千利休が七輪でツバメを焼いて食べている、
そんな絵葉書が一枚届く
彼女はそれを見ながらテレビ画面を舌で舐めている
その姿が、どことなく黄昏ていて
テレサ・テンの歌声とともに
無限増殖するスー ....
どんな町にお{ルビ囃子=はやし}が鳴り響いて
どんな町で葬列が連なってんのさ
僕は家へ帰る
青と黄色と黄緑のガラス窓が
なにかしらハンマーで叩き割られて
キリキリ、と
破片が落ちてゆく床に ....
わたくし色の雪の結晶が
泣いてるあの子の
てのひらに
ひらりら らりら
落ちて
消えたよ
曇る窓の先は雨
バスの湿り気に汗ばむ
ポケットのハンカチ
フロントガラスをぬぐうワイパーの往復が
息苦しさをリズムにのせようとする
雨の降るしくみは
学校で教わった ....
宝くじ
当てたぐらいじゃ建てれぬか
馬鹿か 浪漫か 夢、青閣寺
て、手を伸ばして
やわらかくてをのばして
その、影
ぼくらに届いて
君は
ぬりこめられて
たいよう
やさしくしずみこみ
耳のあな
つぼみのように閉じ
ふとんを頭からかぶ ....
は
なので
しないでください
通りすがりの商店の
入り口の看板
赤い文字のところが脱色して
(何故たいてい赤なんだろう)
黒い文字だけが残った
「葉なので ....
うそは泥棒のはじまり
だったはずなのに
ひとは誰でもうそをつく
愛するが故のうそだからと
あのひとは
目も合さずにつぶやいた
その場しのぎのうそを重ねて
針千本の〜ま〜す
....
ほら みて
ふってるよ
と
あなたが言う
窓の外をみると
ぎゅ っとひざをかかえた雪
みたいな雹が
こつこつと
じめんにおちてきた
なんだろうね これ
ひょう ....
まばらな枯れ葉を飾った街路樹
細い枝先が交差して編んだような
小枝の投網にひっかかり
捕われてしまった晩秋の月
きっと月の頬には
網目の痕がついているだろう
憂鬱な月の溜め息が
....
かなしくはないと云ってよあおい檸檬
軽く齧ったあなたとわたし
黒髪が胸にまつわり痛くって
あなたを睨むそろえ前髪
爪を噛むしぐさを憎むいっそすぐ
指を ....
体いっぱいに
内臓や肉や骨を詰め込んで
さあ出発だ
横断歩道を渡り
魚の肌を横切り
宇宙ができる以前から咲いている花を
アスファルトに練り込みながら通り過ぎて
コンビニとともに混濁する
....
のぞいてごらん、おまえは蓮華畑で興奮している、鼻腔を刺激する春の芳香のなかで、何かを追いかけ、また何かに追われて、ちいさな蓮華の花を踏み潰すたびに熱くなっている、いけないことをし過ぎて気持ち良くなった ....
夕されば高き帳に望月の影透けて咲きよいやみを待つ
ゆくへなき水だに君に恋すてふ命のなごりに青霧となる
秋と言ひ長き夢路を眩ませし霧は瀬に立つ蒼き陽炎(かげろ ....
あの人はね
魔法の花が好きなんだ
夜に咲く黄金の花が
誰を待っているのか知らないけれど
あの人は待っている ずっと前から
満月の夜
魔法の花は満開で
あの人の影が映るだけ・・・
まぼろしのわたしを
まだ探している人がいるようで
それもまたまぼろしの
空気の環っかが生す群れ
拭けばガラスに付いたほこり
きえてしまうでしょ
身体にしみついた その影も
洗い流 ....
いま
あの日、に立っている
右手をのばし
空の高さを測るきみ
手招く左手は
薄の穂の間に
見え隠れして
黄昏の
目で追う背中には
金色の翼があった
喧嘩しても
すぐに忘れ ....
手紙を書くときの始まりは
どうしてもこうなってしまう
「お久しぶりです」
大変便利な世の中で
携帯やら電子メールやら(「電子」って古臭い)
いろんな意味で距離が縮まって
僕なん ....
波打ち際で
砂に埋もれかけた
木製の小舟が
少年の夢にたたき起こされ
夕映えに浮かぶ
かもめが船頭になって
赤く染まった海を進んでいく
静まりかえった海面に敷かれた
赤い絨毯は
....
まどろみながら
僕が見失っていたのは帰る場所だった
それとも
もしかしたら行き先だったかもしれない
目に見えるものの手触りを確かめて
それをどう思えばいいのかを確かめていた
孤独な色だ ....
幼い子の背をひらくと
痩せた背骨の喉奥を渉る
薄ぼんやりとした虹が、
そして
拾うように弾き上げると
それからは早かった。
飛んでいく静かな底の
透明な成長が、
....
「俺様がどれほど鮮やかな色で
みごと第一連を美しく染めたとしても
賛美の対象はあくまで作者だろが。
ふん、馬鹿らしくてやってられるかい!
こうして群青は捨て台詞をのこし
肩で風をきると、 ....
シロとクロは
相反する色をして
だけど、寄り添い
補っているようで
二匹はいつも
空き地の隅に
重なるように眠っている
実際は交ざることなく
無造作に生えた緑から
シ ....
切符を握った手が濡れてきたから
てのひらを上に向けて解放してやった
そうしたら切符は川になって
行き先はすっかり見えなくなっていた
川は
僕だけが感じる速度で流れ
薬指、から滝 ....
Out of sight
目に見えぬとも
Out of mind
夢に来ぬとも
くしゃみは今も
ポプラを揺らす
さやさやさやや
耳はまだ
{ルビ此岸=ここ}にはいない ....
■「三銃士007」■
声をあげ まだ温かいリボルバー君がためならロシアンもやる
〜ダルタニアン〜
トリガーを引ききる時の痛みさえ分かたぬおまえの傷に刺すキス
....
落葉がそぞろに風にふかれ
雲は青く高い空をゆく
うらの{ルビ小径=こみち}の縁石に腰をかけて
杉といっしょにゆれている
夏の{ルビ遺言=いごん}は朽ちることなく
静かに実 ....
声にならなかった
あらん限りの力を込めたはずなのに
例えばそれは
孤島に取り残されたおとこがひとり
遥か水平線に見え隠れする
船影を
蜃気楼だとはなから諦めているかのように
もし ....
こめかみの銃口我に味方せり引くも引かぬもその強さゆえ
撃鉄を起こす刹那の走馬灯 涙とともに溢るる思い
悲鳴とも歓喜の叫びとも聞こえたが俺は応える「闘え、この ....
いつか来るその日のために
わたしはあなたに笑いつづける
楽しそうに笑っていると
呆れて見てくれたらそれでいい
いつか来るさよならのために
靴を履く準備をしておく
泣かないで歩け ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77