僕らは 一列に並んで
少しずつ 進んでゆく
かぎりなく長く思える柱廊を
誰も 一言も発さないまま
僕らは 白い衣を着て
白い布で覆われた銀の皿を両手に捧げ
少しずつ 進んでゆく
....
ぼくにできることは
ほんのすこしのこと
だけどそのすこしが
ぼくやだれかをほんのすこし
うれしくさせられたらいいな
ぼくにみえるものは
ほんのすこしのもの
だけどそのすこ ....
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
争いは銃からではなく
言葉から始まることを知らなくてはならない
言葉で武装してはならない
言葉を武器にしてはならない
言葉の扱いが ....
山肌に
かすれて
張り付いた
涸れた
田んぼの
あぜ道を
白い
自転しゃで
駆けおりる
がしゃがしゃごしゃごしゃ
うたうじてんしゃ
目線の先はあかいとんぼさ
....
の苺の花を見つけたのは
僕よりも犬のほうがきっと先
しろい花はきれい
咲いているのは僕と犬の家のすぐそば
あの山までは二時間と少し
僕のままでかえってくるから
犬のままでいえ ....
初夏の夜、首が痛くなるほどに
高い空を見上げて、
あれがかんむり座だよと、
いつかそう教えたのに、
あなたは忘れてしまった。
七つの星でできた王冠を、
あっさりと投げて捨て ....
ささやきをのいずからひろって
ささやきであたまのなかをみたして
ちょっとしたふわふわかん
ちょっとしたゆらゆらかん
ささやきはのいずになって
ささやきはかがやきになって
ちょっ ....
あ、
ああ、
陽光が、
陽光が、
私を、
する、
陽光で、
飽和してゆく、
ひとつのわたしの肺胞、
ひとつひとつのわたしの肺胞が、
春を、
春を、吹き ....
ねむりなさい
夜空の星の輝きを忘れて
冷たく甘いゆるやかな夜の時を忘れて
コーヒーは大人の語らいとけだるさに必要なの
あたたかな布団
心地よい闇に抱かれ目を閉じて
耳に届ける夜たちの声
....
でんしんばしらのよこにすてられた
さんびきのこねこが
じりきでそだつ
あなたが夜中に電球を交換したから
母子手帳にないものを確認したわたしです
今朝は自然に目が覚めました
これが普通だったのかな
なんだか病気のようで
そう思ってしまって
それでも反省する気に ....
妹はいろいろなものに形を変えることができる
うらやむ人もいるけど
はたしてそれっていいこと?
そして最後は文句も言わずに
また四角い箱の中に四角く収まる
それっていいこと?
....
眩しすぎた歌をうたえずに
鳥は地面に落ちました
時に捕まえられた腕の中に
忘れられた机と色彩で
画家の言葉が揺れました
....
物干し竿に吊したシャツが
風を孕んでくるりくるり
くる くる
掴んでる洗濯バサミは
一生懸命!!
※ 洗濯バサミは今日も健気 ....
食材よ今すぐ宙に飛び上がり
世界に全て均等に降れ
天動説の子どもが増えてるらしいのですが
それはまったく自然なことです
地球が回っているのだとしても朝が来るのは退屈なのですから
僕はお布団で魚になって
箱舟に乗ったかあさんとはなしをします ....
妻と二人で梅干を漬ける
台風が近づいている
空はまだ晴れているけれど
窓から入る風は生暖かく蒸し暑い
梅の実の良い匂いがする
水洗いした梅の実をタオルで一つ一つ拭き
ヘタを楊枝でほ ....
指先であそぶ旋律がピアノの鍵盤の上を流れて
部屋に溢れるやさしい音階のすきまに
天球図は青くひろがってゆく
東のかなたの
さそりの心臓は自ら発火し
そのきらめきは引き出しの奥で眠るルビー
....
宮沢賢治の詩を読むのは、とても辛い
自分の苦に、まといついてくるみたいだから
彼は、いつもじたばたしている「デクノボー」であるから
辛いけど、あざとい詩もあるけど、美しいから困る
日本語が ....
悲しい青の中で目覚めるのが好きだった
そっと空を見上げると
つぶつぶの青から落ちてくる小さな光が
こんないとおしいって
涙の青 深緑に変わる私の膝の上で
空耳だったといっ ....
押し出されてゆく
押し出されてゆく
波打ち際を
海へ
風が背中を押す
バルチック海ではない
鎌倉の海でだ
実朝が幻の建造船を ....
ともだちと消しゴム飛ばせばおとずれる春のはじまりさなぎになる夢
遠い冬口のなかいっぱい唾を溜め蛇に吐きかけ孕んだ何か
音もなくオレンジ色に燃える雲だれかぼくに手紙をください ....
窓ガラスが取り外されて
僕の部屋はとても魚通しが良くなった
あの窓ガラスには
たくさんの魚が詰まっている
三歳の頃窓ガラスが猛魚のせいで割れたから
あの窓ガラスはいわば二代目
それでも十四 ....
汽笛は尾を引き
遠いほうからかがやきになり
応えの兆しを耳にしながら
傷をまぶしく抱きしめている
水のかけらを見つめる間も
陰のまばたきは増えてゆく
とどろきは地 ....
私は眠る
掛け蒲団の左右を身体の下に折りこみ
脚をやや開きぎみにし
両手を身体の脇にぴったりとつけた
直立不動の姿勢で
寝袋にくるまる旅人のように
防腐処理を施され
身体中を布で巻かれた ....
雀がちゅん
川面でちゅん
三時のおやつを探してる
岸辺の葛の葉しらんかお
空に向かってあくびして
見えない月を眺めてる
傍には眩しいお日さまが
にこにこ笑う日曜日
....
江ノ島の砂浜で、
少年だったわたしは、
父とカイトを、飛ばした。
父の、大きな背の、
後ろで空を見上げる。
埋まる足元と、手につく砂。
潮風に乗って、
黒い三角形のカイトは、
糸をはり ....
思考を眠らせよ
夢の中の
自分を目覚めさせよ
夢は現実の見落としそうな
ディテールとわずかに
リンクしながら
「無意識の美」
現実世界に欠落している
より現実的な
世界を ....
そうだった
雪融けだってつららになる
不意に落下するかもしれない
雪下ろしだって命がけさ
ぼくらはどうしたらいいんだい
大雪だっていうじゃないか
天気予報の雪だるまは
幸せすぎる、たしか ....
細かな雪が
隙間なく降りそそいでいる
長く低い壁の向こうに
巨きな一本の老木があり
黒と銀にたたずんでいる
動きも音も雪のもので
老木は自身の他は持たぬまま
ただ ....
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