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しずんでしまった
ふねのこども
うみはあおくて
そらもあおくて
とてもきれいなひかりに
あこがれながら
しずんでしまった
ふねのこども
花のひとひらが
枯れ葉を追っておちる様に
それはとても自然なことだよと
あなたは言った
白いカーテンが窓の外へとたなびくのに誘われて
....
机でランプが灯り、絵はがきについた赤いインクが滲んでいる。
空を隔てる天井に、逃げ出すような駆け出すような音が響く。
青い血脈の、力強い脈打つ音がうめき。
手を振り回しても、何かに当たること ....
八月
がくる。別れの季節
を知らないままに。
二度と醒めない夢
を夢見ながら、二度と終わらないおはなし
のまんなかにいる。
失われたひと
によってうたわれた歌
を、誰
にも知られない ....
てふてふが
海を渡つてゐるのを
飢ゑた勇魚が、
ぢつと、見た
食べてはいけないのだよと
言ひ聞かせながら
....
いつのことだったか
おーきな木に寄りそって
声もなく泣いたのは
知ることのできた空は
果てを知らずに膨らむ奥行
しっとり流し目をすると
逃げ迷う合せ鏡の黒髪
時が来れば尽きる
....
夜の野を
羊たちは走る
帰るところなく
羊たちは大群となって
夜の腕の下を疾走する
月の微笑に照らされる夜
野の果ては地平線で切断されている
人はひとり凍えて横たわる
夜は ....
街の中心
その、少したかいところ
高架化されたせんろの上を
古びたでんしゃがはしる
ねむいからだをはこびながら
きみのすむ都会から、とおいまちへ
眼下にひろがるまち
せなかには洛 ....
海に近い砂の丘から
無数の骨が突き出している
かつてここで倒れた巨大な生き物の上に
浪に運ばれたものが積み重なり
石でできた枯れ木のような
蒼白い骨の森を造った
海からの風に ....
どこかで風の止む音がしたの
走っていってみたけれど間に合わなかった
私の花園で赤い花が咲くことはもう無いでしょう
どこかで水の零れる音がしたの
走っていってみたけれど間に合わなかっ ....
男は笛吹きであった。
男は町の笛吹きであった。
男は路上で笛を吹いていた。
男の音はいつも優しかった。
黒い男は音を鳴らす
少年少女は彼の元へ
黒い男は音を鳴らす
少年少女は憧れて
....
ひがしのそらに 夕焼けをみた
まぼろしだよ、と
ひとは笑う
からんと音をたてて
百円玉が落ちた
ころころところがって
排水溝に飛び込んだ
現実と、そうでないもの
境界は気付いた ....
少年が指差した向こうから
手を繋いでやってくる 暗い空
雲が沈んでいく
坂を登った先を
僕は手を併せて この暗い大空を迎える
カツン
病院の夜
廊下に映る非常灯
漂う薬品のにおいに
鈍く刺激される静寂
今夜は無風
女はそういったことを言ったと思う
喫煙所の密室(いまどき室内なんて珍しい)
いつからここにい ....
あなたはわたしの何もかもを知らないし
わたしはあなたの何もかもを知らない
それでいいと思う
それでいいと思ったら
夏の柔らかい部分では
雨の方で都合をつけて
わたしとあなたを
水たま ....
私は宙にいた
ずっと空を聴いていた
私を支えていたのは
ただ蒼い闇ばかりだった
ゆれる森
立っている人
言葉をめくる声
降りてくる色
暗くやわらかな
....
十二番目で
いつも言葉を間違えてしまう君は
その次の交差点では
左折ばかりを繰り返している
東京
狭い夕暮れで
夢から覚めたばかりの抜け落ちた体を
ついでのような角度でドアの隙間に潜り込 ....
何を忘れたかったのだろう
街に一つしかない小さな駅で
男は窓の外に向かって手を振った
無人のホームでは鉢植えに植えられた
カモミールの花がゆれるばかり
やがて男を乗せた列車が発車すると
駅 ....
どのくらいの広さで降っている雨なのか
心は探りに行く
夜に出てゆく
けれど心は気持ちでしかないので
体の外のことは何も感じられない
雨の立てる匂いの遠さと近さ
水の滞空時間
....
夏の情熱の裏側に
すらっと伸びた少年少女の
腕がつかみそこねた{ルビ目差=まなざし}を
冷たく崩れてゆく陽炎
囚われた脈動は
透けていく意識となって
{ルビ中性花=ちゅうせいか}の宙吊 ....
たおれるって
あきらめることでは なくて
おきあがれない こと
かよわなくなった こころ
暗く 憎しみばかりつのる時
灯は しずかに 病みを照らして
今は 夜
ただ ....
あたしの町のあたしの川の向こうにはあたしだけの工場が在る。
其処は終日稼働式で、何時でも好きな時に好きなだけ眺める事が出来る。
くすんだ灰色の煙突は大した高さでも無いのに
チ カ チ ....
朝が近づき
朝が持ち去る
行方の見えない道をゆく
朝に現われ
朝に消える
直ぐにかすんだ道をゆく
明るい雨のなかをすぎ
銀に鋳られた道をゆく
歌を見つめ
空を見つ ....
背中あわせに立って あるきはじめた
ふりむきざまに 撃ちあうこともなく
ふたたびは相まみえるはずのなかった
もうひとりの わたしとの
決闘が 用意されている
夏のことをよく知っている人がいて
その人は
例えば緑の葉っぱを重ねたような人で
ときどき
鮮やかな花を咲かせていたりする
ただ画家がその人の絵を
描こうとするとき
その人は
たちま ....
時を刻むより他に
自分にはすべきことがあるんじゃないか
時計は思った
けれど何をしようにも
手も足も出るわけがない
ただ柱にぶらさがって
そこはそれ時計の悲しい性なのだろう
正確 ....
ねぇ、アリス
貴女が居なくなっても
この世界は続くと思っているでしょう
ここは
たまたま落ちた夢の国
だから
たまたまなんて
二度と起きたりしないのよ
ねぇ、アリ ....
無数のソーダ水の泡が
ソーダ水から夏へ飛び立つ
そのときの一頻りの冷たい破裂音を
私たちは聞きます
ね、
それは、模範的な別れの際だと
ほら、そのあとに残るぼんやりとし ....
かけおりた坂道のおわりには
ボーダー柄の、夏が
波のような顔をして
手をふっていた
それから、 と言ったあとの
あのひとの声が
ノイズにのまれて、ちらちらと
散ってしまったので
....
世 警
界 か た 告 の ラブレター
に ら 私 へ と し
存 ....
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