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掌に、和子
昔、手をつないだことがある人
初恋の人
みぞおちに、浩人
祭りの日に喧嘩した
それから何故か知らないけれど
親友になった
右肩に、麗子
距離は縮まらなか ....
命がひとつあった
命なんていらないと
思ったときもあった
命がふたつあった
どちらかの命が
残ればいいと
思った恋もあった
命がみっつになった
みっつすべて
残ら ....
川がある
命の川だ
ありもしなかった
そこをいつからか
川が流れている
今そこにしかない
川を見て
見届けている
私がいる
うすぐらい部屋の隅で ....
まだよるかもしれない
あさのおばけが
しろいかげをおとしてる
またよるかもしれない
おうとうきのころ
よるのつぎにきたあさの
とてもはやすぎた
かるたあそび
....
足音が聞こえる
誰の足音なのだろう
ふりむくと隠れる
また足音がする
誰のための足音なのだろう
ふりむくと隠れる
ふりむくたびに
料理の数が増えていく
おなかが空い ....
わたしは布団の中で
息を飲んだ
なすすべもなく
血が流れるであろう
人が生まれるであろう
そこから
わたしはやって来た
なにひとつ持たず
生まれたままの姿で
わたしは布団 ....
恋するため息が
星になって
夜空に瞬いている
たくさんの思いと
願う心
まだ叶わない
たくさんの星の数々が
今夜も切ない
夢が叶うと
流れ星になって
その人のも ....
あの夏の日の
電話ボックスの中
受話器を持ちながら
あと一桁ダイヤルを
回せば届く
思いがあった
あの夏の日は
静止したまま
僕は僕の海に溺れ
窒息している
何 ....
見えているもの
それが少し
へんなものであっても
僕らは生きることに
必死だ
街ですれ違う人たちが
冷蔵庫だとしても
見えているもの
それが少し
へんなものであっても ....
僕らは出会った
地上から空を見上げる
距離でしかなかった
そんな僕らが
とても遠いところから
生まれてきたような
そんな僕らが
買ったばかりのノート
一ページ分にも ....
生きてるふりをするから
たくさん汗をかく
汗をかいたら洗濯するから
それ以外に選択できない私たちは
命の匂いを消し去って
また生きてるふりをする
たくさん汗をかく
海のような ....
玉葱のにおいがしている
玉葱が匂いになって
何かしている
夏祭り
まだ日は高く
午前中のうちに宿題を終えた
小学生たちが集い
がまん大会に参加する
冷水が満たされた青い ....
象が海を渡っていく
かわいそうに
目が見えないのだ
かわいそうに
と人は言うけれど
思ってもいないことを
言葉にしてしまう
人もまた十分かわいそうだった
かわいそうに
何度も言 ....
石になると
夢を見ている
霧の生地になって
触れることしか出来ない
君の海が溢れ出すところ
水の世界は壊されて
生まれることを繰り返している
蛍だった頃
わたしは声を聞いていた ....
鉛筆の匂いをさせて
あなたは春になった
尖った芯が
しだいに丸くなって
やさしくなった
声、かもしれないものを
たくさんスケッチした
知ってる言葉も
知ら ....
と、言って
帰ってきたのが
わたしだとしたら
いったい
わたしは誰なのでしょう
と、考えてみたところで
わたしは
わたししかいない
ただいまのわたしと
おかえりの
....
存在しない
姉について思う
父が父であるとき
母が母であるとき
姉はどこにも存在しない
ある日子供が生まれた
ある家で
そこはわたしたちの家
わたしはそこに
存在しない ....
小指をにぎる
強くて
弱い力で
たしかに
そこにいる
母さんの
子でよかったと
思う日も来るだろう
君にも
けれども今は
ひとまず母さんに
なれたみたい
よか ....
心臓にも
記憶があるらしいんです、と
その透明な
心臓をもつ少女は言った
にくたいが
ほろびてもまだ
記憶というたしかなものが
あったとは
わたしは思って
しかし
何 ....
ものごころついたときから
あるもよおしものが
そこでおこなわれていて
開催期間:ひとのきかん
とかかれてあるので
ふしぎにおもい
うけつけのおねえさんに
ひとのきかんとは
....
雪のひとたちが
亡くなってしまった
雪のひとの魂を
雪の中に埋めました
雪のこどもは
なぜそうするのか
雪のお母さんに聞きました
雪の中に埋めたのは
またいつか
雪に魂 ....
ここで暮らしていたことが
夢のよう
いつかそうなる日が
来るとわかっていたから
やさしさは
やさしさでしかないことも
知っていたから
ただ祈るしかなくて
今も祈ることしかでき ....
ただしい船が
たくさん
海に浮かんでいる
沈まずに
まっすぐに
まちがいのないところへ
向かって進みながら
ただしさだけを保っている
嵐にでも遭ったのか
うちあげられた ....