灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で

六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
 ....
目の前に一本の道が現われた。

この道を行けば、海に出る。

ほら、かすかに波の音が聞こえる。

見えてきた。

海だ。

だれもいない。

天使の耳が落ちていた。

 ....
青ぞらの日の、
雑用のつみかさね、
フォークリフトに雑巾をかけ、
ゴミを拾ったり、あるいはホウキで掃いたり、
している、
どこか緩慢な、土ようびのしごと、
けれども思いのほかいそがしい、
 ....
電車に乗ろうとしたら
頭の先から尾ひれの先まで
すっかり人魚になっていて
人魚は乗れません、と
電車の人に断られてしまった
取引先には遅れる旨連絡をして
しばらくホームで待つことに ....
道の途中で、
一緒の者が笑い始めた
相棒は笑いながら
「もうお終いだよ」と言う
そんなことはないよ
いつか終わりかどうかじゃなくて
僕たちはちゃんと生きている

相棒は歩くのを止めた
 ....
おりひめとひこぼし
地上が雨で見えないときこそ
ラッキーと思ってるはず

一年に一度しかあえないなんて
神さまひどいよ
七夕がいつも雨で
人目を気にせず会ってもらいたい

いやいや  ....
お月様 浮かんでる
水色の空のなか
未だ未だ明るい
夜空の手前

お月様 不思議だなぁ
白く透徹と弦を張り
何か絶えず思考し送信して
この地球にこの私に私達に

お月様 浮かび上が ....
一人でふたり分の荷物を整理する

なんて過酷で残酷な(笑)

やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで

それでも時々、楽しくて


壁のシールを剥がせば そこだけ白くて

こ ....
虹を作る
その生き物の背中には羽があって
だけどそれは
空を飛ぶためのものじゃないらしい
六月の晴れ間を見つけると
庭にぴょこんととびだして
霧を吹きかけて虹を作る
小さな生き物は
小 ....
白い形の声が落ちていた
門扉が壊れて困る、という
間違い電話だった
切ることもできず
わたしはイトヨリダイ
だったと思う
そのような体をして
傾聴した
暑くて
素麺のお裾分け ....
 手をコピーする。左手をコピーして、右手を
コピーする。腕をコピーする。左腕をコピーし
て、右腕をコピーする。顔をコピーする。光を
見ないように、目をつむってコピーする。肩と
胸をコピーす ....
 夜

月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている

 朝

目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した

 ....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している

海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ

彼は{ルビ薬匙=やくさじ}を咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明か ....
大きな欠伸だ
場の空気をすべて吸い込む
人々は乳児に戻る
はい 始めからやり直し
  〇
隣に座る
それしかできない
隣に座っている
それだけでいい
  〇
親から子へ 子から孫へ ....
「ねぎま」がごろごろして
にゃおといった
戦争も災害も犯罪もない
一コマだった

雨の土曜日から
日曜日は青空を取り戻したのだが
底がないとどこまでも落ちていく
蓋がないといつまでも溢 ....
目の前が
桜の花びらに
埋め尽くされていたとき
きれいだった

若葉がちらちら
顔を出して
蕊だけが残った枝は
好きになれなかった

春のはじめの
端っこの方だけ
少し彩っては ....
  

やさしさがあふれるような風が吹く

やさしさがあふれるような街に住み

やさしさがあふれるような人にあい

やさしさがぼくの心をくるんだよ


ごまかしてなんていないんだ ....
「今日の貨物も 重そうだな」
「ああ 空の雲も 重そうだな」

凍り付く森の枝先 すり抜けて 
貨物列車がゆく
港の駅まで たんたたんと

コンテナの奥はガラスの水槽です 
銀の平原を ....
 春 おそく
 雲低い空の下
 裾のほつれをまといつけておいた
 小花柄のフレアースカートはいて街へ出る

 図書館の帰り、線路わきの公園で
 ひとり眺めみる 
 八重桜 
 ぼったり ....
手荷物を運んでいる途中
手荷物の無い手で触って欲しい、と人に言われ
代わりに国鉄時代の記念切符をあげた
質感が気に入ったようで
喜んで人は去っていった
遠くから連れてきた犬を飼い
笑っ ....
 いくら きみをひきよせようとしても
きみは {ルビ水面=みなも}に浮かぶ果実のように
 ぼくのほうには ちっとも戻ってこなかった
むしろ かたをすかして 遠く
 さらに遠くへと きみは ....
柘榴をお目当てにやってくるヒタキは
ながら、の達人
羽ばたきながら実をついばむ
秋を経て
冬へと持ち越され
艶を無くし
死んだようになったその実は
つつかれて
したたるようなルビー色の ....
 何時なのか
 知るつもりもなく
 近すぎず遠すぎもしない
 道路工事の音が耳に心地よい

 薄地なカーテンシェードで遮られた
 街路灯の漏れ込むワンルーム
 あそこの窓が
 月明かり ....
「肉」は消費される物だからです。

「魂」は純粋に持続される、とおもいます。が、

「神」は「肉」を知りません。

いつも、それの前にさしだされるのは、

「肉」から離散した「 ....
  


先の夢/机の上に/長い間そのまま/
雲の隙間/照る光に沿っている


せんのゆめ
 つくえのうえに
  ながいあいだそのまま
   くものすきま
    てるひかりに ....
限定された平面に
色とりどりの円、
生み出され

無数に交わり合い
無数に映り合い
無数に響き合い

一箇所に集合し
時々に踊り拡がり

反復し繰り返し、

無限に交わり合い ....
傷だらけで
言葉を掴んでも
その端っこで
手を切った

無数の星より
鋭い歯を持つ言葉たち
それを磨くため
時には光を受け入れる

詩に向かう時
いつも夜で
あって欲しい

 ....
冬の滑り台は
凍ってしまって
子どもたちの
渋滞が起きている
春になると
一斉に放流されるチャイムで
淀みなく帰路に着く
足がたくさん生えてくる

(きみがいいと言うのなら
(もう ....
{引用=――いまだ見ぬ地をふるさとと名づけられ怒りのごときとまどいはあり
               (佐藤よしみ歌集『風のうた』より)}

これからここで
生きてゆくのだと
なんとなく思 ....
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