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爪からこぼれる蜜の香りは
やさしく手毬に
塗り込めましょう

今宵
千切れてしまう羽はいくつ
枯れてしまう草木はいくつ
夜露は静かに
鏡となって
子守唄がにじみます
いつわりの片鱗 ....
ある季節の終りに
風鈴が
まぶしくゆれていた

わたしは 風へ帰れるだろうか
いつの日か
空で回旋する球形の庭園に
立ちよることが出来るのか
ゆれることと立ち尽すこと
そして、歩いた ....
昨日が朝になりたがる日
どうにも眠れない嘘がある
まだ、一つひとつを上手く運べない君は
回りくどい道程でもって
明日の夕暮れになりたがる
前へ、前へと変容する君たちがいる
秋空がいつの間に ....
アスファルトにいて、
わからない、
夏、激しい群青で遊び過ぎ、その果てに、
すっ、と発狂するようにしてひどく青く、
遠ざかる空、その秋の為なのか、
或いは ....
間もなく思想がまいります。
危険ですので
足元、黄色い線の内側に
心してお下がりください。

どちらが内側で
どちらが外側なのかの判断はお任せします。
ともかく黄色い線の内側に
心して ....
遠くまで 届きたい
おもいが 橋となる
その たもとから
深淵を のぞいて
たちすくむ
プラットホームを行き過ぎる風
の形をした夜、の度に剥離する熱
を見送ってわたしたちは
さらさら、
最後の車両の跡地で長引いて
蛍光灯の微かな痙攣音とも分離しながらわた ....
ほほを桜色に染めた
小町娘が夜道をすっすーと横切って

午前零時の散歩
{ルビ映日果=いちじく}の葉に反射する
コウモリの声
超音波時計に刻まれた
わたしは悲しみに冷静でいたつもりだった ....
それは
私が見た
たくさんの野を駆け
私が見た
たくさんの空を駆けて
いつも また
ここに帰ってくる

別のかたちが あるなら
どんなに いいだろう

目覚めた 明け方の
浅い ....
魚の名前や花の名前に似ているけど
それとは違う言葉
直線ではなく曲線にも似ていない
それでも閉じている言葉

数え切れないそれらを
生み出しては忘れ去り
墓標をたてては
思い出と気取っ ....
明かりの消えた教室で、
ひとりふたりと、
席につく。

学籍のないぼくたちは、
幽霊みたいにゆらいでて、
いつも不安で不安定。

黒板のかすれた数式は、 ....
今夜
熱を吸い取った風がするりと逃げていくね
もうすぐやわらかくて軽い布が
肌を覆い隠す季節

そうして、君のためだけに体を磨くよ
そうして、こっそりと見つかってしまっ ....
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね ....

午後が
千枚のツツクホウシで耳に触れる
この、耳、
もっと奥へと誘う迷路を装って実は
透明のものにたやすく沿う為の形状の
この耳が、悦びに震える、嗚呼、午後よ、
午後 ....
想像して
君はよくそう言うけれど
実際のところ僕は、何も思い出せずにいる
海沿いの寂しい国道を夕暮れに倣って左に折れると
何もない町があるのか
君の住む町があるのか
もう、どこにも行けない ....
彼がいる。
此処彼処に彼がいるので、
落ち着いて眠れない。

彼は日暮れになると満ち満ちてくる。
丑の刻を迎える頃には、
遙か彼方まで彼で満たされる。
此 ....
ついでだからそれも(どこか遠くへ)
捨てておいてよ
使い切れなかった、使い捨ての
積み残していく、観覧車
  (あの景色はどう見ても、空回りしていた)
夏は、どこを切り取っても夏で
僕はい ....
空を行く
風ほどに軽く満ちていたい
鳥の翼を
ささえ得るほどに

空に吹く
風ほどに軽く満ちていたい
様々な音を
伝え得るほどに

何かあるように見えなくて
それでいい
雲はた ....
薄暮れて
眠り続けた一日が
黄昏に、朝と夜とを迷う視界に
君の小さい、窓辺に向かう後ろ姿が


棚引いて


まだ平原には届かないから
打ち寄せる波がこちら側を削っていくのを
た ....
眠る肢体の硝子の呼吸に
空の落下を錯覚する
心音の宙に浮いてきそうな静けさに
めまいしてうつむく不意なかたちで
水性のからだへと溶けそうで
うわ言をもらすあなたの手に
ドライフラワーを一輪 ....
すう…、と
夏が引いてゆくにつれ
風に乾いた砂が
自ら風になる
砂に埋められていた
右の素足と左の素足が
柔らかに打ち明けられるのは一瞬
直ちに、衣服へ、衣服へと仕舞われ
 ....
この向こうに、
きみへの窓があると、
そう信じていた夏。

返ってくるはずのない、
手紙を書き続けていた。











 ....
りんご農園の気配の残る

最後の番地を通り過ぎた

その先の道のりの限られた長さが

無限に区切られているかのような

実在しない旗の行列

この世の果てを先送りにして

にぎ ....
日々の果ての
朝、(辛うじて未だ夏の、)
誰よりも先に、空が
窓で泣き出している


日々、とは
ひとつづきの熱風だった
その果ての、床と素足に
夏だったものが生温か ....
夏祭りの音の屋根
迫り出した空のかけらは
まだ遠い、午後の私へと溶けていった
古い夢の神社の石段を
ひとつ飛ばしで駆け上がれば
頼りない心音のままで
私はきっと、そこにいる

夏の夕暮 ....
   月ではまだ
   冬の初めで季節が
   止まっているようだった


   浅い眠りの合間に
   この頃よく、夢を見る
   凍えたままの月面で
   あなたをこの腕で抱き ....
吹き抜けのある町に生まれた
回り階段を何度か抜けると
大切なものが床に散らばっているのが見える

高い天井はどうやって作ったのだろう
昨日は知りたかったことが
今日には通り過ぎている
支 ....
競うように加速してゆく
コットンキャンディーの群れ
夜の芝のうえを 不穏に

湖につづく川面をすべって
あなたの髪のさきに ぼんやりと灯る光を貫いて走る
モンスターのうしろ姿

扁平の ....
海沿いの盆地にみちた
湿気と体温と上昇気流の
かたち、あの夏の雲
想いだけが熱いから
激しくゆらめくように
それでも
倒れるわけにはいかないから
ひとしきりの雨を
足跡にするのでしょう ....
あわく光の閉じられた
空のもとを
一羽の紋白蝶が舞っていた
しばしそれは
重い熱風のあわいを
ちらりちらりと映えて
切れ切れに風を読んでいたが
霊園の奥深くへ とけていった

さて
 ....
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