そして、
海は濁っていった。青黒く、あるいは黄色く、
濁ることで海はひとつの予兆を示した。水平
線までの正確な距離をはかろうと、漁師たち
は考えをめぐらせ、砂 ....
こんな晴れた日
野の緑はしなやかな腕を
天に向かって伸ばし
陽射しに仄かな生命を温めている

草むらをすり抜ける風は
蜜蜂の
しじみ蝶の
か細い肢に付いた花粉を
祈りに変えて
次の ....
飛砂を焼こうと
たどり着く海岸で
瞼を閉じたときに
ひらく{ルビ瞳=アイリス}

   あかいのは
   すべてが染まる音で
   あなたとの間には
   愛以外のなにかが潜んでいた
 ....
夕焼けに
うす紫に染まった
ほほにひとすじ
熱いものが流れて
小さな手のひらで顔をおおう
影が淡く
暗い血潮へ暮れてゆき

無器用な翼の
色調不明する鳴き声が、
空ろに響く
指の ....
砂浜で波とたわむれる
あなたを見失ってしまいそうで急いでかけよった

あなたの白をたどれば
その薄紅色の唇に広がってゆく海が見えてしまう

景色はうっすらと朱に染まろうというのに
 ....
雨降り立ち尽くして空見上げ

ぱしゃ ぱしゃ ぱしゃ
憂鬱な気分を洗い流して

水溜りにはねる子らに負けぬよう

ぱしゃ ぱしゃ ぱしゃ
水溜りに映る自分をけちらして ....
時が止まる
そんなことあり得ない
時とはなんですか

  葬儀の帰りに思い出し
  共同墓地に立ち寄ると
  分からないことだらけの人生に
  漸く終わりを告げた人たちが
  生きてい ....
                       

子供がなにかを書いていると
先生がノートを取り上げて
大きな声で読み上げるので
水たまりの中には
どんな優しさも隠れられないよ

放課 ....
苦悩のあたらしさを
うしなって 道がおわる
そこに はこんできた自分を
泣きながら捨てると
また道が はじまる
今日も窓辺のてるてる坊主は
ひとり 濡れて
ひどく 濡れて
雨粒 ぽとり

あなたの気持ちは分からなかった
週間天気予報(の降水確率)よりも
けれどずっと晴れなんてあるわけなかった
「 ....
  
 
      沈んだまま明日のこない
      深海に揺れる一群れの
      長い、深い闇

地縛された肉体の
閉じる奥の扉
なにかのなまえで封じられ
こたえを閉じこめ ....
昆虫採集は
流行らないので
コトバ採集やっています
薬液は要りません

   *

空からツバメが
落っことしたのや
麦の穂のさやぎから
あふれ出たのや
流し台のシンクの隅に
 ....
スモッグか春霞のせいか
メラメラと焼き尽くす朝焼けはない
セロファンに透かしたような太陽
掴めそうな不吉

それでも朝の鼓動は姦しい
チュン チュン チュンと 
ことりは さえず ....
なまぬるく
なまめかしい
春の夜風の底 へ
わたしは
指を溜める

纏わりつくのは
すこしはなれたところでざわめく
緑と水の匂い
だろうか

やがて下弦の月がのぼって
ちいさな ....
胸の痛みが 海のふかい場所に
沈んでいる
目のない魚が こらえきれない
痛みの上を
ヒラヒラと 泳ぎ回っている


痛みの底には
もうひとつの
痛みが
かならずみつかるはず

 ....
開店時刻の前
Cafeのマスターは
カウンターでワイングラスを拭きながら
時々壁に掛けられた一枚の水彩画を見ては
遠い昔の旅の風景を歩く 


 *


セーヌ川は静かに流れている ....
四つの脚をたて
温度の低い床に
椅子が停泊している
いつまでも出航しないのは
その方法を忘れてしまったから
ではなく
航行すべき海が
椅子の内に広がっているからだ
水が溢れ出さ ....
「おれ死ぬね」ねで終わる死にはなんとなく潔さがかんじられずただのお休みメールだとおもい絵文字をかえすと
泣きながら電話がかかってきた


「死ぬな」といわれ目が覚める
全くそういう気分じゃな ....
 お年玉の全額を本に変えるのが習慣だった。地元ではまともな本が買えないから、母の実家がある街で買った。母の実家は一応県庁所在地にあって、その周辺にはそれなりに書店や古書店があったのだ。一年に一度か二度 .... 水の底にじっとしている
大きかろうか小さかろうが
石は皆平気な顔をしている
水の中にいて水が見えていないのか

