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その川と海とがぶつかる場所で、誰かが手を振っている
回転を続ける灯り、列になって逃げていく光
そのどちらにも負けないように小さく、手を振っている
海はどこでも引いていき、魚が飛び跳ねる
月へ向 ....
雲が
破け
露わになった夜は既に黒々と
艶やかで冷たい体表を完成させており
その直下でアスファルトは
終わったままの雨の微粒子で
キーン、と
光沢し
張り詰めて、いる
張り詰 ....
あの人は
そこが好きだと言っていた
いつも夏には水性で
書き残す言葉から消えていくものばかりで
うっすらと昇る、煙
焼けている靴の底から
縮んでいく
人たちは
....
ひとつの了解からはじまる憂鬱。世界のすべ
ては青い色でぬられている。雨をはきだす雲
のありかである空、それも青ならば、雨その
ものも、青い水彩絵具にとけてふってくる。
人はみな、青にびしょぬれ ....
酸性雨が降り
森が枯れて
花は身じろぎもせず
こっそりとあぶくを吐く
内なる情念を
笑った眉尻にはりつけて
澄んでゆく
影
道草が過ぎたので
傘をなくしてしまった ....
送電線の下をくぐって
アスファルトの海を
ぼくたちは、
泳いで、
はりめぐらされる
緯度や経度に
足をとられながらも
ひたむきに
日帰りの旅をくりかえす
ねむる前、ときどき
....
王冠で すくおうとして
おびただしく こぼれる
純血のひとの うしろのほう
丘のうえに 月が
座礁している
ねこや青空や荒野を
ねこや青空や荒野と
なづけたひとにあなたのなまえを
なづけなおしてもらいにゆくのなら
てぶらで部屋を出て
ふいにバスをとちゅうで降りる
もう二度と帰らない旅行へ出かける ....
規則的に並んだ 長方形の、
石の上に横たわる
やわらかな、暗室
腕をまっすぐ 前に伸ばして
星座の距離をはかる
おや指とひとさし指で足りるほどの
遠さで
わたしを見下ろしている
....
消えてしまった夏の日のサーカス
なにもない草原に現れては溶けていく
夏の夕暮れはどこか嘘のようだった
煙のようなもの
で、構成されていると
なんとなく信じることにした
わからないこと
適 ....
あの日の筆圧で
定着したインクが
原稿用紙の余白に
青くにじんでいた
その万年筆の字体は
水性の化石だった
硬質のにじみの層は
幾重にも連なったブレストーン
そこでは私の声もに ....
遠い朝では
誰かが零れていく音が届く
十三階建てのビルの可能性のひとつ
非常階段の手すりはそれでもまだ綺麗で
ただいま、というその言葉の行方も知らない
人の夢に誰かが寄りかかって
君は ....
1
月に憑かれたピエロが
ぼくにずっとささやきかけていた
ぼくは我にかえった どうして
こんな遠くまで来てしまったのだろう
2
満月に
子供のオバケがひとり
さ ....
パレード、通り過ぎる、そんな頭上の光を
楽しいという感情を置き忘れた日の夕闇
彼はそのために全てを考えるということをして
流れていくひとりぼっち、常日頃想うようにすること
ステップ、音楽を歌う ....
行方もない風たちを
帆にはらませて
もう帰らない船の
船笛の消えていく先
短い呪文
アストロラーべ
二人の旅路を
羊皮紙に書き出しても
深海の底に
沈む姿があって
透明な海藻に ....
生きている性質に,進むことを促すような
活動領域がどこかにあって
そこの何かごく小さな信号のようなものが
僕の進むことを前提にともっている,
そんな気がします。
そしてそこでは
誰かと ....
染み込み切らず
床に溜まる夕刻、それは束の間
窓枠が区切って下さった一人分の西日は
結局は目の前で
床へ、床へ、沈んでいった
星といえばビー玉の中に
赤く青く黄色く、在 ....
空が飛んでいる
空が飛んでいるので全ての羽が浮上する
見つめることはいつだって透きとおる
見下ろせば ものの在りかはかなしい
重力の堆積が歴史で出来ているなら
ぼくらの言葉は足跡のように ....
これから明けていくというのに
どんな闇より深い
口笛が
聞こえる
とぎれがちになるのは
灯台が
瞬くから
そして波が
騒がしい
そう、音が
熱をともなって
肌を
突きぬ ....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
雨の来ない図書室では
忘れるように眠ることが出来た
背の高い書架の影で彼らは
姿を確認するために囁き合う
私の載っている本がない
私たちの乗っている街は
地球儀の上に針で止められている
....
なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のい ....
ハル
そう呼べば君は心から紛れていく
ありがとうという意味で
口のかたちを残して
狭い空に雨が降っていた
振り切れない景色を順番に巡れば
何度でも逢える気がしていた
ハル
繰り ....
あなたが
雲雀の落し物を書き記しているとき
あなたが
コーヒーの甘さに悪態をついているとき
わたしは遠ざかる
遠ざかってゆく
あなたが
もつれた糸を我慢強く解きほぐすとき ....
銀の魚
キララ
宙に浮かんだ
不思議なスプーン
美しく
(透明な水を満たしたガラスの箱)
銀の魚
キララ
張り詰めた神経は
とても敏感に
状況を捉え続ける
この広い世 ....
最初に巨大なテーブルが在つた。
テーブルこそは原初の者である。
テーブルの一辺は三千{ルビ阿僧祇=あそうぎ}四千{ルビ阿僧祇=あそうぎ}であつて、
其の対角線は五千{ルビ阿僧祇=あそうぎ}、 ....
きみは船長で
ぼくは車掌だった
二人でずっと
夕日のようなものを見ていたけれど
夕日だったのは
きっと僕たちにちがいなかった
海にも線路にも続くことのない
ロープでできた乗り物を最初に降 ....
連絡通路には窓がある
この下を、通る線には空がある
小さな窓枠から顔だけを出して
呼吸、をするためだけに
はめ込まれた絵を、まずはどけることから始めて
アフター、通り過ぎても
落とした ....
魔法瓶に夜空をみたし
ほの明りの朝、遠足に出かけた
あいさつをしたら
光の丘で
化石だった風が
重く熟して
翼となった
種子
小さく{ルビ瞬=まばた}きをすれば
霧散している光へ ....
パレード。パラーデ。歩いているものを集めて、ただそれだけのこと。川のような世界で、素数のようにひとりぼっち。2、3、5、7、11、とそこまで数えたときは、最盛期たる朝。いっそのこと、きみは世界をよく見 ....
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