山の季節
yo-yo

いつか
山の道をとぼとぼと
登ってゆく人影があった

あれは河童じゃ

そう言った父の
背中からもくもくと雲が立っていた

河童は
夏が終わると山へ帰る
そして勢子になったそうな

雨が降ると
牛の足跡にできた水たまりに
小さな河童が集まる
数えたら
千匹もおったそうじゃ

父の話は
河童のことばかり
山の水ほどにも
生きる糧にはならなかった

千匹の河童はかなしい

秋になると
いまも山の道を登ってゆく人がいる
もくもくと背中から
雲の中に
消える





自由詩 山の季節 Copyright yo-yo 2007-09-14 06:37:08
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