空を見上げる時の
人のまなざしというものは
なんて無防備なんだろう
−祈りは役に立たない
いつか言われた
その言葉ずっと胸にひっかかっていたけど
やっぱり認められない
何かできることあるかなぁと探しても
何だかひとつも見つからなくて
結局いつも ....
1988年の秋に、私はそれまでの詩のかき方を精算すべく、個人詩誌「風羅坊」を創刊しました。コンセプトは、短く、平明で、身辺的であること。そこにはそれ以前に親しんできた現代詩的な構文への反発がありました ....
なぜ書くのか?
なんて
なぜ息をするのか?
と同じくらい
愚問だ
別に、
生きたいから
息をしている訳じゃない
死にたくないから
息をしている訳でもない
お ....
立ち止まる午後
見上げる空
見下ろす街
切り取った直線のシルエット
時は規則正しく歩き
赤で止り
青で進む
直線の上
歪んで転がるもの
わき目に時は行く
....
初めて手首を傷つけたのは
中学2年の夏だった
転校生の私は口では言えないような
いじめに合い
だけど誰にも言えなかった
辛くて苦しくて死にたかった
でも死ねない
意気地がない
そう思っ ....
流れ星を見た。
うつむく彼の頭撫でながら
見ていたら
すっ
すっ、て
花火大会の余韻も
冷めやらぬ私の頭上
初めて見たよ。
2つも。
髪の毛をかきあげたら
鳴くんだよ
....
毛むくじゃらの家猫が出かけて行ったきり
帰って来ないものだから
庭の木で啼くスズメの声が
遠慮なく鳴る目覚まし時計で
最近は、誰よりも早く窓を開けて
新しい風を味わう
あめ色の古机の上 ....
あの頃
全ての流れ星を追いかけていた
水田に映し出される蒼い蒼い光の粒が
幾千もの時を越えて堕ちてくるのなら
山も川も空も海さえもそれを歓迎するだろう
光の螺旋を仰ぐ時
足元 ....
通り魔が居眠りする路上で
おれは通り魔を殺した
こわくない
おれはたった一人の人間だ
心臓と肺を持つ
たった一人きりの人間だ
長い長い
疲労感と倦怠感、頭 ....
誰彼の
人生の一幕を引き受けながら
幾度の夜をくぐり
幾度の朝に停まり
巨大な車体は
物悲しくも
満足げにも
重々しい ....
言葉が逃げていってしまう。
わたしは言葉を結びたい。さといもの葉っぱが夜露を結んでころがすみたいに。
そんなふうにして、わたしは心のかたちの一部分を作っていたのだ。
わたしの目や耳やからだの表面 ....
ギンギンに陽が照りつける中
えんえんと続く海岸線の途中で
すやすやと眠って、ふと起きると
てくてくと翼を傷めたカモメがやってきて
そわそわとして寂しそうで
カラカラに喉が ....
根元をヘアカラーする
見せられないもの
もっとあるとおもっていた
世界はそんなに やさしくなくて
しとしとの雨が鎖骨にプールをつくるまで
ひとりじゃだれも抱きしめてあげられな ....
卵を眺めている
何の卵か
判らないから
卵の中から
何が出てくるのか
さっぱり判らない
卵かどうかさえ
実はあやしいのだ
いっそのこと
割ってしまえば
少なくとも
卵なのか
そ ....
妹のまねをしてピンク色の靴に足をいれました
妹の足先をちぢめる癖がうらやましくて
きゅきゅいとゆびを中に引き入れようとするのだけれど
うまくまるまりませんでした
台所にひかれたリノリウムの上に ....
昔から僕の家では朝は紅茶で
それも普通のティーバッグで作るやつなんだけど
僕はそれが好きだった
透明なお湯に少しずつ漂うように染みていく
あの色が好きだった
自分の世界が少しずつ広がるよ ....
こんにちは
頼りのない足取りの青年が囁く
こんにちは
つぼみのままの桔梗のようなからだが
治療病棟の個室に吸いこまれる
「若松さん。」
人の傷跡が残る廊下に ただよう消毒液のにおい
若松 ....
君の歌が聴こえる朝には
泣きたくなってしまうんだ
少しだけ風の冷たい、
土曜日の始まり
齧りかけのトーストと
マーマレードのかすかな苦味
それから君がア ....
悲しみが生まれた頃は
見えないものなのです
それは
徐々に姿を現すのです
時間が経つにつれ
小さくなることはありません
同等の質量を維持したまま
心の真ん中に居座り続けます
....
赤らんでゆくトマト、
緑に染まってゆくピーマン。
畑のトマトはトマトくさい、
畑のピーマンはピーマンくさい。
八百屋で買ったピーマンを台所で切る、
ピーマンの匂いがしない。
当たり前かもし ....
ときには
紅い紅い林檎を買いたくなる
紅い林檎
磨いて磨いてあざやかに紅
ときには
紅い紅い林檎に歯をたてて
鬼のようにガツガツと食らいたい
般若の顔でガツガツと
人肉 ....
僕の血を吸ったばかりの
大きな腹をした蚊が
ベープマットの上を飛び過ぎて
週末に掃除しただけの木の床に落ちる
音はなく
羽ばたきもせず
すとりと落下した
自由落下のそのまんま
でも
....
一日に一回
空は夕焼けに染まる。
晴れていたなら、だけど。もちろん。
夕暮れてゆく世界は私の手の中にあって
私は一杯のコーヒーを飲み干すみたいに
簡単に
それを飲み干す。
でも確 ....
今朝
彼女はブランマンジェ
ねぼけまなこ ねがえりのような相づち
ひばりの上昇にのっかって ざわついている私の毛穴
素肌は 夏の掛けぶとんにくるまれた甘味
横たわる小柄な肢体は きっと
や ....
むねにすんでる
やわらかくて
せつないもの
いつでも
せんめいに
さいせいできる
いっしょにすごした
さいごのなつの
はなびも
あか、あお
ぱち、ぱち
さらり、さらり
....
とどがいます
打ち上げられました
寝ています
どこにも行けません
助けて
なんて頼まない
とどだから
なんだか疲れたので
しばらくここで休みます
ひとりです
ダイヤモンドダスト
....
ちょうど何処まで行っても追いつけない陽炎のように
安寧の地はますます遠ざかるだけだ。
コノママデハイケナイ
でもあたしはまだ貴方を憶えて居る。
買い物籠の中にはチョコレート
とコ ....
もう札幌は初夏を迎えました
裏庭では ライラックが花を咲かせました
夜になって外に出てみますと
夏のにおいがするようになりました
でもたまに 肌寒くなったりもします
少し ....
それは不思議な行列でした
新月の夜でしたのに
ぼんやりと照っていたのです
そこかしこからケタケタと笑い声が聞こえましたのに
誰も笑っていないのです
一行は静々と厳かに歩みます
この世の者で ....
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