嘘の蓄積
宿便のよう
いつもどこか優れない
ホラから生まれるホラー
天井の木目が顔に見えて
天井に睨まれる
良心の呵責が
眠れない夜を提供する
明日が来るたび
腹の中が黒 ....
マガモがシベリアからやってきてはにぎやかに鳴いている
人造湖に多くの渡り鳥達が群れていた
赤い大きな橋のたもとにあった古い山小屋旅館は解体されて
長い年月に蓋がされた
昨日今日、ほぼ今年最 ....
寄る辺なき一本の傘をしっかりと差し
冬空の透きとほる青をわたりゆく者の魂
都会の地にたおやかな会釈の影をおとした
忙しく行き交う人々の誰一人として足を留めることなく
影は寄る辺なき余韻を残しな ....
草々は刈られ
広々とした川辺に
一本足のたんぽぽだけが刈られずに
ぽつんと取り残されていた
小春日和はきまぐれに
命の鍵をもゆるませる
死ぬのだったらこんな日がいいなと
薄い皮膚のま ....
調律をしをえたばかりの
おとぎばなしは
こぢんまりとした
こどもの耳の中で
ふたたび輝く
なまえのない宝石を
空にかざす
君がなまえをつけてくれ
ささくれたブランコに留まる
....
昨朝にガラス戸開けベランダに出た瞬間に
見事な白鷺が自分のすぐ向かい横を羽ばたき過ぎ、
昨夜にガラス戸開け夜空を見上げた瞬間に
見事な満月の流れゆく灰の雲間から姿を現し、
両者の到来に ....
コップから溢れる水を集めては集めてみては溜め息ばかり
ぼくたちはみんな無銘とラベリング とマウントされボクラ評され
ぺたりぺた?ラベラー機には見えないし いろいろなこと学んでいるのに
....
久しぶりに
馴染みの店に
掃き寄せられた
落ち葉の面々
互いの無事を
半ば涙目で喜びつつ
とりあえずハイボールで
万感をこめて乾杯する
真っ赤に出来上がるヤツ
いつまでも ....
無意識に吸い込んだ息が吐き出されるとき
秋は深まっている、と感じる
淡々と掃除をくり返し、残った塵をさらいこむように
物語は終焉へと向かいはじめる
夢は廃田の草のように思いついたように揺れ ....
気怠い朝
電車で隣に座った人の
スマホを持つ腕の肘が俺の脇腹を刺す
肘にナイフが付いていて
人知れず意識を失っていく
みんなスマホを見ていて気づかないうちに
暗殺される
の妄想
そ ....
ゆっくり流れ動く蒼天の冷気の
響き輝雲の純白に染め抜かれながら
この地球大地との正しき協和音を形造り
寝そべる牛の駆け抜ける獅子の飛翔する鷲の
人と共に進化する途の高ぶりを鎮め掃き清める
....
痛み止めのかわりに睡眠薬を飲んで、
買い物へと出かけて行く。
主婦に休みなんてないんだよ。
あなたは主婦ですか?
いいえ、家事手伝いです。
わたしは単なる家事手伝いです。
昔は夢や ....
公園の池の際に母子がいる
母は子供にパンを渡し
子供にパンクズを池に投げさせた
池の鯉は競って大きな口をパクパクした
傍には鯉に餌を与えないで下さいの看板がある
通り過ぎる人々の視線が母子を ....
考えるな 感じろ
と誰かが言ったが
背中で感じても指が動かない私は
ひたすら考える
詩人のような暮らしや
詩人のような風貌を
持ち合わせていない私は
ひたすら考える
語彙の ....
もとより文鳥は風切羽を切っているので
高くは飛べないけれども
不便はない、という
狭いこの診察室で暮らしていくには
ここには空がない
文鳥は空を知らない
ねえ
鳥の脚を見て
そこだ ....
待ち侘びた
秋のお客が
二羽三羽
{ルビ山雀=やまがら} {ルビ鶫=つぐみ}
{ルビ百舌鳥=もず} {ルビ尉鶲=じょうびたき}
ふしあなから
花と人の裏腹を
垣間見る
ふしあなから
空と嘘の寸劇を
盗み見る
ふしあなだから
肝心なものは
何も見えない
ふしあななんだから
見えていると言う
....
書きとめられることのなかった言葉は
綿毛のように目の前をただよい
掴もうとする指の間をすり抜け
風に流され消えていった
明け方に見た夢を思い出そうと
目を瞑っても白く掠れていくイメージ
....
そして医者がわたしのカルテに新しい病状について書き込んでいる
その手元を盗み見るがあまりの悪筆でまったく読めない
日本語ではないのかもしれない
秋が失われて久しいのだけど
秋のことは覚えて ....
あたたかい紅茶のなかで
みのむしが
みのを手放しておよいでいくのを
追いかけることもせずに
ながめていた
満月の映る淵で
きみは大人になることだろう
何者かになりたかった
何か ....
いつからだろう
積み上がっていく喜びが
積み上がってしまう寂しさに
変わったのは
こころもとない
ケイケンとジッセキの上から
辺りを俯瞰できる大人なんて
いるのだろうか
今 ....
夕陽に照らされて
猫が光を纏っている
「きれいな虎模様ね」
呼び止めた気まぐれな人間の女の顔を
じろり、と見つめる
その虎猫の瞳に刃が灯る
体つきはほっそりとしていて
子猫が ....
時間を搾り取られてスカスカ
残ったカスを貪るように使う
こんな詩あんな詩書いたり
生活に必要な作業をし
時にはテレビやスマホで浪費して
残りで眠る
やりたい事を好きなだけ
やりたい時 ....
爪を切ろうと思い立ち
爪切りを探す
スフレを焼こうと思い立って
泡立て器を探すように
引き出しの二番目
わたしを待っていたかのように
すぐに見つかった
それは切った爪を受け止める装置 ....
止まり木を探している
橋の上から
水面を眺めながら
欠け始めた月に
追い詰められながら
止まり木を探している
カフェの二階で
雑踏を読みながら
沈みかけた街に
....
青白い顔
まだ魂はそこにある気がした
らしさと共に
だんだん土気色に変わると
らしさから白い鳥が飛び立ち
魂を持っていった
すっかり深い土色となったらしさは
白い花々で埋め尽くさ ....
朝に雨降り冷える大気に
小さくくっきり開く花、
見つめ入る私の傍らを 、
歩を運ぶ人の足早に
アスファルトの窪み
水溜りに映り込む
黒と黄の色彩の対称、
其処此処に群れ成し生える ....
サイレンみたいなアラームを止めて
そのまま布団の中で溺れると
無意識の粒子が立ち込める
それらは映像となって
現実のように振る舞い
不思議が不思議でなくなる
サイレンが割り込んできて
手 ....
街灯の
光に舞い散る雪、
愛娘が
膝枕に安らか眠り、
崩れ落ちてゆく時が
大河の流れ一瞬だけ裂き
静まる冷たき沈黙の襲来、
自らの予感の内に
先取りされた
あの瞬間の覚悟、
今この ....
その日の午後は
いっそう高気圧が張り出し
夏の残ったしめり気より日照りが勝った
まぶしすぎる陽光と
車で海岸線を走る
反射するひるまの海
キラキラキラ
それは水面に遊ぶ星と
まばたくさ ....
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