風
風ふーふーふーふー風ふーふーふーふー風来坊
風ふうふうふうふう風ふうふうふうふう風来坊
風ふーふーふー風ふーふーふー
風と一緒に駆け抜ける
道全体を駆け抜ける
風と一緒 ....
「昭和三七年竣工」と
定礎された橋のたもとで
その地蔵は天竜川の下流
南に向かい祈っていた
昭和三六年を生き抜いた者も
昭和三六年を言い聞かされた者も
当たり前のように裳を換え
水と ....
風見鶏のように揺れ動く道標
風もここでは澱み、回り
容易にその吹き来る方を
明かそうとしない
作り笑いの意味にこだわり
ただそれだけのきっかけで
旅に出てはみたものの
この道程がただ ....
“熱が冷めた”らしい。
きっと、時の流れが君の心に入り込んで、少しずつ熱を奪っていった結果なのだろう。
幸福や悲しみ、怒り。
時間には、様々な熱を冷ます効果があるって聞いた事がある。
....
弄び過ぎたライターの火は
煙草を近づけると消え
明日は
昨日の中に終わっていた
何か伝えなくては と思いながら
言葉が壊れていくのを見つめ
会話はいつも
始める前に途切れていた
....
本に挟んでおいた
しおりの行方はまだ分からずにいた
どうしてかな
簡単に人を裏切るのに慣れてしまったのは
有効期限まではまだまだだけど
速めに使っていよう
自分さえ ....
{引用=うずくまる。
からだの表面積をちいさくして
世の中の37%を遮断する。
わたしのまるいふくらみと
わたしのしろいふとももをくっつけて
ひとつ。にすると
やわらかな鼓動を感じ ....
道の端(はし)にいる僕の上を
季節が素通りし、
時間が頭上を通り過ぎる
そんな僕が立ち止まると
道の反対側には君がいる。
こちら側には僕がいて
反対側には君がいる。
僕の代りに反 ....
わたしたち、結婚しました
うす桃色の踊るような文字と
着物姿で微笑みあう男女の写真
はがきを持つ指の腹から
じわりじわりとあったかさが
組織の中まで浸透してくる
温度の正体をはっき ....
偶然見付けた奇跡を
大事にとっておいたけれど
奇跡は重ねれば薄くなるもの
そうして消えるのにはたいして
時間はかからなかった
森羅万象とは全てのことを言うらしい
理 ....
砂漠にぽつんと
壁がある。
黒い壁がある。
大きな黒い壁がある。
その前でぶつぶつ呟いている男が一人。
終日ぶつぶつ呟いている。
男の言葉は聞き取れない。
ぶつぶつぶつぶつ呟いて ....
肉塊の
乳首を忘れた
小鳥が四ツ足の獣と化して
女が泣いた
口が歪み
眉間に皴を刻み
男の背中に爪を立てられず
女は泣いた
終わらない痛みが
どこにもない愛や
夢を変形させ ....
昔から
隅に居るような子供だったので
かくれんぼでは
何時も鬼をやらされた
両腕で眼を覆って
だけど
じゅう数えるまでは
どうしても待てない
いち、に、もういいかい
すぐ振り返ってしまう
隠れ ....
揺れる花は荒野に一輪だけ
その上で流れた一線の流れ星
空間は穏やかに過ごしていた
まだまだ口にだしていない言葉は
たくさんあるけれど
それもこの花が枯れる時には言えるだろ ....
・
職場で必ず着用するエプロンには
大きなポッケットが付いています
わたしはその中に
いろいろなものを放り込むのが癖です
ポッケットが膨らんでいないと
落ち着かないのです
膨らんでいて少 ....
藍色の男は
熱風に散らされた
陽のオレンジを求め
砂漠の旅をする
橙色の女は
夜にただひとり
星を眺め
花言葉を紡ぐ
星を見ない男と
渇くことのない女は
鳥たちの涙を誘い
....
ユーフラテス川
という川の名前が
何故か印象から消えないのは
ユーラシア
ユグドラシル
など
ユから始まる名前が
好きだから
なのかもしれない
もし世界がユから始まるなら
僕はなん ....
熱い光はただ重なって
そっと重ねられて
渋滞した道でせわしなく鳴るクラクションも
軽やかに散歩する犬の太くて短い声も
光に飲み込まれてかき混ぜられて
珈琲に落としたミルクみたいにぐる ....
俺は通じゃーねぇさ。
通なんてのはデイ嫌いだ。
寿司?
寿司なんざぁ鉄火巻に決まってろうが
コハダなんてのはいい若いもんが喰うもんじゃねぇ。
しなびた年寄りが食うもんだ。あんな生ぐせえも ....
回転扉の向こうはサバンナだった。
「さぁ、はやく。」
何かに躊躇っているうちに
電解質と一緒に失われた
青という名の雷鳴。
「サバンナに広がるベッドには、 ....
言葉が虚しく
星に意味は無く
すべての星は
海に墜落した
月が動かした
振りをした水面と足元を
見下ろした
首が落ちた
海に沈み
海が沈み
感覚が消え
体が消え
時 ....
すれちがう人の香水の匂いが
鼻にまだ残っている
僕が貴方を思っていることを
手渡しで渡してもいいですか?
今はまだ分からないけれど
いつかは答えが見つかると信じているよ
....
陽炎を踏み越え君は手を振って、あちら側へと行ってしまった
家じゅうを掻きまわしつつ探したが、あの日の記憶が見つかりません
路傍にはいつも死骸が落ちている、人かも知れぬ、見ない振りす ....
{ルビ朝寒=あささむ}や子宮の奥へしのびこみ
初秋の路上に晩夏わだかまる
塗りたての青あざやかに秋の空
コンビニで桃缶さがす風邪の人
ほおずきが臓器のようにおち ....
季節外れの神社に
十歳の僕と親父が歩いてゆく
親父は何もしゃべらない
僕も黙ってついて行く
参道の階段には銀杏の葉
黄色い黄色い石の道
段々を上って一息入れる
親父の肺は一つしかない。
....
上海から帰国すると
仕事仲間たちと須磨の別宅に向かった
ビジネスになりそうなので
今から徹夜でパワポをつくるのだ
このプロジェクトのスポンサーは
明日しか時間が取れないの ....
橙色に照らされた木造二階建てのアパート
蹴飛ばせば簡単に壊れてしまいそうな垣根から
紅色の白粉花がその艶やかな顔を出す
やがて来る闇に飲み込まれてしまう前に
黒くて固い種子をてのひらに ....
・
私の本当の名前はスマコというらしいです
だけど父も母も兄弟もみんなスマと呼ぶので
いつの間にか私はスマになってしまいました
ときどき本当の名前について考えます
コというのはどういう漢字な ....
学校のグループで行う
キスの授業のテストは
一番嫌いな教科になった
パニックパラダイスパークは
いつになくこみあっていた
なにかと忙しいけど
飴が降っているならしょ ....
飛翔する鳥は駝鳥を馬鹿にしていた。
飛べない鳥は鳥では無いという彼らの傲慢さ
飛翔する鳥は自由だという。
飛翔すること自体が美だと。
彼らは美を体現していると自ら誇る。
それを群れの中の ....
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