すべてのおすすめ
光を梳いた暗がりの川
朝と朝と朝の波音
刃の羽のはじまりと終わり
かけらを悼むかがやきの径
何処へも行けず 此処で眠る
水はさらに遠くなり
暗がりは暗がりのままか ....
暖かな湯気が立ち上る南瓜と小豆の煮付け。
薄く切った胡瓜の上に鰹節をのせたら
慣れた手つきで父がぽん酢をかける。
こんなものしか出せなくてごめんね。と
母はみそ汁をよそい
今焼けたばかり ....
青空に
雷が鳴り響く
冷たい風が吹き
燕が飛んでゆく
暮れゆく街
なぜか
こころ騒ぐ
薄暗い部屋で
ひとり座り
明日を思う
きみがめをとじている
つきがこんなにきれいなのに そういうと
きみはすこしあきれて ばかねとぽつり
なにもしらないこども たしなめるように
しろいつきのあおいひかり
ひとのゆききや くる ....
熟睡できないので
寝る方向を変えた
北向きになるけど
変えた
するとぐっすり朝まで
熟睡できるようになった
自称詩人が腐りました
アパートの一室で腐りました
このところの暖かさで
腐りやすさに拍車がかかったので
あっという間に腐り果てました
大家は
自称詩人だとは知らずに
部屋を貸してしまいま ....
今日 ひとりの男が電車に飛び込んで死んだ
理由は誰も知らない
朝のラッシュ時だった 駅は通勤客でごったがえしていた
アナウンスが流れる
「○○駅にて人身事故のため 電車大幅に遅れています」
....
僕は見たんだ
きみは
そんなのはいないって
否定するけれど
横須賀の海に
照らされて
瑠璃色に輝く
猿を見たんだ
「サル!」って呼び掛けたら
猿は僕の方を振り返って
....
ごきぶりをみて
にげだして なきだした きみ
きっと いまの きみに
「せかいで いちばん こわいものは なに」
と きいたら
「ごきぶり!」
と
まよわず こたえる ....
光る風の中で
まほろびの白が溶ける
さざれ石
雨が降っている
間断なく
なぜ 雨を物悲しく感じるのだろう
たとえば 勢い良く降る驟雨は 元気で精悍ささえ感じる
まっすぐで 常に潔い
でも 夜になり 家のなかで ひ ....
夜明けにだけ
列車の着く駅があるという
そこでは誰も降りないが
そこから誰か乗りこむという
言葉は置いてゆくという
言葉にはできないものを
探しにでかけるところだという
あたらしいものは ....
夕暮れ時の寒い裏通り
透き通るくらい引き伸ばされた薄軽い
ビニール袋の中には食材と
もう片手には人の身を覆い隠せるほどに巻かれた
トイレットペーパーを持ち
返事のないアパートに帰る
....
自称詩界隈で
面白いとか
ユーモアがあるとか言われてる
奴らのレベルは
世間的には全く相手に
されないぐらい酷いものだ
だからそんなクソつまらない連中が
面白いと評価するもんが
クソほ ....
なにもない
わたしのなかには
わたしがいるだけ
気だるげな猫のように
死後硬直は始まっている
小さな火種が迷い込むと
すぐに燻り 発火し 燃え上って
肉の焼ける匂い
骨が爆ぜる――生枝 ....
日射しにぬるむ木蔭に焼かれた
横たわるしろい肌
くるぶしを舐める犬の舌のざらつき
渇いていく唾液とこぼれる光は
すこやかにまざるばかりで手放しかたを忘れながら
あたまをなぜてやる
季節 ....
まん丸の
焼き菓子みたいな
今宵の月
雲に隠れてみたり
顔を出したり
なんだか不思議な
態度をとるよ
朝にはクラゲみたいに
薄うくそおっと光る
....
応接間のおおきなガラス窓が雨ににじむ
雨ごしの庭って
おとうさんの画集にあった
モネのすいれんみたいできれい
ドガのおどりこはなんだかこわい
おかあさんは砂糖は骨がとけるという
おばあ ....
あたらしいのか
なつかしいのか
そんな距離感の友への手紙を持って
五丁目のポストへと急ぐ
この町にも一つ 真っ赤で寡黙なポスト
いつからあの場所で立っているのだろう
いつまで赤いつもり ....
ある晴れた日に
平野にあなたが帰ってくる
自転車を避けながら
国道の渋滞にめまいを覚えながら
膚がかさかさになる家に
丘からそれを見つめている
思わずふたりは
....
あなたの傘は
少し小さく
私は少し
はみ出してしまう
私は誰かの
傘を求める
心地よい
雨音を聞く
あなたの傘は
同じ角度で
いつでも
そこに咲いている
私は ....
静けさの含み持つ何か
自らの心落ち着いた時に
期せずしてやって来る何か
過去へ遡行しながら
未来から到来する
未来から到来しながら
過去へ遡行する
胸奥から込み上げ溢れ 溢れ込 ....
水の色の響きだ
自らの生を差し出し
自らの死を告知する
全ての自己執着捨て
捧げ流出し犠牲となる
覚醒した自己意識を保ち
その時星達は輝くだろう
恒星の漆黒の輝きは水の響き
愉 ....
年を重ねていくと
興味が出るような言葉に滅多に出会わなくなる
そして言葉のないダンスの動きに惹かれていく
分からない方が良いことは分からないままが良い
体で感じることを忘れてはならない
ただ ....
旅がもし日常の中に潜んでいるとすれば
僕達は何処にもとびたてない愚かな鳥にすぎないのかもしれない
月の満ち欠けにいのちをふきこむものが風だとしたらならば
僕達の望楼は遥かな砂漠の果て ....
落ちた
りんごを拾うように
貝殻を拾うように
首を少しかしげてから
すくめるように
泣きながら寝るように
紅いほっぺたのように
文学なんてなかったころ ....
父の背中
53年の背中
もう隙間がないくらい
父の背中
背番号53の背中
数字がぎっしり埋まっている
その背中を擦ると
数字がぎしぎし唸り出す
私が石鹸で流せる ....
遠くの情景に
ひとまず別れを告げて
内なる心象に目を向ければ
喜怒哀楽と
それらに紐ずけられたものどもが
溢れてくる
それらは、別々に現れるのではなく
万華鏡で回し見するみたいに
....
ブラックホールに吸い込まれた
星雲は
真新しい宇宙に出現し
新世界を構成する
ぼくは永遠列車に座り
真っ赤なリンゴを抱え
星巡りの歌を歌い
失われた友を待つ
ぼくが来世に生まれ ....
静かな朝六時東の空から
水平線から色づいていく
まばらな客乗せた一番列車
誰ひとりこの瞬間を
眺めようとしないで
この美しさも彼らにとっていつものことなのだろう
コ ....
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