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どうしても顔も名前も思い出せない人がいる。感覚だけが確かで、ただ単に興味が有ったという感覚だけが確かで。
それは片思いをしていたあの隣のクラスの子だったような。ちょっとだけ付き合ってキスも出 ....
庭には二羽ニワトリがいなかったが
代わりに二本の立派な梅の木が鎮座していらした
毎年刈り込まれているのにその枝は猛々しく
同じく喧嘩っ早い私の手にもがれ
その実は強靭で、小学 ....
?,河川敷
熱を出した私の連れ合いが熟した果物がその表皮を裂いてガスを放出するような寝息を立てている。
身につまされるような気持ちで風邪を訴える連れ合いに食事と感冒薬と冷えピタと ....
とかく、そのフォームの美しいこと。
僕は退屈になるとよく相談したものだ、
ねえドリー、君の肺癌以上にかっこいい死に様ってあるかな
ドリーはヤニが浮いた歯茎を扇子で隠して
腐るほどにあ ....
君はどうして台所で食事しているのか、幼心に不可解だったが、幼心に聞いてはならないと、私は、知って、いた。
雪の降った日、病弱な私は靴を隠され外に出れなくされていた。
家の者 ....
半熟卵の茹で時間
花ふきんの縫い方
幽霊は鉄塔を登るということ
君に教えられたいくつかのこと
学校でも新聞でも初めて体内を往来した光も
教えてくれなかっ ....
唇の皮を剥く癖が幾つ夜を重ねても直らない
横に居る誰かの顔色を窺って
「飽き飽きしてる」
と言われるのを怖がっている
こちらもそう言ってしまいそうだから
窺っている
ほの白い布団
....