所に{ルビ向日葵=ひまわり}が
ほほえみを 風にくずして ゆれている
若き日のひとすじな愛の光を
遠い昔へ葬った者の
{ルビ濁=にご}った瞳に消える ....
他人のように眠るとき
仮面のように眠るとき
水の蛇はひたひたと来る
狭い空を翼で覆い
小さな夜を乗せて来る
フットサル
足元で猿
ボールを蹴りながら
猿回しの猿に
回されてますよ俺
舞わされてますよ俺
華麗なステップ
素敵なトラップ
フィット
チーネの味は
忘れました
あなたがいな ....
「もも」のような人だった
夏の始まり
胃のあたりにひどい痛みを訴えて
青白くやつれていった
食べものの好みが変わって
「ガン」かもしれないと感じた
不意に 人生の何分の一かを失う と思った ....
その日の夕方
妻は花束を抱えて帰ってきた
赤 青 黄 白
色とりどりの花の群れ
寝室の棚の上に花瓶を置いて
妻は花をその中に挿した
赤 青 黄 白
色とりどりの花の群れ
部屋の中は美し ....
おかえりなさい、が あったのだよ
ひらけば其処に
おかえりなさい、が あったのだよ
そとから帰って
よごれた手も洗わずに
とってもとっても
温かかったのだよ
....
ざるそば
去る側
かけそば
駆け側
中華そば
っちゅーか側にいて
机が坂を滑り落ちる
その形状を保ちながら
机が坂を滑り落ちていく
誰に目視されることもなく
他に滑り落ちるもののない坂を
机が机として滑り落ちていくのだ
ああ素晴らしき滑走!
け ....
君は滅多に喋らない
余程の事が無い限り
僕は君の声を聞く事は無い
何時も僕が一方的に話すだけで
君は表情と相槌だけで
返事をする
君の長い長い前髪は ....
「
おいらはみてのとおり ただの灰皿だよ
なんにもしちゃいないのに
おいらを目の仇にする奴に
とう ....
ふわふわが
ふわふわに言います
もっと
ふわふわになる
光が光に目をふせ
渦の生まれを見ます
ふたつ
生まれた
ほつれ
ほどかれる指が
からまわりし ....
生まれ変わりを実行して
失敗した腕を掴んだまま
落ちてゆくのは体だろう
時の流れに逆らって
闇の兎に魂を売り
わずかな時間を買う
逢いたい人がいるのかと
問われれば
そんな ....
三日前、
宇宙から眺めた地球は
星屑を散りばめたように
不幸だった
ふと目が覚めた地球は
一滴の涙を流して、訴えかける
「お父さん、お母さん、こんなとこに置いていかないで」
知生 ....
消化しきれず吐き出される
無駄な命の残骸を
手で掬い取ってみる
僕は無力で
無力な僕の血が混じった
その残骸は中途半端に溶けていた
近いうち
あなたの血が混じった僕が
吐き出さ ....
ふと遠いところへ行きたくなる
通過電車に手をのばせば届きそうで届かない
本気で身を乗り出すと本当に連れ去られてしまうから
「危険ですから、黄色い線の内側までお下がりください」
というアナウ ....
「人間て、恋する機械なのね」って指でアポロを割る君の声
親指と人差し指についている二色のチョコは既に乾いた
表面のぎざぎざが消え無秩序になってしまったアポロに「ごめんね」
四文 ....
ひっそりと
昇る太陽は
だれもしらない
世界を紡ぎだす
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