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今できないことは
昨日が持って行ったこと
原野に広がる記憶の扉が
ひとつずつ倒れていく
手を結んだはずの言葉たち
千切れ闇に飲み込まれる
飛び立った蝶々は
行方を失い虚空を舞 ....
たった今生まれたかのようだ
突然目の前の視界が開けた
病室では看護師たちが忙しそうに動く
時刻を尋ねると夜の7時半
7時半か…心でぼんやり呟いた
朝8時半に徒歩で病室を出た
手 ....
其処程には
私の死体がいるはずだ
同時に生まれてる
其処程は
空より広く海より深い
死体は時間の階段を昇る
其処程とは
もう横町を曲がったあたり
私と抱き合った瞬間
彼は ....
視界の先
点滅する赤信号
落ちていく雨粒たちが光る
黒い道路に飛沫が跳ね
倒れ無残に横たわる傘
ライトに無言の姿を晒す
タイヤは容赦なく泥を投げ
道路の闇へと消えていく
も ....
壁を叩いて何でも喋れ
と耳を当ててみたが
押入の二段目に上がって
寝そべってみたが
時計を裏返しにして
息を吹きかけてみたが
鍵括弧の付いている
ここだけの話だらけが
....
青く照らされた砂浜に
微かに残した面影は
君が海へ帰る時
足跡は波間に消えて
涙だけが満ちてくる
「私を探さないで」
砕けた波飛沫は呟いた
寄せては帰る海の鼓動
君への ....
<ある夜に>
安らぎとは無関係な温かい鎖が静止の糸を引く
生煮えの記憶が歌いずるずる亀裂が揺れる
左耳から右耳へ爆音が通り闇は大きく息を吐く
<鳩が一羽>
鳩が四 ....
立ち寄った風に
何処に行くのか尋ねた
風はそれには答えず
貴方は何処に行くのか尋ねた
何処にも行かないよ
と私は口ごもった
全くの戯言だと
中途で気付いたからだ
風は別 ....
去る者は追わない
留まることも知らない
たとえ自己であっても
心の空白は埋めない
ただ眺めるのみ
朽ち果てた窓辺に
降って行く証しに
行き着く叫びは無い
....