雨降るなかを雨降るなかを
ひだかたけし

濡れたアスファルト、
黒光りしながら
ゆらゆら揺れ
今日は雨、
胸奥が
酷く切なく軋み
遠い記憶の余韻が響きます

  *

あれは小学二年のこと
休み時間の騎馬戦で
後頭部を切り出血し
保健室で応急処置
頭にぐるぐる包帯巻かれ
雨しぶく薄暗い渡り廊下で
保健の先生が来るのを待っていた
病院に連れて行くからと言ったまま
一向に現れない先生を
長らくぽつんと待っていた

(雨降るなかを雨降るなかを)

その時わたしは理解した
[じぶんはどうしようもなく独りなのだと]
[じぶんはたった一人のこの自分なのだと]
雨降り灰色に煙る校庭を見つめながら
じんじん痛む後頭部を抱えながら
その時わたしは理解した

  *

濡れたアスファルト、
黒光りしながら
ゆらゆら揺れ
今日は雨、
胸奥が
酷く懐かしく疼き
遠い記憶の余韻が響きます

(暗い記憶の堆積を
貫き不意に浮上するもの)










自由詩 雨降るなかを雨降るなかを Copyright ひだかたけし 2021-03-28 20:30:22
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