くるっても
いいのだろうか
という言葉をおしころして
公園へむかう
身ぐるみはがれる
とはこんな気分だろうか
この身をくるんでいた
ものたちはどこにいるのか
いまも元気で
やって ....
うすももいろの{ルビ襦袢=じゅばん}の
冬に{ルビ纏=まと}えば
きぬの{ルビ温=ぬく}さ
衿をくいと抜き
腰ひもをきゅうと締める
そのうえに伊達〆をきゅうと締める
足元に着やすく ....
平坦な道をとぼとぼ歩いていくことが
いつしか当たり前になっていて
地図にない道を通ろうとすることを
鼻で笑うことが多くなった
冗談を言うつもりはさらさらない
仮にそうであったとしても
....
隠してあった断裂,亀裂
突然、あんぐり口を開け
すまん、すまんと
向かってきます。
僕は またか とがっかり、ウンザリ
それらの口を引っ張って
縫い合わせようと
努力します。
....
愛しているよと囁いて
愛していないと言われたの
不思議な気分になったけど
同じ夜には泣けないわ
尖った月に照らされた
私の気持ちは隠された
待っていたのとつぶやいて
あいたくない ....
正しい答えを選ばなければ
君は名前を失うだろう
詩を書こうなんていうのだから
さぞかし自信があるんだろう?
ここは平らなマムシの背骨で
掃き清められた黒い山脈
水の流れる音ばかりが
....
微笑む君に
そこにいるもの皆魅了された、
君の言葉は
柔らかな光りに
反射して銀色のモビールのように
中空をキラキラ漂い
君のまなざしは
柔らかな光を讃えて
その場にある
生 ....
寝入りばな
夜の船に乗って
黒く澄む空を
たゆたっていた
静謐なガラスの船は
住むもののない水底の
果てない深さを
ギラリギラリと見せた
こわいよと口に出す
まだ眠りに落ちて ....
陽の光が徐々に弱まり
空気も冷たくなって
そろそろ冬が来るのだと気付く
一人に慣れている私でも
この季節は人恋しい
人混みに紛れてみても
近くのコンビニの
おでんを求めてみても
寂しい ....
僕とは繋がっていない
世界中を止めどなく
流れる/溢れる情報なんて
信じられない
新しいセオリーなんて
存在したこと
あったのだろうか
すべては既視感に
満ちていて
それは瑞 ....
回転を少し止めた朝は
おだやかな
エメラルドの生地で
ひとつの心臓もない
白い砂床に
波のつぶやきを聴く
貝の肉のような
とりとめのない柔らかさに憧れ
ギリギリと角質の擦れ合う ....
私が
景色を切り取って綺麗にうたおうとしている朝に
母と祖母が冷たい戦争をしていた
庭では 冬支度がすすんでいた
家の中の空気と 外の空気が
同じぐらいの温度の朝だった
無言とは
ひ ....
街路樹に寄り添って
まばたきを我慢すると
色々なことが見えてくる
見えていたのに見なかったもの
園芸店の軒先で
ペチュニアがビニールの容器に
無造作に投げ込まれて
冬の曇天を眺めてい ....
僕は夢想する
雲一つ無い青空に
ぽっかり浮かぶ黒い月を
僕は夢想する
鬱蒼としたジャングルに
飛来する原色の鳥達を
僕は夢想する
ジャングルの樹々の間を
悠然と歩む ....
浮かんだ言葉が
消えていく
いつだって、そう
若年性認知症なんて
あるのかな
誰かメモリーを
増設してくれ
お代は
後払いでいいかい
ダメかい
爽快
カ ....
眠れない夜の窓際で
二重に映る折れそうな月
見つめるわたしの虚像が屈折して
見知らぬ冬をさがしている
ひときわ風の音が強く思える夜は
肩の震えが止まらないものだ
ハーパーを湯で割って
....
最小限だ
最小限を選ばなくては
引越しを間近に控えて
私はあせる
本
本は捨てられない
音楽
ギターはデフォルト
CD
取り込んだけど
それでもやっぱり連れて行こう
服
決 ....
ありふれたおはなしが
ささやかに座っています
テーブルの上
紅茶が入ったカップの横
読みかけのおはなしは
トコトコ歩きます
誰かの声をとおって
誰かの頭の中へ
沈黙を守って
....
紅葉があんまり紅いから
メールを送ってみたんです
紅葉があんまり紅いから
安心するんじゃないだろかって
紅葉があんまり紅いから
やさしくなってみようかなって
良く撮れた
....
テイブルの下に
ひきっぱなしの布団
みかん転がり落ちてるよ
段ボールから猫
なんもないのはわかってるんだ
ポンコツ話も聞き飽きただろ
こっちもうんざりしてるから
冷蔵庫にはたまご ....
壊れたものを修理にだしたけれど
どこの店に行っても直すことができなかった
別れ際のあの不意な涙は
今も僕の掌に落ちて染み付いている
必ずハッピーエンドになるとは限らない
....
宵闇に包まれた路地に建つ
戸建住宅の玄関前に
一匹
猫が座っている
しゃんと背筋を伸ばして
正面を見据えて
その確固たる存在感を
僕は
しげしげ見ながら
通り過ぎる
どこ吹く風とい ....
言葉は時々嘘になる 
心は時々嘘をつく 
優しい嘘であって欲しい 
悲しい嘘は不安になるから 
君の癖 
嘘をつくときの癖 
....
千年くらい前に
君とここであった
君はまだ動けなかった
大地に根を張っていたから
四百年くらい前に
君とここであった
言葉は交わさなかった
水の中にいたから
五十年くらい前に
....
そろそろ秋も終わる
木々は葉を染め
散り際の命の謳歌
吐く息はかすかに白く
もう眠りの季節の入口
弱音なんて吐かない
赤い瞳は強がりで
遠くの山々に涙を堪える
随分冷たくなった風に ....
大根の葉っぱにくっついていた
かたつむりが
ひこうきぐもは
そらをきる
わたしはてらてら
ちじょうをぬう
さいほうばこを
もってこい
よいしょよいしょと
ぬってやる
ひこうきぐも ....
僕と君とが引かれあった
その引力は
桜散るほどのちからで
電車の踏み切りで
隔てられた思いは
初恋の思い出
春の訪れを教えてくれた
ひとひらの桜の花びらを
失くしてしまわないよ ....
地平線の彼方に大きな夕日が沈む
地平線の見える大地など、僕の住んでいる街には無いのに。
無いのだが、地平線を僕達は確かに感じとることができる
感じ取ることができるので
僕は地平線に向かって ....
肌触りのいい言葉が欲しいって
君は背中を向けた
蒼い海がすきって
悲しく目をふせた
だって雨が降ったんだよ
そんな言葉飲み込む
ゆるやかな坂をあがって
黄色い花が咲いてる広場で
あ ....
シャワーの湯をはじく肉体だけが
あたしの存在証明だなんて思うのは
虚無があたしを支配しているせいだと
決めつけるあたしは果たして醜いか
濡れた髪の毛を顔中に貼り付けて
嘲笑した口元は
誰か ....
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