この先にある午前中の玩具屋
眩い白い光に包まれて
僕は2004年に戻ってきた気分になる
バスを降りて暫く坂を下ると
異国の風情漂う町が見えてくる
そしてその一角に僕が働いている小 ....
夜の、
雨の、
それぞれのゆくえを
ひと色に染めて
あかりは桜色
煙る雨の甘さ、
舞う花びらの温み、
絡めた指が
やさしさを紐解く
夜に、
雨に、
焦がれる桜
時計の針 ....
コンタクトレンズをしようと思って目の中に入れようとしたらそれはテントウムシだった 足を縮めてまるで本物のコンタクトレンズのように見える
僕はきゃっ と驚いてテントウムシを落としそうになった 僕は ....
あの電車に乗ってゆけば
雲を見ることができる
今はまだ春だから
風の歌はきっとやさしいだろう
あの電車に乗ってゆけば
海を見ることができる
今はまだ春だから
波の音はきっとおとなしい ....
弔いの言葉が捌かれて
彼らはそれを咀嚼する
通約された痛みの淵に
紫紺の{ルビ輪=ループ}を描きながら
桜は
自らの闇に向かって落下する
....
遠い日の母の実家の飾り棚
なだらかな曲線で凛と立つ
重く押し黙る青磁の器
威厳と寛容をたもちながら
静かなまなざしを光らせていた
つるりとした青い光沢
ひん ....
僕は孤立している部屋でノルウェイの森を読み その主題歌を聴いている
本の世界に吸い込まれていくような歌だ
よくここまで忠実に表現できるなと思う
僕は死んだ
この暗闇の中で生きていかな ....
君は
君の家に入らない
雨が降っているというのに
軒下の風を嗅いで前足を舐めている
私の上には屋根があるので
髪に降るよりも
雨は、
硬質な響きで
音の羅列を渉っていく
....
わたしのなかのうたが
青い蝶になって
空の彼方へ飛んで行った
鳴り止まないオルゴール
うたのないまま時は過ぎて
今頃おまえは
どこを飛んでいるのだろう
どこでうたを歌っているの
....
僕は夜遅く ドラマチックレコードを聴く
布団の中に潜りながら涙を流す
あの頃の記憶が蘇ってくる
僕の膨張した心を絞り出して涙が出てくる
雨に沈んだ森
僕は君の作ってくれた様々な布 ....
1
眠れない夜は、
アルコールランプの青白い炎に揺られて、
エリック・サティーのピアノの指に包まれていたい。
卓上時計から零れだす、点線を描く空虚を、
わたしの聴こえる眼差し ....
その上目遣いのまなざし
裾に纏わりつきながら
思いっきりの
甘え声で
欲しいものをおねだり
あなたの笑顔は。わたしの総てだった
もう少し我慢したらと
皆に言われた
おとこのひと ....
太陽 なのか?
がのぼったまんまだ
もう ずっと
ぐっしょりと潤んで
乾かして
からからに
ぼくらを
見上げない
滅多にぼくは
ちかごろ
....
それは「ラ・カンパネラ」だった
かきたてるような狂おしい響きに
幼い日に聴いた 胸の震えが蘇える
あのクリスタルの針が
ふれあうような高音が
ころがるように鳴り響く
軽やかに跳ねまわる ....
6月の京都の雨の暗い午前中に縁側で印象派の絵を描いている 庭には草木が生い茂っていて屋根からぽつりぽつりと雨が垂れている 僕はそれがやけに気になる 草木の湿った匂いがする 居間には僕の描いた絵画や印 ....
頭の中につまっているよ
つららのように出来たんだろうねこの
目にうつるものたち
首の後ろがちりちりしてるんだ
太陽にあきらかにされた
急勾配の斜面の野原を
こわれかけているしずくがたくさん ....
夜にまぎれて
雨をみちびく雲の波
朧気に月は
触れてはいけないものがある
ということを諭すように
輪郭を無くし遠退いてゆく
深く、
深く息をして
雨の降りる前の
湿った空気の匂い ....
北アメリカの森林地帯に生息するアメリカクロクマ達は今日もそよ風に吹かれながら何かを聞いている
みんなが春の陽気に包まれて 幸せに暮らしている
アメリカクロクマ達は余計な分の餌を獲らない 大自 ....
1月の金沢の街並みは僕に永遠の安らぎを与えてくれる
故郷から遙か離れたこの地で
僕は痛め傷ついた心を癒している
まだここに来たばっかりで 吐く息は赤い
僕は一日のほとんどを眠り 目が ....
あなたに似ている
と。言われたくありませんでした
わたしはわたしに過ぎず
あなたのクローンではないのだから
あなたがいなければ
生を授かることはありませんでした
それだけは否定でき ....
欲したものを失うたびに
右まわり 左まわり
信じたものを見失うたびに
目がまわり ぐるりとまわり
ゆれるシーツで重ねたウソも
わかっているコトバばかりで殺してくれ
おか ....
何の為に生きるのか その理由が知りたくて
僕は昔君に聞いたんだ
君の横顔は美しくて
僕はあぁこの横顔が見たいから生きているんだな と思った
でも君が老いていくのは嫌だった
僕はま ....
永遠に続くのではないかと思う
言葉の咲く道で
彼はずっと歩き続けて
ついに道の上に座り込んだ
そこから見上げる空も
言葉がたくさん見えていた
ほんの少し
ほんの少しだけ休もうか
つ ....
僕の仕事は重罪を犯した人間を死刑執行人として処刑することだ
とても責任が重い仕事だ
今日も刑務所に罪人がやって来る
ひょろっとしていて猫背で全身が青白く目玉がぎょろっと出ている男だ
....
J-POPはクソだとか
洋楽は最高だとか
ジャンルで聴いているんですね
あなたも立派なミーハーです
売れているからクソだとか
人気があるからクソだとか
流行で評価しているん ....
よくできてるね
問題を解けばほとんど正解だった
よくできてるね
この言葉が嫌いだった
よくできる生徒で終わってしまうのが
納得できなかった
私は何もしていない
私は何もできていな ....
春愁に耽る窓辺に
春の宵は更けて行く
何もかも朧に映るのは
この宵の不可思議のなせる業
月の{ルビ面=おもて}も遙かな山の端も
朧に霞み夢心地にたゆたう
私もまた春宵の魔法に魅せられ
桜 ....
誰も寝てはならぬ さもないと死神のトゥーランドットがケタケタと白骨の顎を鳴らし笑いながら大きく鋭利な鎌を振り上げて魂を奪ってしまうぞ
さっそく眠り込んだ者がいるな ほぅ 狐の親子か トゥーランド ....
あなたの心に潜む ティンカーベル
キラキラと 甘い言葉をまき散らし
自由に飛びまわる
気まぐれティンカーベル
目を離した隙に おとぎの国に隠れてしまう
わがままテ ....
ある日
贈り物をしようと出掛けた
セーターを買いに行き
サイズを聞かれた
わたしは答えられない
靴屋に行き
やはりサイズを聞かれ
答えられない
ネクタイを買いに行って
好みの ....
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