忘れられない絵がある。
  いつ見たのか、どこでだったか、覚えていないが。
  思い出す、絵がある。

  大きな窓から夕暮れの赤い陽が射し込んでいる。
  中年にかかった初老の男女 ....
 さえない毎日はグレー
 北風吹く財布の中
 年の終わりに振り返る
 まだまだ先の見えない生活
 やり残しの多き課題
 雑踏の中に消えていく個性
 まばらに見え隠れするのは
 等身大 ....
とどける。せかいのどこかでいきをころしている君の
ために、ひとつのうたをとどける。君がなにものなの
か、だれにもしられていなくて、しられていないこと
は、みたことのないけむりのようなかいかんでも ....
そこには廂のない
木々を見下ろすような
建物ばかりが並ぶから
欠けない月は
皮膚の下
脈打つ鼓動までも
見通す

懐で熱を吸い上げる
母から貰った
裁ち鋏は
銀色の筋をつけながら ....
見上げると 
ひらひらと北風に舞う 
たましいのかたちをした 
まあるい葉が一枚
落ちてきた 

{ルビ煉瓦=れんが}の{ルビ椅子=いす}に座ったぼくは 
腰をかがめてそれを拾うと 
 ....
なんということ
こんなにもきれいな
瞳をしているのに


のに


祖母は私の瞼に触れて
また少しちいさく
かすれてゆくかのように
そう言ったんだ
薄い皮膚で感じた
あなたの ....
自分の名前を
忘れてしまいそうになる
遠いとおい旅路なのです
だけれども
決して忘れない
名前もあるのです

あの月と星をいただく塔の上で
そらに吸い込まれる
ただひとつの呼び名のよ ....
落合朱美詩集『思惟』(詩遊会出版部)

手にとってみると、紅い表紙に、バラの花だろうか白い線のイラストが大きく配置されている。ルナクさんの絵。詩集の紅い色と、著者名の「朱」という色が呼応しているよ ....
昨夜に限っては
悪夢にもうなされず
いっときだけ
窓をたたく雨の音を
聞いた気がする
夜の中にあって
感情を露わにしないまま
目覚めたのは幾日ぶりのことだろう
確かに雨は
濡れたアス ....
 世界の片隅で生まれた風は
 猫柳の枝を揺らし
 水辺に群がる蝶の触手を掠め
 乾いた轍の上を砂塵を巻き上げながら
 叫びと響きを翼にのせて
 つむじとなって舞い上がる
 鋭いまでの切っ先 ....
 ひとひらの思い出のカケラ
 走馬灯のように右脳を走る
 凍えてぬくもり求めて歩いた我が青春
 過ちをするなとは言わないけど
 繰り返さないこと
 それこそ大事
 絶え間なく続く命の鼓動
 ....
壁の取っ手にかかった鍵は 
{ルビ紐=ひも}がほどけてするりと落ちた 
それを拾って結んだぼくは 
壁の取っ手に再びかけた 


( 紐をつまんで手にした鍵は
( いつも人の心の鍵穴に
 ....
ぼくらはいつも
見ていたんだね
同じ窓から
午後の青空
透ける葉脈
震える小枝
それらにも似た、未来

ぼくらはいつも
感じていた
同じ風を、違う感受性で

教室にいる ....
前回に書いたことを、
簡潔にまとめてみます。


つまり、
みんな誰もがひとりひとり、
他の誰にもない才能や感性を、
持っているのです。

誰も、
 ....
夕暮れの風が優しいので
少しだけ手袋を外してみた
小さな枯葉が僕の手にのった

電車に乗ると人ごみが恐ろしく
そっと息を止めてみた
苦しくて苦しくて仕方が無かった

駅からの帰り道に雨 ....
珪石、打ち鳴らし、
火花が砕けた。
日々には
何も影響しないし
縫い付けない。
去年の冬に読んだ、
ある外資系投資家の
凡庸な装飾と比喩、
エチオピア・ハラーという珈琲が
おいしいく ....
みかん畑の夢を
あなたもいつかきっと見るでしょう
深い緑に
橙色が星のようです
母なる木の枝に包まれて
静かに眠るみかんの実は
いつか生まれた場所を遠く離れ
めぐり逢った人に必ず ....
春からひとり
流れてきた
おまえ

