月と鏡はお似合いの恋人だから
同じ夢を語りあっているのだろうか
耳をすませばその囁きが
少しは聞こえてくるかもしれない
梅の花はほころび
君たちに祝福を歌ってくれている
ねえ… ....
三寒四温の山と谷を
喘ぎながら
自律神経と前髪を
弄ばれるまま
季節のせめぎ合いを
掻い潜り
遊歩道をふうわり漂うのも
それほど悪くない
視界の端に色を感じて
振り仰 ....
かつて幼い女の子の髪を結んだリボン
うすももいろでつるりとしたサテンの手触り
持ち主をなくして
しょげかえっているかといえば
案外そうでもなくて
虹へ続く路を
しゅるっしゅるるる
先頭で ....
母は とっても母である
家に虫がでれば 騒ぎながらも冷静で
しかしスプレーが見つからないと慌てていた
ある時
アシダカグモが 卵を抱えて現れた
「ぎゃ」といいつつ 母 ....
光りと闇の狭間で酒を飲め!
草原の覇者のように夢を見よ
新たな世界はすぐ其処にある
胸を張り眼前の壁を崩せ
地の果てまでも路は続く
お気に入りのコンバース
とうとう底が抜けちゃったな
くるぶしがぬるりとつめたくて
出来たての靴擦れを二月の風が撫でて過ぎる
お気に入りのスニーカー
ぼろぼろになっても一緒に歩いて行きたかった ....
愛は強くしなやかに
恋は切なく甘酸っぱくて
歓びは高く天を突き破り
悲しみは深海に沈みゆく
光りと影の協奏曲が響きあう
天空の彼方から銅鑼の音が響き
東の風とともに
青い龍が螺旋を描き
舞い飛んできた
干からびた大地に
人々は飢え
龍を待ち望んでいた
鉛色の厚い雲が湧き立ち
雷鳴は轟き
銀の雨が降る
....
もう起きるのか
朝から騒がしい 春と冬がもめている
どちらも「まだだ」と言い張っている
冬眠していた生き物も目覚めが悪い
始発の電車はすいていた
ゆっくり座席に座り
眠気の中で私の中のあた ....
宵闇に
想いをつくし
風に舞う
言葉を失くし
琥珀に浸る
往きゆきて
墨の流れに
身をまかせ
{ルビ闇路=やみじ}の{ルビ褥=しとね}
{ルビ花埋=はなうず}み
天空は澄みわたり
歓喜の楽章が鳴り響く
裸の少年は羽ばたくように
空の青に溶けてゆくように
吸い込まれていった
今朝の音楽は短調ではなく長調が似合った
何時もの苦い珈琲が何故か甘く
正確なメトロノームが響きあって
ぼくたちに奇跡の扉は開いた
あまりにも透明な
薄く虹色に染まったシャボン玉
誰 ....
冨の神を崇める教義では、
あなたの身体と魂は誰よりも清く
その清い身体のために、
毎朝オレンジジュースを飲む
また、あなたの美貌のために
幼い夢を祭壇で屠り、鮮血を啜る
既に世界は ....
半熟玉子のような弱い存在が握り潰され
報道は状況だけをテロップで流している
ぼくができることはマンスリーサポートくらいなもので
あとは早期終結を祈るだけ
月並みだけれど人はみな兄弟姉妹だ
....
陽に焼けた褐色の肌を晒した少年は
海の深さを恐れずに
コバルトブルーのうねりに逆らいながら
遠くの大陸を夢みて泳いだ
その汗は海の水に溶けてゆき
何処までも 何処までも 泳いだ
ア ....
皐月の若葉が茂る
木漏れ陽のベンチの下
隣のベンチには文庫本を読みふける少年がいた
たぶん少年が連れて来たのだろう
6㎏は越えている太ったブチ猫がいる
ぼくは遠慮がちに隣のベンチに座 ....
身体のなかを季節が流れていくように
庭に春がおとずれようとしている
赤い花は生きたまま供物として捧げられ
緑の血液は地に滴り落ちている
土の中にも季節が流れている
人には見えないだけで
歓 ....
透明な味のレタスが大好きで
ぼくは時々共喰いをする
今日のお昼は喫茶店でレタスベーコンタマゴサンドを食べた
レタスこんもりのライ麦サンドにアイス珈琲
絶妙な組み合わせだ
シャキシャキ バ ....
いまだに風は
冬を吹聴していくが
すでに光は
春を祝福している
押し黙る蕾は
華やかな企みを内に秘め
気象予報士を惑わせながらも
季節は巡ろうとしている
代り映えの ....
久しぶりに洗車する
マスカラが涙で落ちたような数本の薄汚れが
泡とともにコンクリートへ流れていった
この数日
見て見ぬふりをしていたものに決着をつけてほっとする
助手席に乗せた犬は真顔で少し ....
恋の情熱も
悲しみの涙も
もう枯れてしまった
御三家もじいちゃんになった
アイドルもばあちゃんになった
しかし思い出は消えない
思い出は
昭和歌謡とともにある
歌に励まされ
歌に涙し ....
○「弱気」
病気は
「気を病む」と書くが
弱気になってはいけない
たとえ体が病気であっても
いや体が病気のときこそ
気はしっかり持つことである
○「自分の道」
自分の道をあやまらな ....
騒めきの通りから
暗く曲がりくねった路地に誘われて
踵を返した
ランプが点いたドアの前
コツコツとノックして把手を回した
鍵はかかっていなくて
乾いたほのかな風がぼくを包んだ
ド ....
一喜一憂しても
始まらない
雨の日も風の日も
寒い日も暑い日も
生きていかなければならない
置かれた状況の中で
日々前向きに生きていかなければならない
後戻りはできない
ゴールは目の前 ....
雪渓を登りつめ
一息を吐いた
其処は花々のサンクチュアリ
ぼくを燦々と迎えてくれた
写真に撮ろうとするけれど
その美しさはレンズを透しても再現できない
山に登る者だけにその秘密を明 ....
幸せは
ここの
こころにある
幸せに
気付けば
・
今
自分が
持っている物事で
十分だな
こう思えば
・
夏の夕暮方の
西の山の上の
蒼く
透けた空の
....
自戒として、
大道すたれて
仁義ありと言う
私は強欲だから
足るを知らねばな
・
自戒として
放てば満ちると言う
私は時々存在しない
幽霊となる
そう思えば気楽さ
・ ....
尻の曲線に墜落した
堕ちたのは、
きっと酒のせいだ
窪みから下腹部を抜けて
波打つサテンのシーツを泳ぐ
女の夜は満天の星空で
凍った涙のように美しかった
柔らかな乳房の谷間で
....
きみとふたり
丘のうえ
夕景色
山なみの果て
我は彼方を
さし示し
きみは頬笑み
頷いた
{ルビ蘇芳=すおう}の衣は
{ルビ飄々=ひょうひょう}と
明日を求めて
彷徨 ....
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