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さくら かんざし
あかねの 鼻緒

ねむりの いわおに 
腰かけ
仰ぐ 


ちり ち り りん
金魚の尾ひれが 
風鈴を蹴る

ちり ち り りん
黄色の帯と 
左手 
 ....
あなたの温かみと重みが
わたしの存在に加えられる
その重みで
わたしは少し沈む
ほんの少し
沈む、あなたのわからない程度に

支える四本の脚
と呼ばれている、それは
わたしの言葉
 ....
むらさきいろの透明グラスは
この指に
繊細な重みを
そっと教えており

うさぎのかたちの水色細工は
ちらり、と微笑み 
おやすみのふり


壁一面には
ランプの群れがお花のか ....
 切符を切るカチカチと

  ポイントを温めるランプの炎の

   二番ホームに雪を踏む

    信号の腕木があがる

凍える両手に息を吹きかけたあと、空を見上げて吐息

    ....
荒野では道がわかりません
ヒースの丘にのぼっても
海はみえません けれど
匂いたつ まぼろしをたどって
かならず行きます きみの家に
事象の先に 行き止まる 今

深く 古いところから 聞こえる声を
身体の底で 聞いてみたい

全てを統べるものなど いない 今

うたは 身体の奥深くにだけ 響く
うたは 身体が かた ....
夏物の花柄が薫ったのは
パタパタと羽ばたくような助走の後
遊具を飛び越える、わたしの脚の発熱を
自由のきく緩さで包んで縛って守っていたから。
少女が、少女であれば少女あるほ ....
僕らは離れた丘に立った、
三本の木。

それぞれの丘で、
大地に根を張って、
太陽に手を伸ばしてる。

空には三つの太陽。

奴らは、
気ままに回って、
 ....
あれはいつのことだったか、間違いなく浮いていて、空。に、月の代わりに。ぼくらの夜はつややかな緑に照らされ、建物には鮮やかな縞模様の影ができる。アスファルトから植物が生えているようだった。自分がやさし .... サフラン色の吐息をつめた
紙風船に
虚空の稚児は
灰色の笑みを浮かべている

道なりに歩いていると
小さな星がすすり泣いていたので
モザイク柄の
傘をさしてあげた

陰った景色は
 ....
一冊の絵本のような生涯
浮遊するひとかけらの海
あれは君なんだろうか

思想のない森と夜の魚
そんな絵本だとしたら

月がちょうど半分 あとは少しの湿度
そんな海だとしたな ....
輪郭だけをのこしたまま
あのひとがいなくなってしまったので
いつまでもわたしは
ひとりと半分のからだで過ごしている


明かりの消えた部屋で ひとり
アルコールランプに、火を点ける
ゆ ....
3分遅れている時計は、決して正確な時刻を刻むことはないけれど
止まった12時間表示の時計は一日に二度も正しい時刻を告げます

ならば止まった時計のほうがより正確なのでは?
そう勘違いして死んで ....
心の屈折率が違うから君と相対して話せない
記憶の圧縮率が違うから思い出を共有できない
眼鏡越しに見る世界はとても綺麗だ
人混みが嫌いです
だから何時も上を向いて歩く
沢山の人たちにぶつかって
毎日詫びてばかりいる
それでもあの青い空に
釘付けになってしまう僕は
何かが抜け落ちているのかな

何時か君に話 ....
三月から
止まったままの針さきを
ゆっくりとまわして合わせた
雨の朝に目を覚ませば
あなたは 
まだ


白くあわたつ
菫のような朝
からだにおさまらない もじ
柔らかな葉が ....
閉じる
今日が終わったら
とりあえず雨音の中で
夢を見よう
出来るなら昨日の続きがいいな
懐かしい人が居た

閉じる
今日が終わったら
とりあえずいつものように
明日が来るまでは
 ....
世界の終わりが見えたあの日
僕は産まれたのだと
身体のどこかで誰かが囁く
液体の中で呼吸を始めたのだと
瞼の裏で透明が交錯する

あの星たちは終わりを見てきたのかと
ビロードを拡げた空を ....
ひらいた
真っ青な夏の花、の小さな朝のこと
誰も忘れていたそれは、僕の机にあったらしくて
迷わずに僕に返還される
空に混ざれば見えなくなりそうな
僕の目は青に染まる

誰もいない部屋のこ ....
夏の空は不必要に青過ぎて
まるで現実感がない。
蝉の不協和音も陽炎も
在り来たりの遠さでしかない。
立ち止まって振り向いても
君が居ないのと同じように
希薄。


印画紙に切り取 ....
窓風に
遮断機の音
終電が出たあとに
こんな音を鳴らすのは
長距離貨物か寝台急行か
レールの隙間につまづきながら

(一日、伏せてたのかい、それはしんどかったね)

それが見知らぬ場 ....
どこまでも誰もいない
ぬれた灰色の道に
どこまでも空が落ちてくる
凛とした声が触れにくる
雨を歩むものの頬に
触れにくる


夜がひらく
さらに奥の夜をひらく ....
だって
どの午後にも
煩い色彩がありました
静けさは無く
とりわけ静かな白は無く


ぬるい絵の具にわたし
どうしたってなってゆくみたい、と
教わらなくても、 ....
末端の夜で
日常にある
輪郭のない
さびしさを
手繰り寄せる

その顔は
か細くゆがみ
青白い灯火に
照らされて{ルビ寝=い}
さまざまな角度で欠けている

ほおいほおい
呼 ....
  
  わたしの中に森が生まれたとき
  その枝は音もなく広げられた
  指先から胸へと続く水脈に
  細く流れてゆく愛と
  時おり流れを乱す悲しみ



  わたしを立ち止まら ....
地へ圧し掛かる空と
空へ高揚する無数の緑の視線との間
夏の声帯が震え、静かに感情を燃やしている
若い耳で、耳鳴りが日常になってゆく
若い目が、陽炎に依存してゆく
信じられるものを ....
ぼくたちがみた

いくつもの風景は

今にもあふれそうなのに


それでもぼくたちは

未来をみようとしている
足下に流れるほの暗い思念の残滓
忘却の河に沈む意志の荒野
時の行方を筆先に乗せて形にならない言葉を返す
語られる物語の終章にあるのは虚無の後先
詩の痕跡を辿り行き着いた光の陰影を浴びて
歌わ ....
八月、
太陽が終わりのない明るさで街を照らす八月、
影のない者は日陰をたどって歩く
わずかなあいだなら
太陽を見据えることもできるが
かれには影がない
影のない者は太陽の下を歩くことはでき ....
苦しげな雷鳴に飲み込まれ
灰色に溶けてゆく午後の中
向日葵の黄色の彩度が
浮いてしまっていて
それでも、向日葵は
いつまでたっても泣いたりせず
ああ、どうしてなの
滲んで ....
塔野夏子さんの自由詩おすすめリスト(1057)
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