君が手を握り返してくる
ほどけかかった髪を
気にもとめずに
夢中で遊んだ帰り道
陽が傾きかけた
商店街で
君は目をキラキラさせて
さっきまで握っていた手を離して
駄菓子 ....
夕暮れは冬の茜色
窓辺にはバラ
ひとつひとつ、凛と咲いている
病人のひどい言葉を
なかなか許せないでいた
自分のことはすぐに
許すのに
さっきまでは
持って行こうと思って買った ....
たなごころに
すとんと収まるその笛は
尊い土の重さと
ほのかな内空の軽さを
同時に伝える
私は
澄んだ森の気配に
肺胞を湿らせ
惹きつけられるように
ほっこりとしたぬくもりに
....
090622
銀ヤンマを食べる
鬼ヤンマを睨む
怖い顔をした男が
車に跳ねられて
怪我をして
病院に運ばれた
怖いから
跳ねられ ....
僕が本を閉じたときに
誰かが新しい頁をめくるでしょう
僕がまぶたを伏せるときに
目覚める朝もあるでしょう
僕がこぶしを握るときに
手のひらを開いて母を求める
新しい命がきっとあるの ....
父のベッドのところまで
凪いだ海がきている
今日は蒸し暑い、と言って
父はむくんだ足を
海に浸して涼んでいる
僕は波打ち際で遊ぶ
水をばしゃばしゃとやって
必死になって遊 ....
{引用=ツキが、
ツキがいないから
ぼくは今日ここで
闇にとけるんだ。
わからないことは、
知っているつもり。
うそだけは、
吐いてもゴミにならない。
すてられない。
....
雷落ちて大樹の幹に露下る
天気変え巨樹育てる侏儒なれば
木の実採り大樹の陰に雷避けて
{引用=侏儒(しゅじゅ)=こびと}
まだよるかもしれない
あさのおばけが
しろいかげをおとしてる
またよるかもしれない
おうとうきのころ
よるのつぎにきたあさの
とてもはやすぎた
かるたあそび
....
夕暮れの
韓国料理店の
店先に
出された
長椅子
の上に
地球儀が
鎮座する
海の色は
リアルに
青く
塗られている
くせに
陸は
ピンクだの
レモンイエローだの
....
アスファルトの照り返しは穏やかではない
24号線沿いのひび割れた歩道を蹴って
いつまでも変わらない信号を見上げる
太陽がもうひとつ増えた気がした
雨と晴れの境目を見つけた少年時代の君を
....
うすむらさきの雲の向こうで
夕日がしずむ
水羊羹の表面を
スプーンですくうように
なめらかな冷たさを泳ぐ
信号機が ぱっぽう、と
くりかえし諳んじて
歩道橋はひとの重みにたわむ
み ....
夢が 微睡んでいる
緑の葉陰ものうく揺れる
やわらかな午後を
その瞼を 胸もとを つまさきを
うすい風が吹きすぎる
夢は そうして 自らを
夢みている あえかに甘やかに
その夢の ....
見知らぬところで
ひとのこころは
てのひらを返したり
大人だからだまっていたり
六月が川面をぎらつかせている
ぼくは見つめている
なにかを吐き出したくなっている ....
僕の知らない過去と
わたしたちの未来に
長く伸びる辻占の影
いつもの帰り道には
いつも違う待ち人が
真っ赤な花を散らす
嘘つきなあなたの頬
なのに ぎこちない
まなざしは いつも
ほ ....
無数の雨粒に包囲された
とある休日の午後
僕は僕の形をした部屋を
ひきずっての遊歩道
何度も傘をノックするのは
とあるお節介な日常
僕はミエミエの居留守を使って
知らんぷりの遊歩 ....
ナスがなった
まだ小さい
そっと撫でた
冷たかった
夏の音
風が聞こえる
雨は降る
土は湿り 葉は大きく広がる
ナスがなる
まだ小さい
重そうに 頭は ....
カラリ カラリ
氷がゆれる朝
アイス珈琲がにがい
曇った静かな火曜日
勤勉な僕ら
連日の触発に
発酵できそうさ
「せめて美化しないように」
でも ....
椅子に残された影を抱いて
私は目をつむる
もうにおいもなくて
人間くさい欲望に弱いところも感じられない
こうやって私の中でのあなたの存在が消えていくのを感じる
思い出が消えていく ....
白い壁に掛けられた
金の額縁には
名も知らぬ画家の描いた
淡い水彩画の少女
朝の光に透けながら
すきま風に膨らむ
カーテンの窓辺に佇む
黒い瞳の少女
日々多くの人と ....
喧騒のなか
細い雨のメロディ
梢にしがみついて
姿を変えてみる
みんな
どこへ向かうのだろう
遠い、稜線をこえて
あしたも、あさっても
きゅうに
手をつなぎたくなって
あなたの ....
ずん、と重くて
食べづらくて
あーもうめんどくさい
でもでっかくて
うんとあまくて
食べ終わるころには
しあわせ
また
草の匂いのする、夏が来る
ホームから駆け下りて
5時17分の各駅停車に間に合うように
大人たちが向かう方向とは
ずっと、ずっと
逆に走ろうと決めて
あの人からは
降りだし ....
一里のヒンバがめおととなって
丘を下り始めたとき
二里三里ともおそらく
自らの距離をもう距離とは言えず
巨とか凶ばかりがやたらに目に大きく写り
逃げ出したいのをぐっとこらえるがもう
一里の ....
小さなまどから
両手を広げたら
境も {ルビ閊=つか}える枠もなかった
風は湿り気
きょうもいくつもの紙ふうせん
昇ってゆく
まだ、両手広げたまま 吸って 吐いて
十字架のか ....
考えてみれば終点の西高島平は
笹目橋のたもとにあるような駅で
我が家から結構近いところを走っている
はずなのだが印象が薄い
開業当時の電車はもう引退して
地方鉄道で第二の人生を送って ....
もうしわけないけれど
傘を盗みました
あれほどのどしゃぶりでは
わたしは帰れない
青いベンチに寄りかかる
紳士傘の手に
浮気をしました
電車から降りると
どうやら雨を通過したようで ....
ちいさな腫瘍があった
おそらく、せかいというものから隔てられた朝
ぎこちなく、触れることで
ぼくらが確認していたのは
痛みだったのだろうか
{引用=
この詩は、きみの
平 ....
そんな簡単に捨てられるような
想いじゃないから
とりあえず玉手箱にでも
大事に閉まっておくよ
実はこの箱は逆玉手で
いつか俺が年老いたとき
100年分若返って
君を思い出せるように
....
イメージで泳ぐ僕の夢と
かつての神々の残像
ファッショナブルの開放
ラッシュアワーの独唱
イヴの訳解とアダムの髪
トラディショナルの革新
おもいは ....
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