増水の ために
すっかり 荒れはてて しまった
堤の かよって ゆく なかを
猫じゃらしを 噛み ながら
草ひばりの 音が ほそぼそと つづく
すすき野原を ....
いつか
山の道をとぼとぼと
登ってゆく人影があった
あれは河童じゃ
そう言った父の
背中からもくもくと雲が立っていた
河童は
夏が終わると山へ帰る
そして勢子になったそうな ....
蝉の鳴かない朝でした
胸の端からほどけてゆくひかり
できたばかりの海は睫毛に乗る軽さ
静かに浮かぶ顔に人知れず声を燃やす
髪を結んで横たわる
約束、と呟いて水より生まれし数字を ....
070913
ぼん ぼん ぼん
ぽろろん ぽろろん ぼろろんろん
ぼろぼろ ぼろろん ぼろろんぼん
ボボボボ ボボボボ ボボボホボボ
ふーふる ふ ....
神が住むという山の麓は、瓦礫だらけの扇状地で、そ
こに掘られた深い母井戸を彼は「マジャール・ダー」と
呼んだ。この場所から井戸の水面を見ることはできない。
カレーズと呼ばれる地下水路はここを水 ....
注意・・・あくまでも私の主観ですから、笑い飛ばして下さい。
ズバっと言ってしまう系が苦手な方はお控え下さい。
ノークレームでよろしくお願いします。
毒舌指数★★☆☆☆☆
第一 ....
寝台車の匂いが
掌にする
腕はまだ
距離を測っている
残されたものを集めると
骨の近く
きしきしして
初めて靴を買ってもらったときの
恥ずかしい喜びしか、もう
いらない
....
私たち 午後には散文を開いてエレクトロニカにする どうしても、というなら黒人霊歌でもいいわ だけど、こうして眼を閉じるわね 表通りのニレの木に(嗚呼、もうこんな時間)絹のつやをした鴉が居る 美しい眼を ....
ほどよく冷えた桃の
皮が剥けるのも
待ちきれない様子で
傾いでゆくあなたの
日焼けした首筋
滴る果汁か
それとも
戯れの残り香か
甘い匂いが
鼻腔の奥に絡んで
涙させる理由
....
うれしかったこと
悲しかったこと
楽しかったこと
辛かったこと
今日の箱を
棚の奥にしまい込んでくれる
夜の暗闇
どこに置いたかなんて
明日になれば
きっと
....
泥を
振り払おうとする腕こそが
いつまでも拭えない
泥かもしれない
確かめようの無いその有様を
透明である、とは
誰も語らない
そこでまた
ひとつの泥の
可能性が
散る ....
ナイチンゲールの鳴く夜に
私はひとり詩を綴る
月明かりの射す窓辺で
せつなく悲しい恋の{ルビ詩=うた}を
ナイチンゲールの鳴く夜に
薔薇は色を赤く染め
残酷な結末を知らずに
今宵も甘 ....
かそけき風の香音(かのん)を連れて
秋宵の橋を渡る
あふれる水の数を
わたしはしらない
契る言葉の薄紙
序(ついで)を忘れた指先で鶴を折る ....
空がパッと閃いて
少しあとで雷が鳴った
昨日も今日もたおれそうに暑くて
夕立でもあれば少しは何かを思い出すかしら、と思った
この邪魔なおくれ毛は刈りあげるべきじゃないかしら、と思っ ....
最初の 真昼の 星が
ことばの 紀元前に またたいて いる
やってきた 9月
地には ことしの 豊穣を
やくそく した 稲穂たちや 曇った空
透明な 稲びかり ....
ぼくには声はないよ
さけんで さけんで
声はきこえなくなってしまったよ
ぼくは、うたえないよ
ただ、卑屈な笑みしかつくれないよ
正直、今日も死にたいと思っているよ
病気と言って ....
闇、叫び、月、銀、狼、爪の痕ほとばしる血は昴の花弁
月を噛むアカイ目眩に舞いくるう鴉揚羽の鳴り止まぬ翅音(はね)
雷(イカヅチ)の刺さる。蒼きは明星の息遣い。眠れぬ ....
「並んだテールランプ
漁り火のよう
空はくれてやる」
「地味な色の饅頭は
もういいや
飴を噛んで夜を待つ」
「諦めの早い男
高望みする女
手を離せば知らない人
....
勢いベンツのSクラスで
裏通りのちっぽけなパーキングへ
恥も外聞もなく突っ込んだ
そこに無人契約機「むしん君」がある
「むしん君」は大切なトモダチだ、
たった今も20万円を引き出した
....
近づいてゆく
風が乾いた草の匂いをはこんで
近づいてゆく
滅んでゆくものの気配を
怖がらないで足をのばし
サンダルを遠くに飛ばして
近づいてゆく
秋のサテンのやわらかな手触り
私はこの ....
午前の陽が
空間に満ち満ちて
こぼれそう
木々の緑に
この陽光は 留まり
深い瞑想の光合成が
効率よく 静かに浸透して
一葉は重く 沈む
地球の裏側で
ラプラタ川のほとりで ....
良くできたうめぼしは
故郷の懐かしい味がする
すっぱさのなかから
忘れかけていたものが顔をのぞかせて
こんなんだったよね
と問いかけてくれるような
ほどよく皺くちゃで
秋アカネの ....
ポケットが汚れ始めている
待合室は朝から眠たい
何かの整備工の人が
口を動かしている
語りかけるように
沈黙を選ぶ言葉があった
目を閉じようとすると
少しばらばらになる
水が優しい濃度 ....
月の瞳に
海が映るのか
海の鏡に
月が潤むのか
旅立ちはいつだって
こんな夜の、ブルー
マストを背にした
ひとつひとつの心に
青はなにを
語りかけるのだろう
....
なにかが欠けていたのだろう
あなたに伝えること
いま
全裸を隠そうとしている
この月のように
僕があなたを
少しずつ愛していった
はずなのに
あなたは
不信で覆われていく ....
かすかな声でなぞる
あれは面影
うらの林のすきまからみえた
私の亡霊
沈むことのできない舟
いっそうの複音
静かな{ルビ水面=みなも}をもっている
{ルビ自恃=じじ}{ルビ矜恃=きょ ....
かつて潔く閉じた手紙は風を巡り
伏せられていた暦が息吹きはじめている
朽ちた扉を貫く光は
草の海を素足で歩く確かさで
白紙のページに文字を刻みはじめ
陽炎が去った午後に、わたし ....
あなたは
きえそうなひかりのまえで
手をかざしている
胸元から
オイルの切れそうなライターを出して
何度も 鳴らす
うつくしいけしきの
まんなかにいる
いつも
き ....
ぼくの 住む 土地で
自然に ひぐらしの 声を 聞いたのは
10年も むかしに なる
それは かぼそく いっぴきの 系譜が
つづいて 啼いて いたのだ けれど
....
{引用=
事実、失われたものたちが/こどもみたいなことを
眉間に集束して、にこやかに手を振っている/窓際に並べ合って、トランプしている
夏の蜃気楼に酔った、寂しさの群れが/失 ....
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