すべてのおすすめ
萎み始めた意識の片隅に
かろうじて立て掛けてある
ギターの絃はたぶん錆びついて
降り積もる時間に埋れている
僕の指は踊れないから
意味を探してしまうから
残念ながらギター弾きにはなれな ....
たとえば僕が
宇宙人にさらわれたとして
僕の不在に
気がつかない人は多いだろうが
僕の不在を
嘆く人は片手で充分数えられる
別に怨みごとを言うつもりはない
そんなものだといつも思 ....
流れていく方向を見失って
濁り始めた水と空気
「仕方がない」のお題目の下で
済し崩しにされる許容限度
時間をかけて築き上げた壁を
やすやすとすり抜けて
目の前に現れる他人
....
買ったばかりの缶コーヒーを
首筋に押し当てながら
見上げる空
千切れた記憶の尻尾が
光りまみれになって
流れていく
街路樹から降り注ぐ蝉の声が
身体をすり抜けようとするから
何処かが痛い
流れ ....
煩わしさと恋しさの狭間を
書きたかったのに
無骨な指は気がつくと
穢い言葉を叩き出していた
気ままさと淋しさの狭間を
言いたかったのに
愚鈍な唇は気がつくと
哀しい言葉を吐きだしていた
交差点と ....
<上>
暗中模索のキッチンで
夜食を見つけて意気揚揚
紆余曲折のビール腹
逆三角の栄枯盛衰
横行闊歩の食欲を
抑えられない艱難辛苦
気宇壮大の体脂肪
Gパン入らず苦心惨澹
....
スゥーっと
滑り出した曲線が
少しも角を立てずに
ツィーっと
遠心力の縁を描きながら
たおやかに遠回りして
ファーっと
何事もなかったように
帰ってくる
そんな
一日が送れたなら
とても良いの ....
偶然に弾き飛ばされて
偶然に引き寄せられて
偶然に蹴り落とされて
偶然に抱き締められて
僕はここにいる
何気なく左を選んで
怖くて右に逃げ込んで
勇ましく左に踏み出して
泣 ....
空が
穏やかに弛んだ
おしゃべりなプリムラの
寄せ植えの鉢に
束の間の雨を降らせながら
君は眩しそうに微笑んだ
「は」のつく名前を持った
風の中で
時が
朗らかに ....
小さな後悔を
ひとつずつ折りたたみながら
冷たい雨の中を歩く
しつこい雨音を
ことごとく無視しながら
答えをクシャクシャに丸める
痩せた街路樹は
桜並木になろうとして
つれ ....
苦笑まじりで
激しくうなずく街路樹
あきらめ顔で
でたらめに踊るビニール袋
恥じらいながら
身をくねらせるのぼり旗
慌てふためいて
路上で死んだふりをする放置自転車
....
電線を泣かせるのは
木枯らしだ
冬のからだの
声だ
何も掴めないのは
街路樹だ
冬のからだの
手だ
キシキシと縮こまった
エンジンを震わせて
登り坂を這っているのは
....
君の唇の くれない が
僕の内側を伝い落ちると
日常が育んだなけなしの植物群は
夢見るように朽ちていった
君の爪の くれない が
僕の外側を掻きむしると
日常に着せたつきなみな制服 ....
「東」
筋違いの愁いを下瞼に溜めたまま
勘違いの寝グセを直そうともせずに
東のゲートが開けば光とともに流されていく
煌めいているふりをしながら流されていく
....
「妖」
熟れた日常を引き剥がし
馴染んだ名前を脱ぎ捨てて
あなたの熱は儚く溶けた
残り香だけを朝に置き忘れて
「怪」
仄暗い四辻を右へ折れた ....
摩擦子音+母音の
「す」
を発音する時の
舌先をすり抜ける息の
すがすがしさが好き
破裂子音+母音の
「き」
を発音する時の
喉の奥で突き放す息の
いさぎよさが好き
「すき ....
内耳のような誘導路をすり抜けた時
滲んだ涙は悲しいせいじゃない
出口はずっと前から知っていた
いつも見えないふりをしていただけだから
背筋のような滑走路を走り出した時
浮かんだ笑みは ....
もうすぐ暗闇の端っこが
綻び始めるから
似たり寄ったりの一日が
また発芽するよ
ここで街が目映く
反転するのを待とう
たぶん大丈夫
取り残されることはないから
もうすぐ緩やかな ....
I がない一日でした
アイがない一日でした
自分が留守な一日でした
ただ流されていくばかりでした
土左衛門なのでした
いくつもの橋の下をくぐり
今更ながら橋の憂鬱を知り
壊れたが ....
伝えたくて
伝え切れないもの
捨てたくて
捨て切れないもの
慌てふためいて
掴み損ねたもの
握り締め過ぎて
壊してしまったもの
煩わしいものたちを
もう一度抱き寄 ....
「無」
カラカラの大人を脱いだらギリギリの元気
ギリギリの元気を脱いだらテラテラの苦笑
テラテラの苦笑を脱いだらシワシワの孤独
シワシワの孤独を脱いだら なんにも無い
....
「観」
部屋の片隅に置かれたポトスのように
見落とすことも出来たはずなのに
僕はうっかり君と正対してしまった
君のいとおしい傷跡を観てしまった
「葉」 ....
「百」
百のざわめきを虫取り網で追い回して
百のつぶやきに釣り糸を垂らして
百のウソと百のホントを掻き分けて
たったひとつの詩の言葉を探し求める
「鬼 ....
「惑」
GPSも届かない生暖かい闇の中で
使い古した答えを隠し持ったまま
手探りで小洒落た出口を探している
近視で早合点でメタボな僕の気泡
「星」
....
「移」
知らぬ間に忍び込んだ次の季節を
昨日より微かに老いた眼差しでやり過ごす
移ろっていく速度のやるせない違いに
胸の奥をさざめかせながら運ばれていく
....
たましいが擦れ合って
生まれた音は
いつまでも胸のきざはしを
昇り降りしている
忘れてしまおうと思った
夕暮れの端から
温かい闇を連れてその音は
何度でも訪れる
君の仕草が ....
蝉の声痛すぎて
ロックのような雑音で
上書
罪の汗流したくて
気障ったらしいクーラーを
停止
脳味噌痺れ切って
言葉の切れっ端が散乱するも
放置
胸の奥乾き切って
....
「人口は不明です」
様々な色の傷痕や
様々な味の妄想が
都市を形成しているようです
「面積も不明です」
小豆粒大〜ピンポン玉大
三流私大〜夜郎自大
等身大 ....
伝え切れない言葉が
君の瞳から溢れ出した
背中から湧き起こる
熱くて塩辛い波に巻かれて
僕は言葉を手放した
伝え切りたい言葉が
君の口元で閃いた
胸の岸辺を抉られたまま
....
少し鼻にかかった柔らかな声が
携帯電話から溢れ出して
飾り気のない長い夜を
暖かな色で満たしていく
他愛ない話の繰り返しよりも
ひとつひとつの言葉よりも
君の声を近くに感じていたい ....
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