明日はなにをしようかな
そうだ、
生きよう
誰でもなくていい
幸せでなくたって
季節の風が吹いている
部屋の中に集落ができた
小さな集落だった
本家、という男の人が話にきて
畑で採れた作物を
いくつかくれた
学校が無くて困っている
というので、近所の小中学校と
市役所の場所を教え ....
波リズミカルに打ち寄せる
浜辺 灰白にて広がり
貫く漆黒の直線、
後光帯びる弧空、
やがて訪れる
深い夜闇に
点る明澄な灯り
手を繋ぎ寝そべる二人に
対立し合う世界の響き、 ....
○「喜び」
苦しみは
喜びとともにあればいいが
喜びは
苦しみとともにある
○「厳重警戒」
テレビで
朝から晚まで
「厳重警戒」を繰り返している
もう僕たち年寄りは厳重警戒疲れだ ....
昔のように
直ぐに見られる場所は
かなり少なくなった
山奥の綺麗な川に行けば
たくさんの蛍に逢える
まるで銀河のように
魅力的に飛び交う
蛍な夜
蛍の歌が聞こえてきそう
....
部屋の片隅で
一生懸命首をふりながら
頑張ってくれている
風のメロディー届けてくれる
気づかないぐらいの優しい風
雑多な音を引き連れて迷い込む
窓 ....
祇園の石段の上から
灯の街を眺めさせたいと
私の腕をむりやりつかんで
つれて来た あなた
遠い異国の昔
王宮の血汐がはねあがった日
革命の巴里祭
そして日本では祇園祭 ....
海は準備活動を終え
ひらかれるのをを待っている
次つぎと飛沫をあげくる
首から下が海にとっては
たくさんの人間達のように
いつかは愛したいよ
あの空の
離れるほどそそ ....
願いが叶わなかった日
遠く、命の向こう側から聞こえてくるのは
ニイニイゼミの声
毛穴から染み入り、毛細をとおって
脳内に聞こえてくる
頭上を爆撃機がかすめて飛んでいた
なのに街は箱庭の ....
君は丸いうさぎ
丸うさ
タヌキみたいでかわいいよって
いっちゃったけど
タヌキを目指すのは違うんだ
お腹を叩いたり
ちょうど良い葉っぱを探したり
キツネに会っても
勝負しち ....
灰青色のかなしみが
時計の針にまつわるので
空気が気怠さを増してゆく部屋で
六月の似合うそのひとを
あなた という二人称に委ねないために
窓外に滲むあじさいを
しずかにただ眺めていた
....
目の前に一本の道が現われた。
この道を行けば、海に出る。
ほら、かすかに波の音が聞こえる。
見えてきた。
海だ。
だれもいない。
天使の耳が落ちていた。
....
青ぞらの日の、
雑用のつみかさね、
フォークリフトに雑巾をかけ、
ゴミを拾ったり、あるいはホウキで掃いたり、
している、
どこか緩慢な、土ようびのしごと、
けれども思いのほかいそがしい、
....
電車に乗ろうとしたら
頭の先から尾ひれの先まで
すっかり人魚になっていて
人魚は乗れません、と
電車の人に断られてしまった
取引先には遅れる旨連絡をして
しばらくホームで待つことに ....
道の途中で、
一緒の者が笑い始めた
相棒は笑いながら
「もうお終いだよ」と言う
そんなことはないよ
いつか終わりかどうかじゃなくて
僕たちはちゃんと生きている
相棒は歩くのを止めた
....
おりひめとひこぼし
地上が雨で見えないときこそ
ラッキーと思ってるはず
一年に一度しかあえないなんて
神さまひどいよ
七夕がいつも雨で
人目を気にせず会ってもらいたい
いやいや ....
お月様 浮かんでる
水色の空のなか
未だ未だ明るい
夜空の手前
お月様 不思議だなぁ
白く透徹と弦を張り
何か絶えず思考し送信して
この地球にこの私に私達に
お月様 浮かび上が ....
一人でふたり分の荷物を整理する
なんて過酷で残酷な(笑)
やり始めるとやっぱり記憶に飲み込まれそうで
それでも時々、楽しくて
壁のシールを剥がせば そこだけ白くて
こ ....
虹を作る
その生き物の背中には羽があって
だけどそれは
空を飛ぶためのものじゃないらしい
六月の晴れ間を見つけると
庭にぴょこんととびだして
霧を吹きかけて虹を作る
小さな生き物は
小 ....
白い形の声が落ちていた
門扉が壊れて困る、という
間違い電話だった
切ることもできず
わたしはイトヨリダイ
だったと思う
そのような体をして
傾聴した
暑くて
素麺のお裾分け ....
手をコピーする。左手をコピーして、右手を
コピーする。腕をコピーする。左腕をコピーし
て、右腕をコピーする。顔をコピーする。光を
見ないように、目をつむってコピーする。肩と
胸をコピーす ....
夜
月明り
独り暮らしが始まっていた
絶望も希望も寝静まり
生活が一つ転がっている
朝
目が覚めて思う
生きていた
しかも快晴だ
何にもないので
布団を干した
....
空へ空へ
伸びる茎
光を光を
求めて
枝分かれして扇形になった
それは
小さな木々のよう
草はらに
明るい森を成している
海の向こうからやってきて
異国の地に根をおろした
覚 ....
それは凄くて 彼の胸は貝がらだ
完璧な夏に 投棄された貝がらだ
涸れないことをほめるのは
ただ軽蔑するのと一緒だ
彼は{ルビ薬匙=やくさじ}を咥えさせて
蛇も寝なさそうな夢を明か ....
大きな欠伸だ
場の空気をすべて吸い込む
人々は乳児に戻る
はい 始めからやり直し
〇
隣に座る
それしかできない
隣に座っている
それだけでいい
〇
親から子へ 子から孫へ ....
「ねぎま」がごろごろして
にゃおといった
戦争も災害も犯罪もない
一コマだった
雨の土曜日から
日曜日は青空を取り戻したのだが
底がないとどこまでも落ちていく
蓋がないといつまでも溢 ....
目の前が
桜の花びらに
埋め尽くされていたとき
きれいだった
若葉がちらちら
顔を出して
蕊だけが残った枝は
好きになれなかった
春のはじめの
端っこの方だけ
少し彩っては ....
やさしさがあふれるような風が吹く
やさしさがあふれるような街に住み
やさしさがあふれるような人にあい
やさしさがぼくの心をくるんだよ
ごまかしてなんていないんだ ....
「今日の貨物も 重そうだな」
「ああ 空の雲も 重そうだな」
凍り付く森の枝先 すり抜けて
貨物列車がゆく
港の駅まで たんたたんと
コンテナの奥はガラスの水槽です
銀の平原を ....
春 おそく
雲低い空の下
裾のほつれをまといつけておいた
小花柄のフレアースカートはいて街へ出る
図書館の帰り、線路わきの公園で
ひとり眺めみる
八重桜
ぼったり ....
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