のどかな秋の夕べ
遥かな思い出が
ふっと蘇っては
消えていく
橙に染まるリノリウムに
重なり踊る影と影
小刻みに震えながら
一条の線となって
消滅する
遠い 遠い
何もかも ....
あなたとの糸が終わった冬の服
正しくはないけど楽しかった日々
空っぽな瞳の奥の海になる
其処は中庭
周囲がすっかり閉ざされて
何処から入ればいいのかわからない中庭
其処で
プロローグと
エピローグが
手をとりあってくるくると回っている
モノローグと
ダイアローグが
....
やっと 眠れぬ 暑苦しさも
終わったらしい
空は ひたすら 秋です
鳥肌です 風が吹けば
ページを めくれば
忘れられる
苦しさなんて
ほんとうは、たたかうほうが好きです
若いことを踏み潰した、地続きの傷
なぞると忘れた横顔に似たきり、
痛みにしがみつくことなく
目を閉じます
白い配りもの、光って、子に散る声 ....
縁側で
ぷっと
西瓜の種飛ばし
放物線の先を
追っている
幼い子供が
独り居て
遠い夏の日
夏の午後
その日を生きる
幼子が
風に吹かれて
風に吹かれて
名無しで ....
痩せっぽっちのロバと
ながらく友達だった僕は
マッチョなイギリスの
粋なボーカリストが好きで
ついにはオペラ座の怪人の
私生活を知ってしまうのだろうか
拘束されない言葉ほど
....
これから病院です
おかしいところを治す病院です
暗いスマホの画面に映ったわたしの顔その後ろの車窓その向こうの電線と青空が、とても綺麗で
6.4インチ、好きな分だけ好きな景色を切り分けたような ....
つま先にあたった石ころが
ころころ
ゆるく転がって川に落ちる
何の音もしない
七年前
職場のわたしの歓迎会は
小ぎれいな洋風レストランに皆集まった
こ ....
たそがれて
いちにちが終わる
いつかは
このくるしみも終わる
すくなくも
わたしが終われば終わるだろう
その時は
世界が終わる のではなく
世界のなかで
わたしが終わる
わ ....
ハッピーかどうかは俺が決めるんだ。この世でたった一人の俺が。
本当は存在しないもの
駄菓子の当たり
国境線
赤道
風
本当は存在するもの
自販機の当たり(たまに当たるんだぜ)
戦争
ひとり
花
地球儀にキャプテンがいる
片言の日 ....
どうか
この手が
だれかを
たたいたり
せずに
ありますように
どうか
この脚が
届けものを
とどけ
続け
られますように
どうか
この瞳が
まっすぐで
逸らされ ....
法則
{引用=山で
イノシシとリスが
談笑している
団栗と
木の実は
こっそりと交換される}
航海
{引用=海は平面を
船乗りに諭しつづける
地球の丸み ....
一生使いきれないくらい
お金を持ったら
値段のあるものすべてが
無料に見えるんだろうな
一生使いきれないくらい
お金を持ったら
値段のないものすべてが
有料に見えるんだろうな
....
水たまりだらけのいちにちを
病院のベッドから眺めている
何冊めかの本をてにとり
2日めも暮れなずんでゆく
痙攣していたてあしが痛みから解放され
滞っていたからだの中の運河がなが ....
{引用=首}
なだらかな午後
ただそれ自体の円みと感性で
転がって
吸血する問いとなり
落下する 分裂の暗い谷へ
隠匿されていた
真っ赤な夜が溢れても
目交いすらなく
過る夜鷹に ....
夢の中で、
歌うことも笑うことも靴を履くことも忘れる。
夢の後で、
体の中に風が吹いているのを感じる。
窓の外、
静かな空に煙をくゆらす。
振り返ると、
空っぽの住処。
....
木立の緑が揺れている
私は冷たい虚を飼って
鉛の監獄から眺めている
気だるく憂鬱な昼下がり
空は一面の灰色模様、
熱風はもう絶えず吹き
荒れ果てた街並みが
ぱたんぱたんと倒れていく
....
この精神ひとつ
この身体ひとつあれば
必ず這い上がれる
やってゆける
形のない精神で
有限なこの身体で
今日を生きる
精神はあの天球と繋がり
身体はこの地球と繋がる
この私の意志の振 ....
私にきれいな時など一度もなかったと思ってた。
しかし白髪が増えた今、きれいな時がやってきた。
若さがきれいとは限らないということだ。
病床の旧友よ、それでもなお、夏への憧れを失わずにいておくれ。
学び舎は今でも坂の上に、サイダーは学食の自販機で冷えているよ。
雨の一滴が右手の甲に 落ちた
ズシリと 重たかった
ミシリと 胸の空洞が鳴った
私は慌てて滴を振るい落とした
軋む胸が一瞬、
張り裂けそうになって
牛の歩いた跡が、
「段々畑」のように見える、
そんな肥後のひとつの牧草地。
地上波でなんども再放送されています。
車いす生活者の自分にとっては、
旅行は室内で十分なのです ....
上っ面の言葉を交わしすれ違う恋人家族その他大勢
本当がまるで無いのになぜ刺したナイチンゲールの胸はくれない
表面張力肥大する星一つ縛れる嘘が行ったり来たり
面倒な人付き合いを弾いたら ....
蜃気楼
その名で呼んだ色街に
架かって照れてる、夜の虹かも
その過去の
醜聞まみれで死ぬ人生、
夜のうわさの拡散する街
このなみだ
風の奏でる優しさで
洗い ....
あなたから
教わったのは
こころの殺しかた
海に染み込んでいった夕陽は
逆さまの血のしずく
波にたゆたう血の油
何度も殺しました
あなたに気に入られようと
あなたに見つけてもらえ ....
図書館で君は少し死んでいる
少し死んだ体で雑誌を読み本を選ぶ
本は死んでいるから
本を欲する君も少しだけ死ぬ
僕も図書館では少し死ぬ
少し死んだ体で本を借りるとき
僕たちこんな死んだ部分で ....
巨人になって
谷を飛び越すことがある
足裏に地上の凸凹を感じながら
足首に絡む電線や
田んぼのぬかるみを楽しんだり
街を念入りに踏み潰す
そんな時、人は
わずかな寒気を感じて振り返り
....
水面に顔を寄せていくと
無数の鯉が浮かび上がってくる
餌をくれると勘違いしているのか
ぱくぱくと開け閉めする口が異様である
指でも突っ込んでやろうか
でも吸い付かれたら気持ち悪いな
上空の ....
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