赤と青を混ぜたら
いつか二人で手を繋いで飛んだ
有明けの紫の空になり
青と黄を混ぜたら
いつか二人で脚を絡ませて泳いだ
底無しの緑の森になる
私と君は
天を指す草原、地を ....
砂に書いたラブレター
パットブーン
1957年のヒット曲
マツダのオート三輪にも
曲面ガラスが使われだして
戦後も終わったと
みんな感じていた頃の
なんとなく未来が明るく
元気 ....
透きとおる真昼に
日常が、消えていく
八月に買った青いびいどろは
もう割れた
観覧車に乗りたいと言ったのは
あのひとのほうだった
てっぺんに着いても
世界はちっとも見えなくて ....
正確な、正確な、階段を
カン、カン、落下、してゆく音で
冬の風が半音上がって
度重なる半音分の痛みが次々に
刺さっては馴染んでゆくこめかみ
更に
視覚
という切れ目へと
....
実際の所あれは
鴉のようにも見えたし
人間のようにも見えた
真冬の朝の
まだ明けきらぬうちに
紫色の空を
私たちは見上げていた
凝固につぐ凝固
雪よりも白く美しい
骨を包んで ....
右目がポケットに落ちた
左目を瞑るだけで
見なくて済むものは見えなくなったけれど
溜まっていたゴミや砂が入って
右目からは涙が止まらない
あの人のズボン泣いてるみたいだね
と言う男 ....
冬の曇り空の隙間
陽射しが差し込んだ先を
追いかけて走ったけれど
たどり着く頃にはいつも
寂しげな笑顔を拾って
空を見上げたとしても
気ままな風が運ぶ雲
視線の先で分れて消えて
....
陽炎ゆらめく金の砂子
彩雲は海風に吹き乱れ
てのひらに燃え立つストレリッチア
放った水際 横なぎにさらわれる
あの辺を転がってく
サクラ紙みたいな柔らかいの
さっき2人で食べた
カッ ....
日はこの時ついに陰ることはなく
交叉点の信号が
青ざめて進めという
曲線に添った産声が
白い手で羽ばたき
円周率へ視線をおくり
目をふせた
ふせないで
みつめて
林檎の赤
....
送電線の下をくぐって
アスファルトの海を
ぼくたちは、
泳いで、
はりめぐらされる
緯度や経度に
足をとられながらも
ひたむきに
日帰りの旅をくりかえす
ねむる前、ときどき
....
凍える桜の枝を煮る
花の色に染まる
記憶のひとひら
なくしそうな
砂のらくがき
ため息で
消して
あなたの指した
電柱の奏でる擦弦楽の季節
手をさしのべても
触れるもの何も ....
規則的に並んだ 長方形の、
石の上に横たわる
やわらかな、暗室
腕をまっすぐ 前に伸ばして
星座の距離をはかる
おや指とひとさし指で足りるほどの
遠さで
わたしを見下ろしている
....
昨日 切り捨てられた廃線の
駅 構内には
まだ暖かな気が
そこら中に点々と赤味を帯びて
揺れ立っているというのに
朝に 幕
夜には 鉛の月影が
ゆっくりと光りを奪っていくのだと
....
皮膚を、
へだてているのは同じではないか、その
頂へ
ゆっくりと
のぼりつめるさま
あるいは
交わってなにひとつ溶け合わない、交わりは
交わりのまま皮膚の
上にしんしんと塗布
さ ....
あの日の筆圧で
定着したインクが
原稿用紙の余白に
青くにじんでいた
その万年筆の字体は
水性の化石だった
硬質のにじみの層は
幾重にも連なったブレストーン
そこでは私の声もに ....
私の底に滴るのは
暗い砂だ
私が歩んでいるのは階段だ
いつも
上っているのか下りているのか
どうしてもわからなくなる階段だ
記憶の中には
私の指たちが仄白く棲息している
それら ....
この子への あいのかたち
辿りながら 夢へ誘う
眠れ 眠れや
明日は晴れる
夢に見るのは
月の舟
耳に聴いて こもりうた
包んだその手 もみじのように
眠れ 眠れや
雨の降る夜も ....
月が盲目であることを知るのに私は二十年の歳月を要した。私にとって、月はあらゆる意味で眼であった。月から伸びる湿った神経束は世界の絶望へと接続していて、世界の絶望は、半ば狂いながら老犬の飢えと私の衰弱 ....
非世界から吐き出された器としての私性
一滴の光でさえも顔料にして
熟したひだの内側へと塗り込んでゆく
ゆらめく環としての仮性植物
突起した肉からしたたる千草色の液
私は世界のあらゆる空に押し ....
わたしが
うまれてから
なみだを
このてで
ふくまで
ちちははは
どれほど
こころを
ぬらした
ことだろう
いきていく
....
染み込み切らず
床に溜まる夕刻、それは束の間
窓枠が区切って下さった一人分の西日は
結局は目の前で
床へ、床へ、沈んでいった
星といえばビー玉の中に
赤く青く黄色く、在 ....
大きな街のお空には
本当の空は無いと言うのに
太陽が高く射す昼休み
呼吸をふーーと吐き出して
皆が窓を開けた
深呼吸する時間 一斉に
大きな街のお空には
化学記号が飛んでい ....
人の多い交差点
一人佇む僕の影に
誰かがふと足を踏み入れる
それはまるで
心の中に入り込むように
さりげなくも図々しいもので
だからこそ思う事は
それが例えば誰かじゃなくて
僕の望む君 ....
いつのことでしたか
忘れてしまいましたが
絶句したその無言の先に
あの日がちらついていたのは、確かです
日溜りの微笑む
静けさのなか
涙は花ひそめ
無表情に泣いていました
それはか ....
冷えた夜が
低地を這っている
これもまたもうひとつの
忘れられた夜であろうか
――あの人は
貴重な生を召し上がりました
何ひとつ 言い残すことはなく
混沌の角度で経験は薄まってゆく
....
絶望さえ透けていく
初夏の陽射しのもと
雲へ手をふり
永遠する未完の涙
生れ立ての傷が
{ルビ鎖状=さじょう}に結晶し
{ルビ手鞠唄=てまりうた}に弾む午後
幼き声の純粋にひそむ響き ....
見たことのある大人の
さらりとしたもうお帰りなさいの言葉が
肌の羞恥で
ぽた、
と、密かに融けた夕方5時
ええ
子供はわざと赤
のち、黒でした、その速度を把握でき ....
発売まで指折り数えたCDを
ようやく手にして
するするセロファンを
むいているときのときめきは
リンゴを倍速でむいているみたいで
ポンと
再生ボタンを押すと
さらに加速度を増して
....
先生
唇が、
ふるえてしまいます。
電線に
飛行機雲が斜線して
雨上りが地上をうっすらとはいでいきます
あの日
陽炎で生まれました
わたし
浮遊する
夢みるからだで透けていき
....
いきなり断言してしまうが、名作とは天然である。隅から隅まで計算しつくして書かれたものは、実は名作の名に値しない。何だか自分でも辟易するほど古典的な考え方でいやだなと思うのだが、いろいろ考えていくと、 ....
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77