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背なか 背なか
もたれかかった珪藻土の壁には
真昼の温みが宿り
後ろから
春の衣をふうわり掛ける
あし
足もと
埃だらけのズックの下で
蒲公英は蹲り
カタバミが少し緑を思 ....
わたし、という曲線を
無謀な指が
掌が
少しの優しさも無くなぞる
書院窓の向うでは
秋の長夜の鈴虫が
交尾の羽音で月の影絵を滲ませて
こっちにきて
こっちにきて、と ....
その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど
無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき
それは
一群れのシロツ ....
帰り道は
昼の天気予報どおりに
激しい雨
ふと視界に咲いた銀色の傘を求めた
縁取り、白
フレームは銀
それを広げて歩くのが
今日の雨にはふさわしく思えて
....
時計はもう帰る時間
もう少しと言ってよいのか
帰ろうと言った方がよいのか
曖昧な夕暮れに
曖昧なフタリが戸惑う
飛行機雲がくっきりと
空色を二つに割って
藍が半分
それは明け方病院からの訃報
病の床にあった父親は
生命を生きることから開放され
静かに去ったという
今を生き残るものたちは
悲しみはさておき
思い出話を必死にかき集めるが
肝 ....
いのちあるものを
司る月の満ち欠け
この8の月は
月が二度満ちる
その不可思議に
神聖な月は
青い月と聞く
頑なな心の闇夜も照らし出す ....
花の表紙のノォトの中に
それはそれは
大切な風に書かれていた
日記であったのか
詩であったのかも
定かでない
淡き恋の想いについて
吐き出された拙い言葉の塊
まるで ....
あんまり強い陽射しだから
「白いところ」と「白いところ」の間を選んで
アツクならないように
そうっと歩くんだ
ぼくの思考回路上
暑くても息を荒くするのは
....