赤
夕空と海の混じり合うそのすきまに
すべり込むうみどりの影のさみしさ
赤い包みのキャンディーをポケットから取り出すと
口に入れる間もなく風景に溶ける
橙
”ちかみちはこっ ....
まいりました。
おそれいりました。
とりあえず、あと三日
猶予をください。
仕事の話を切り上げるとどうしても
そのままワンルームには帰れなかったので
バスにごんごん揺られてまいった ....
脇に
海の泡がたまっては
いかんです
腕を水平に伸ばして
たおたおと翼をひらくように
第二間接をくいっと曲げて
脇の泡を
放出するのだ
みえるかね
みえては ....
その日の雨が
今でも時々僕の肩を濡らす
廃園の木下闇に
置き忘れられたブリキのバケツ
松葉を伝い落ちる雫が
想いおこさせる
もうひとつの心臓
眠れぬ夜毎
消え残る雫がほのかに光 ....
カランカラン
乾いた音を立てて
転がってきたものは
骨だった
中は空洞になっている
拾い上げ中を覗きこむと
そこには子供の僕がいて
頬を腫らせて泣きじゃくっていた
そこ ....
楽しいはずの
デートの帰り
彼が
たぬきを轢く
たぬきはこげ茶と黒が入り混じった体毛で
牙はするどく体長70センチくらい
道路の真ん中で横たわるたぬき
たぬきは息をしてい ....
この町の
坂を登り切った
いつもの場所へ
僕と君が一緒の週末も
この町を眼下に
何回めだろう
夜になると微かに靄が漂う
簡素で静かな町
僕達はこの町の中身を飲み
そして町の中 ....
透き通るガラスの中の
透明な液体をひたす
白い木綿布
時と共に黒く焼ける
きっと
人の心も一緒
空気に触れて
熱を帯び
変わってしまう
薬品でオレンヂに染まった指先を ....
いつものことだけれど
早々に月がやってきたので
まだ授業は始まらないわよ、と
太陽に聞こえないように
こっそり耳うちした
けれど
待つのは嫌いじゃないから、と
頭をぽりぽりかきなが ....
思い出が多すぎるので
半分くらい小石にかえる
かよわい子犬のおしりに
ぶつけながらかえるみち
つみびとごっこ
ひとりじゃつまらない
とがめられないし
とがめられないし
....
やさしい 風 に
月 が ついてくる
まわり道
草原 の じゃり
心 やすらぐ場所 は どこかな
踏み潰した草 の
やわらかい感触に
ひとりで 歩く事さえ
....
台所で玉子を割り
箸で溶いて
フライパンでバターとからめた
食卓であなたと向かい合い
それを口にふくんだ時 はじめて
涙が溢れてきた
(お前も卵にはなれなかったのだね)
....
こおろぎが歌っていた
草むらに伏した子の
目の前で
太陽のない午後の理科室
もうすぐ終わる授業中に
床と天井の間に浮かぶ
水銀色の粒の柱
青空と灰空と
白 ....
それがほしいのだという
網の籠を背負って
捕まえて入れるのだという
静かな息に
舞い上がり漂ったのち
重さを感じて落ちてくる頃に
掴むのだという
小走りに途切れて
靴音の後ろか ....
窓枠の向こう側に海溝が寝転がっている
紺碧が逆立ちした午後
ぼくは物語と煙草を携えて
ゆらり生える象鼻の先に
時をぶらさげた
路地裏の化石にチャイを注ぎ
....
降りてくる空
降りてくる影
枝に重なる
灰色の横顔
すぎる鳥が
すぎる冬が
小さな建物を見つめている
家と家の間の景色が
まるくふくらみ はみ出している
赤 ....
君が積木など買ってくるものだから
僕らは積木遊びをするしかなかった
家をつくって
壊し
城をつくって
壊し
他につくるものなど知らない僕らは
やがて一つ一つを並べ
街をつくり始 ....
起きたら
三島由紀夫だった
下唇を噛んだら血が出て
三島由紀夫の血はこんな味なのか とか
白くて小さめの歯は けっこう硬いのだ とか
会ったことないのに懐かしむ
せっかくだから ....
うまれた時に にぎっていたのは
青いちいさな さみし石
てのひらからもぐりこんだそれは
ぼくの ひざっこぞうになった
ときどき いたいの
とっちゃいたいと おもう ....
雨 止めば 頬の雫 も 消えるのか
拭えば広がる 悲しみ は 要らぬ
振り向かぬ背中に 言葉は何も出ず
冷えたくちびる 押しあててみた
うつむいて 茜にふやけた頬 閉ま ....
自動販売機に 百円いれて
みんなで同時にボタンを押そうと
あの娘が言った
あの娘はオレンジジュースの前
僕ら8人の小学生は
それぞれ適当なところに立って
いっせいのーで
ミルクセ ....
白の白からはじまる声
ゆるくほどける水の鳥
ひろくとどまる陽の光
町に渦まく影を着せる
散る鳥 生まれる鳥の中心
人と機械の目のなかでさえ
生きた絵のように咲きひらき
....
二年振りに
帰ったときには
通夜はもう始まっとった
大往生や
ええ顔しとるやろ
せやな
いう声が ぽつぽつと
わしは
なんでか
涙もでえへん
ここ何年も口きいたこと
あ ....
お姉ちゃんが
こまぎれになって
道路に落ちていた
わたし
ひきずる
お姉ちゃんの右腕
ずるずるとひきずって
「はやく帰らなくちゃ」
アスファルトに
右腕が描いた
赤 ....
<パンダ禁止>
薄汚れた白と汚れの見えない黒でできている
パンダになることは禁止されている
パンダであることは禁止されていないので
檻に入って、笹などを食んでいる
<しまうま ....
夜の憂楽町線は
疲れたメガネの顔でいっぱいで
うんざりしていたら
隣に座っていた女の人が無言で泣いていた
女の人は下を向いていて
しゃにむに手で前髪をすいている
耳をすますとポツ ポツ ....
パンは太るので母親がしきりに食えとうるさい。
ぼかあパン職人であってパン食ではない。
ぼかあトロッコが好きだ。
(まだぜんぜん夜やし(笑))
深夜四時の公園で
踊りの ....
エミリー
あなたと最初に出会ったのは羊水の中
あなたは何も言わず
私を蹴って押し出してくれました
あなたはそれっきりそのままで
難産だったと語る母にあなたのことを訊いてみたのです ....
笑顔は
その下の無数の筋繊維と毛細血管だけじゃなく
いろんなことも隠してくれているようだ
第二製鋼所もとうとう夜間休止だという朝でも
工長のおっちゃんはいつもの調子で
次の夜に ....
イメージするということ
たとえば
ゴキブリいっぱいのプールに放り投げられるということ
眠っている間に鼻の穴から寄生虫を入れられるということ
イメージするとい ....
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