北の先まで歩いて
呪いを解くにはことばを
刻まないといけないらしい
包丁を研ぐには暴言が必要で
持つ手には温もりが必要で
橋を渡るときに気づいたけれど
川は流れていないことに
歩くのは怖 ....
いのちをつなぐものを希望と名づけよう
希望のべつの名を祈りと名づけよう
祈りは清流にすまう虫のごとくに
こころの闇に明滅し続けるのもの
祈りの幼虫が水中にカワニナをくらう
肉食の異形 ....
湯舟につかった
踵が泣きそうなため息をつく
どうしたのと
心配顔する膝小僧
そうだね、
今日も疲れたね
ふくらはぎは黙り ....
今日もとりあえず元気で行こうハイタッチ
いつも優しいばくだんを作っている
そんなひとが好きだ
ひらきなおれない中途半端な言い訳
落札できまる交換価値とは無縁ではなくても
それでもやっぱり ....
鶏もも肉の照り焼きを焦がしてしまった
照りというか焦げですな
完璧でないことを
受け入れなきゃいけない
老いた父母などにまでは手は及ばない
人のこととなるともうどうしようもない
....
生きてるだけでいいんだよと
生命の最小域じゃないですか
そんなに追い詰められんなよと
人間関係は領地の奪い合い
誰からも奪わず、奪われて
あとはこの部屋の一隅のみ
生きてるだけの生 ....
建前と本音の分裂がこの奇妙な矛盾を生んだ
建前は対外重視の屈従外交に殉ずる
本音は俺らすげ~の示威行為に耽る
実際に凄ければいいのだが
凄くないんだ~
が、凄いのは僕個人であった
....
揺れるピアスに
あなたがそっと
触れた瞬間に走る
甘やかな
衝動に
つぶやいた その一言
誰かれかまわず愛すのはやめて
そんなに分け与えるのはよして
私を最後の人にして ....
僕の日本地図はけっこうゆがんでいる
大陸文化を隔てた極東の地理的条件
喪失するすべもうしなわれた子守歌
僕の世界地図はききなれない地名でみたされ
国際情勢は新聞の活字とTVのアナウンス
....
その灯りが灯ることの全てがわたしの全てで、公園に腰かけたり、元気そうな集団を避けて歩いたり、目と耳と鼻と口と手と生き物と複数の壁、この部屋での暮らしが綺麗な明るさになれない。
マンションの知らな ....
僕は拷問の憂き目を知っている
反抗しないから悪くなったと言われても
扇動し南無三なことになったら
親御さんに申し訳が立たないんですよ
心は簡単に折れる
ポッキーよりもたやすく
....
月並みな幸福も
月並みな不幸も
みんなは興味がないから
今日も話を盛る
月並みな嘘なら
誰にもばれないからいいさ
みんなは会釈して
わたしを見守ってくれている
そのうちに味 ....
生きていることなんて、どうってことないと思う。
なつかしい景色の足跡を辿ると、
遠くの心は満たされていく。
眼の奥で流れ続ける言葉は、わたしの一部に過ぎなかった。
言葉ではない物質がこ ....
離島に夏がくる
隣の猫は人間になりかかってきた
この忌まわしい季節には
神経節細胞の痛みだけが秩序ある情報なのだ
ぼくの離島は温存されて
真夜中に大陸とひそかに交信する
部屋のAI ....
うまいこと言いたいとか
いらんこと言わないとか
あまり気にしなくなって
うまいこと言えないし
いらんこと言っちゃうし
自由でいいんじゃないかな
各々そんな感じだから
当然まとまら ....
言いたいことを言えぬまま死ぬんじゃなくて
言いたいことを言える
来る気配もないそんな時の階層を密やかに待ちながら
私は死ぬのでしょう
叫びたいこと
伝えたいこと
渡したいこと
あ ....
胆力を発揮せよとはご無体な。胆石できそな僕が言っても
こやつらがもう泣かなくていいように、道化てみたらよけい怖いと
健常者と共に行きたいどこまでも、わけわからんのがとにかくいやで
選 ....
青く照らされた砂浜に
微かに残した面影は
君が海へ帰る時
足跡は波間に消えて
涙だけが満ちてくる
「私を探さないで」
砕けた波飛沫は呟いた
寄せては帰る海の鼓動
君への ....
ペットボトルの口が開いて
水蒸気舞い上がればイルカが波に乗ってやってくる
街のカラスが餌を探す
幼虫は産声を上げるその時をじっと待っている
怪しくもない人々が夜を擽るのは 塵
....
かくれんぼでもないのに
おしいれに入る
大人になった僕だって
泣きたい日はあるから
おしいれに入る
布団の柔らかい重み
心地よい苦しさ
そのうち僕は
安心して眠ってしまう
....
海賊は正規軍には勝てない
どんなに強くても
強い海賊が正規軍に登用されて
さらに強くなる場合もある
昔のカリブ海では
中国では上下ひっくり返ることも
ままあったようなので
その限 ....
そこの誰でもが背びれや尾びれをもっている
幼年時さかなだっただけなのだけれどね
そこの誰でもが哀しみを抱いている
それは
すでに干物になるまで
のこるのものかもしれないんだが
....
目がいいというのは
単に視力のことだけではなく
同じものを見ていても
目に留まらなかったりすると
目が悪いのだと
たとえば一枚のスクショからいろいろなものが
見て取れるのだが
流行り ....
靴を脱いだ時
紐を解いてみた
靴ひもは結んだままだった
靴ベラで無理やり履いて
踵を押さえて無理やり脱いで
足を守ってくれる大切な靴
ストレスをか ....
夕焼けが寝転んでいるニ年前
何も知らないから知らない場所にいる
俯くと五臓六腑も俯いた
夕暮れが立ち上がるまで影と待つ
かつてこの星には100万の
小世界があった
1億の集落と1千の都市国家
黄金の旗がなびくここちよい風が
すべてのサーガがいまでも生きている
きみは英雄でもなくパーティーもなく
大河 ....
ちょっと寂しいけれど熱っぽい宇宙
ワンダークールな時間の始原をゆめみる
いつも隙間だけで君を愛せたのだろうか
それともそれはただの幻想だったの
いつも反論がむなしいように
そのひとが ....
こんな時間に目が覚めて
どんな時間?
草木も眠る丑三つ時に
いずれ一人になる
その時にこんな夜に
また荒廃体験に襲われぬとも限らない
その時が来たら
自分の持 ....
謙虚に考える人たちがいる
SNSの主導権の取り合いなどからは一線を退いて
学者とはこんな感じか
しかしそれらも無傷ではいられない
知らないことは大事じゃないから知らないのだと
知るべきこ ....
<ある夜に>
安らぎとは無関係な温かい鎖が静止の糸を引く
生煮えの記憶が歌いずるずる亀裂が揺れる
左耳から右耳へ爆音が通り闇は大きく息を吐く
<鳩が一羽>
鳩が四 ....
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