すべてのおすすめ
鏡で色を盗むと
空は気圏のように薄らいでいく
ひかりだけで染められたセロファン
退色した虹がいろどる夜
沈黙ではない静かな
月光の耳鳴り
声は聞こえるものだろうか
それとも伝えるもの ....
/
空の上にはきっと
もうひとつの空があって
雲の死骸や
産まれたばかりの星が
触られるのを待っている
夜闇の裏にはきっと
もうひとつの闇があって
焼きついた月光や
あいまいな朝が
....
もう忘れてしまったから
思い出せる
縦に細長い
三角屋根の家は
白い壁に
木の階段
小さな抽象画が
三つ
上って行くと
グランドピアノと
背の高い譜面台
バルコニーには
テーブ ....
人間は青い空がいつでもそこにあるような気でいるけれどもそれは違う
空はいつも降ってきている
降り続けているのになくなってしまわないのは
絶えず生まれ続けている ....
真っ青な血脈の層が 極限のうすさではりつめ
未到の境地が 静脈を経過しながら
うつらうつらと沈静していき やがてそらへと
暗く澄んでゆくのです。
架空層の仄暗いうちがわにある
華の蒼 ....
空から新聞を配達した
鳥が
雲の匂いをさせて
日付変更線をまちがえて
落ちてくる
少しずつ速度を上げて
時はわるびれた様子もなく
記事が
ところどころ切り取られていて
それ以 ....
男は椅子に座っている
頭の上には青空が広がっている
けれど屋根に支えられて
男は空に押しつぶされることはない
屋根は壁に支えられ、壁は男の
視線によって支えられている
目を瞑る、それ ....
屹立した断崖に守られた
小さな浜である
波は平たく伸びて
漂着したものたちの空ろを
静かに洗う
持参した
小瓶のコルクをひねると
砂つぶのような詩がこぼれて
波にさらわれてゆく ....
夜のドレープに裂け目が入る
夜明けが裾にそっとくちづけると
私はすべてを脱ぎ捨て
一羽の鷹になって飛んでゆく
まとわりつく冷気を翼で切りながら
あなたを求めて飛んでゆく
私は ....
自らの縁において、きみは
もっとも
われに返らされて、自己の
もとに戻っている、あらゆる外に
むかって、あらゆる外
から
解放されるように
ものの名を知ることは
世界ととけあうことだ
曇天の下
すべては自らを中心に
分断されている
その心がかなしく
またこわいのだ
誰も知らない場所で
花が落ちるように
周囲から急速に暮れ ....
指の願い
叶わず
雨垂れて落下する夕暮れに
そっと逆らい 立ち上がり
すとん と見下ろせば
窓硝子に迫りくる夕闇に もっと ひろく
もっと しとしと
見下ろされ
あ ....
海岸線のガードレールでもなく
尾根を越えていく高圧線でもない
届こうとするものは
いつも不完全で ただ
どこか、まで続いていく
アルシオネの円周でも
火星が結ぶ軌道でもない
繰り返す ....
隙だらけの牢獄で、
僕と君は、
鬼遊び、
逃げ出す役は僕なのでした、
やがて、振り返ると、
立ち入り禁止の看板に身を潜めた君は、
境界線の
白い側を餞
黒い側を赦し
として、最後 ....
きみとともに、暗く
彼女が
受け入れている
こと
むこうへ渡すこと、越えていく
ものが、あると
ない
ということが、
きみとともに、暗く
彼女を
受け入れていた
....
真昼の星座のように
記憶の中で物語を紡ぐ
思い出せるだけの登場人物が
いつも同じ台詞
終幕はいつも引かれないまま
あきらめきったような時報で
私の視線は花壇に戻る
鬱金香、まっすぐだ ....
回っている。
ロングスカートをはいた女が
スカートの傘の中央でバランスを取りながら。目を閉じて。
右手は垂直に天井に。左手を横にゆるやかに伸ばし、回転する。
長い間、ただ一心に回り続ける。
....
僕の暗がりに
三十四回目の月が生まれ変わる
前世も月だ、その前世も
それを証明するために
この手は螢石をみがく
やがて銀河の形の指輪を飾るために
暗がりの天蓋がひと巡りする
シリ ....
人体模型は海を見ていた
筋肉の組織も内臓も剥き出しなのに
それは自分の何をも語りはしない
こうしていると
かつては本当の人間だったのかもしれない、と思う
電池の切れた玩具を
大事そうに ....
ゆる、ゆる、何度もまぶたは
まぶた、と知る。
いないあなたを知らず
カーテン、と知り、朝、と知る。
行き来する仄明るい青に促され
ゆる、ゆる、まぶたは
ぬくい水、と知る。
....
口の中に微かに鉄の味がある
コートの袖口が擦り切れている
錆びたドラム缶からはいだして
月下の廃工場を後にする
奏者を失って久しい機械が
ほの青く光る一群の風琴になっていた
鳥が飛び立 ....
ひどく病んでいろづいた花は
あたしをただ焦がします
鮮 烈 、
ほんとうはいらなかった
べつにどうでもよかった
曖昧なものは
曖昧であるうちは永遠です
曖昧 ....
疎まれた鳥が飛ぶ。
三月。
ランゲンハーゲン。
いまさらどうにもなりはしないのに。
疎まれた鳥が飛ぶ。
横傾しながら。
冷気に翼を浸し、
思いつくままにかたち ....
陽炎のなかでゆらぐ
私を呼ぶ声がする
ふりむくと
呼んでいる私がいる
陽が奈落へ落ち
街が色彩をなくしてゆく
すべてが風のながれのなかに消えようとする
きっと思い出されることのない風 ....
飛び立つ後ろ姿を
どこかで見た
朝
の記述を
探して
黒く浮かぶ
記憶の島を探し
脳内を辿ってゆく
鳥
ほの明るい
Cellの海の
上空に浮かび
....
わたしはきみに遅れつづけて、きみは
みずからを
超え出ていく、刻々と
わたしは
きみを連れて行かなければならない、きみが
時間を生みだすがままに
して、わたしの
図式は引かれる、 ....
裸のまま
まぶしそうな仕草で
月明かりに浮かぶ
広場の青銅像の影が
焦点を化石の姿に結ぶとき
恐竜の骨、それが
今日のあなたの言葉
騙し絵は嘘もつかずにごまかしてきた
勘違 ....
薄く繋がる皮膚の下に
どこまでも空は広がっていた
その空の下には
同じくらいの大きさの街があった
その街で確かにわたしは
皮膚の持ち主だった
だから夕べ
知り合いの人たちに
なるべくた ....
鳥になりたいと思った
そしたら
鳥になった
はばたくと
風はいちまいの紙だった
会いたい人がいる
その街だけが
記憶のかたちをした白地図
飛ぶ。
風には声もあ ....
浅い春だから
吐く息はわずかに白く
見上げてため息をつけば
ひとり六分の月
面影というにはまぶしすぎて
思い出というには遠すぎて
もう歌わないと決めたうたをつい口ずさむ
もう ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36