こんこん冬と
墨染めの宵の川は
さぞ冷たかろう

月様には出逢うたか
さぞ澄ましていたろうに
あれは誰かを
好いている

一に ....
 生きていること 死ぬことの不思議
 さなぎのような体の中に 
 閉じ込められた私の意識
 息を吸うたび膨らむ胸郭 
 心地よい空気の移動
 耳の奥で脈打つ血のうねり
 私にしか聞こえない ....
私とあなたが
星砂の浜辺を歩きます

くりかえし
打ち寄せる波は
過去から未来へと
永く続いている
時の呼吸です

波に乗せられて
次々と浜辺に
打ち上げられる
星の形をした砂 ....
とじゆく風にひらかれて

それがあるいは逆だとしても
なおさら地図は
紙切れとなる



吐息はつまり消える熱

硝子に映る秒針を
遠ざけるものは
いつでも
そばに

 ....
(僕を殺した声を殺す為に
 知る時計の音)

堅固なピラミッドの秩序が崩壊していく
不可視のラジオの雑音の中で目覚めて
無機質な時計の音が永遠に鳴っていたこと

記憶の朝、
白い光の電 ....
 虎になった
 黄色と黒で 都会のようで
 {ルビ四本=しほん}の足が 致命的で
 
 神秘と静寂のギリギリに
 透き通るように立ちつくす
 

 虎になった
 爪と牙が 怯えのよう ....
あの曲がり角を右折すると
あなたのステージは燃えてしまってるわ



火の粉が
ひとつ、またひとつと
逃げてゆく

今度は一度にいくつも

あなたは
愛しい場所と野次馬たちと ....
白鳥の声で
目覚めたような気がした 

明け方の空は蒼の階層を成して 
東の彼方の地平線のすぐそこまで 
太陽が迫ることを告げる

昨夜のうちに雪はうっすらと降り敷かれ 
まだ誰に ....
旅の終わりに訪れた 
夕暮れの善光寺 
{ルビ巨=おお}きい本堂脇の砂利道に音をたて 
紫のマフラーを垂らした 
小さい背中の君が歩いてた 

「 あの・・・○○さん・・・? 」 

 ....
 薄闇のなかで煙っているのは
 発光するわたしの、産毛にかかる氷雨
 ヒールを脱ぎ捨て、アスファルトに踏み出す素足は
 ぴしゃり、ぴしゃり
 水溜りに滲んだネオンを攪拌する
 ぐっしょりと水 ....
  同じ一つのものを                   
  別々の名前で呼んだ咎によって           
  罪なき多くの血が贖罪の地に流され        
  同じ一つの光によって ....
今地平線の向こうから
金色の髪をたなびかせた
美しい日の神が来る
虹色のベールが静かに開き
竪琴のようなオーバードが流れる
ああ素晴らしい時の始まり
火の早馬は蹄を高らかに鳴らし
空の彼 ....
きっと、知らない町なんだと思う
不器用に建ち並ぶ、高層マンションに隠れている
ありふれた日常だとか、錆付いたマンホールの下から
伝わってくる、救いようのない虚しさだとか
見慣れた信号の色と形で ....
前田ふむふむさんのおすすめリスト(2306)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
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終末は白く光の中に- 自由詩5*06-12-17
たましいの葉_- 服部 剛自由詩18*06-12-17
なみだのつぼみ- Rin K自由詩34*06-12-17
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落合朱美さんの詩集『思惟』(詩遊会出版部)の感想_を書いてみ ...- 光冨郁也散文(批評 ...9*06-12-16
冬薔薇- LEO自由詩21*06-12-16
風を忘れた君へ__(Ode_to_a_nerd)- 月夜野自由詩13*06-12-16
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鍵_- 服部 剛自由詩7*06-12-16
同じ窓から- Rin K自由詩30*06-12-16
SATP.Vol.8,「_簡潔にうんこ。_」- PULL.散文(批評 ...5*06-12-16
世界中の右目を集めて- プル式自由詩13*06-12-15
半導体、その彼岸へ- はらだま ...自由詩11*06-12-15
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知る銀色- 結城 森 ...自由詩6*06-12-14
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舞台炎上- 白雨パル自由詩8*06-12-13
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旅の終わりに〜善光寺にて〜(仮)- 服部 剛未詩・独白9*06-12-12
水没都市- 月夜野自由詩14*06-12-12
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- 未有花自由詩16*06-12-11
君に会いに行く- 青山スイ自由詩4906-12-11

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