冷たい中で
何食わぬ顔をしていて
どいつもこいつも
嘘だと思った
川ぷ ....
わたしは、この世界の人間なんかじゃないのかもしれない

白い天井を見つめて少女は呟いた
横顔は輪郭を失くして消えかかっていた
けれどそれはとても美しかった

仰向けに寝転がると、堕ちていく ....
深夜の浜辺で
青白い顔をした青年は 
{ルビ焚=た}き火の前で{ルビ膝=ひざ}を抱えている 

肩を並べていた親しい友は 
すでに家路に着いた 

胸の内に引き裂かれた恋心 
誰の手に ....
散る散る  ちるらん
花びらの
風に任せた行く先は
夏の匂いの西方か

揺り揺る  ゆるらん
水面に降りて
さざめく海に恋がるるか

思えば君に逢うた日の
宵は海辺に砂嵐
さらさ ....
大理石の{ルビ初心=うぶ}な冷たさに
灰色の空のもと青い花が咲いている

わたしは、
結果の過程であります
いま見ている景色
いま聞いている音色
いま今は
すくなくともわたし、
うた ....
 夏が終わって、私はまた学校に行ったり行かなかったりの日々を過ごした。学校に行けばまあ成績は中の上、ほとんど図書室で本を借りるためだけに学校に通っている生徒だった。その当時、私には目も合わせないくらい ....  「SFの黄金時代は12歳だ」という言葉がある。つまり、SFが最も面白かった時代は20年代でも60年代でもなくて、読者本人が12歳だったころ、とゆーことなのである。そんなものだろうな、と私は思う。しか ....  当時私が住んでいた町には、本も売ってる店が2軒あった。言っておくが書店ではない。「本も売ってる」店である。どちらの店に行くにも、自転車できっちり20分かかった。ひとつは、スーパーに隣接した、雑誌と文 .... 夢のつづきを上映なさる、
あめ色に半透明な
翅のスクリーンに

隙もなく並べられた円卓が。
潤む瞳、
凸レンズ式の

灰皿におとした視線に煙り
鉛の筆跡で笑えず。
夕べは、霧の森で ....
かくしたの。

たまごかくして、
おいたの。


とんがり帽子に、
かくしたの。

帽子の中には、
にわとりさんがいて、
たまご暖めて、
いるの。 ....
ぽっ、と生き物の匂い
振り向いたけれど
ここはもう教室ではなく
ただ頬に、そして体に、雨でした
生き物ではなく
春で融けただけの


ああ
かつて
純だった
まば ....
前田ふむふむさんのおすすめリスト(2307)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
そして海は濁っていった- 岡部淳太 ...自由詩11*06-4-24
雲雀- 銀猫自由詩19*06-4-24
外燃するわたし- たりぽん ...自由詩16*06-4-23
紫の背反- こしごえ自由詩20*06-4-23
「どこまでも白い海」- ベンジャ ...自由詩12*06-4-22
「天気に左右はされないよ」- ベンジャ ...自由詩4*06-4-22
玉を磨きに- あおば未詩・独白8*06-4-22
ジャングルジム- あおば自由詩10*06-4-22
そろもん(歴程の話)- みつべえ自由詩1006-4-21
私はひとり- ふるる自由詩9*06-4-21
封印- たりぽん ...自由詩1206-4-20
標本屋A- はなびー ...自由詩7*06-4-20
*その、平穏*- かおる自由詩9*06-4-20
余_黒- 塔野夏子自由詩13*06-4-19
痛みが痛みを捜す- 阿麻自由詩16*06-4-19
セーヌ川の畔で_- 服部 剛自由詩12*06-4-18
その、平穏- たもつ自由詩2306-4-18
_あたししあわせだったとつぶやきながら愛するひとの腕の中で- モリマサ ...自由詩12*06-4-18
異形の詩歴書_14歳冬- 佐々宝砂散文(批評 ...406-4-18
将監川- 長谷伸太未詩・独白106-4-17
コンコルド- エラ自由詩206-4-17
幻の太陽_- 服部 剛自由詩15*06-4-16
さくら貝のうた- 銀猫自由詩15*06-4-16
園(その)- こしごえ自由詩14*06-4-16
異形の詩歴書_14歳秋- 佐々宝砂散文(批評 ...706-4-16
異形の詩歴書_14歳夏- 佐々宝砂散文(批評 ...406-4-16
異形の詩歴書_14歳春- 佐々宝砂散文(批評 ...606-4-16
無声映画- こしごえ自由詩15*06-4-15
「_みつけ、て。_」- PULL.自由詩15*06-4-15
不透明な春- A道化自由詩1206-4-15

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