長いあいだ 恋もせずに
眠っていた
営みがいとなまれ
物語は癒着しきって
開かれず 湿った頁を
ほそい指が捲るとき
できるなら まだ
起きたくはなかった
長いあいだ 恋 ....
狂い咲く
真冬の向日葵
君を白く穢した
情欲の迸り
伽なき夜の
けものけだもの
生きたまま月を食う
とお吠えひとつ
またひとつ
痒いから掻くのは
痒いのを痛みで
上書きしているのだ
痒みは治せないのだ
一言多いのは
痒い事を痛い言葉で
上書きしているのだ
痒みは許せないのだ
{引用=
こわれた家で待っています
むかし きいたことのある
こんな声、です
「死んだ子たちはけだかいので
星になったりしません
晴れ空に光がみちるだけです」
(おし ....
生まれたときは誰もいなくて
ひとりぼっちだったんだ
でもね雲さんがやって来て
雨をたくさん入れてくれたよ
その晩はとてもよく眠れたんだ
朝になったらドアを叩く音がしたよ
アヒル ....
しゃがみ込み透明な水を掬いあげる
これくらいの仲がちょうどいい
と思える、この場所にながくいすぎた
不純物がひとみの中に入った
ズルい人になりそう
心の空を飛んでいる人たちで
いっ ....
{引用=
かなしすぎてわたし
みちばたのたんぽぽのように首をたれて
ないています
さいごにもらした
ころしてやる
の、声が
しろい綿毛になって
神さまだっただれかのところに
とど ....
遠いところへ行ってしまった人へ
忘れていった財布が
今もここにあります
空っぽだよと言ったけど
あの日のレシートが
一枚だけ入ってました
最後に行った
二人お気に入りのお店
....
もう二度と戻れない
とつぶやきながら僕らの日常
入口も、出口も
いくつも開いている
環状2号線
トンネルを抜けると
道がいくつも別れていた頃の幸せ
次のトンネルを抜けた
....
冷やを{ルビ呑=や}りつつとらんぷ繰ればハアトの騎兵が眼をそらす
お昼を食べて 抱っこして
背中とんとんねんねした
母はソファーにべっとりくっついて
あえて身動きを止める
目の奥の疲労がじゅわーっと広がって
夕方には足の裏までぐおーって届く
....
自分が動けば影が動くことを
不思議に思ってしまった少年は
影の、また、影の連なりに戯れ続け
いつのまにか大人と呼ばれるようになり
ふと、空を仰ぐ、影が空に送られていく
少年は空にあり空は ....
どんなに練習しても
練習の成果は得られなかった
鉄棒の逆上がり
何度も挑戦したけれど
出来なかった
だけど
そんな子供はクラスに何人かいた
何人かの一人に私も含まれていた
夕日 ....
{引用=
人形が落ちていきました
夏の、空に。
アイスクリームがとけるまで待てなかったのです。
お猿の絵をかいていた女の子が
「待って」
と ちいさくさけん ....
ぎらぎらと陽が照っている
草木が緑に燃えている
世界はゆらゆらと揺れている
折しも二匹の紋白蝶が
絡み交わり輪を描き
白々と視界を過っていく
いったい何処へ行くのだろう?
自ら描 ....
{引用=ふるいふるい くさばな
わたしをみながら
なにを はなしているのか
わたしに きこえない
おそろしい こえで
(いのることができないのです
す ....
傷ついた過去を掘り起こすのは 止めよう
楽しい未来へ一緒に苗を埋めよう
おはようの前に 名前入れちゃって
仲良くなっていって
一緒に遊んじゃって
「楽しいな」って声に出しちゃおう ....
手のひらの小鳥が
命を使い果たしていくとき
呼んだら
返事をした
それは
声にならない声
音を失った声は
振動だけになって
手のひらをかすかに震わせた
あれはやっぱり声だった ....
何も語らず、微笑みながら
君は夜の川へと飛びこんだ
じゃぽんという音とともに
鉛を溶かしたような色の水球がはじける
あっけにとられる間も無く急速列車が横切って
窓から見える人人人
ごく一部 ....
目が覚めて一番に 口にした言葉は
くちなし
薫り ゆたかな色彩の白
しずくを 湛えた光沢の葉
無垢を 口にするときの ふるえる くちびる
くちなし
きょういちにち なにを はなすことだ ....
からっぽです
それはそうと
からっぽなのです
いいえ、からっぽなのです
からっぽなんだってば
それ以上言うこともないでしよ
からっぽなんだから
寂しいよう
風のない日も向い風
おでこもあらわペダルをこいで
きみは往くきょうも
仮の目的地へ
本当に往きたい場所には
まだ名前はない
愛せない地図ばかり
もう何枚も手元にあるが
こんなに長い一瞬 ....
すべての川は流れている
すべての故郷の川は流れている
耳を傾けるならその川の流れを
聴くことができるだろう
乾ききった風と砂しか入らない
窓からせせらぎが流れてくる
台所の床をひたして ....
*
・・・・・・・、・・・・・・・、・・・・
・・・・、・・・・・。
・・・・・・・・
・・・・・
・・・、・・
いいえ 堕ちたのは君たちです
堕ちてしまったから脳を損傷したので ....
ぼんやりぼけぼけ
ぼけなすび
はながさいたは
ゆめよのおわり
ぼんやりぼけぼけ
ぼけなすび
うらなりおそなり
なりそこない
ぼんやりぼけぼけ
ぼけなすび
わすれたころに
....
音楽の花の大地に星も降る
色彩が瞬き心に透き通る
風につられて 心地よく時間を置いて
手を合わせる
何かと繋がり その何かを考えずにすむ
心の置場所 雛を巣にそっと置くように
....
わからないんだ
青空がなぜあんなに悲しいのか
夕べ見た夢を思い出せない訳も
わからないんだ
故郷においてきた記憶の破片が
なぜ懐かしくないのかも
わからないんだ
テーブルに爽健美茶のボト ....
{引用=ちいさい音ですね
しってますよ、草むらのなかです
(ひとはいつか 虫になる、のでしょう)
わたしは音に、よびかけます
海に行ったこと、ありますか
....
手を
引かれて見知った町を歩く
老いた漁師の赤らんだ手が
まぁ、まぁ、呑んでいきな、と手まねく
あすこの地蔵、おどしの地蔵さん、脅しな
明治の頃、沢山の人がコレラで死んだ
焼き場はい ....
{引用=天使ちゃんです。
わたしの部屋の窓にすわっています。
毎朝十五分、ラッパの練習をしてから、かえっていきます。
絵をかくのがすきです。
神さまに見られるのがこ ....
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