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想い出したように
鳴る
風鈴が
躊躇うように
あなたが
幼い頃の話をする時のように
鳴る
風鈴が
逃げる風を追い駆けようとして
諦めたように
鳴る
あなた ....
いつまでも
想い出にならない夏
痛くもなく
ただ痺れていただけの夏
ぽとり
昨日の端から
呆気なく零れ落ちたわたしは
黒い服を着せられ
どこかが
痛いような顔 ....
角度に実直に
ながれる水
起伏に忠実に
うねる水
感情に従順に
あふれる水
代謝に一途に
したたる水
速さを競って
にごる水
優しさに慣れて
とどこおる水
正しさを嫌っ ....
止まり木を探している
橋の上から
水面を眺めながら
欠け始めた月に
追い詰められながら
止まり木を探している
カフェの二階で
雑踏を読みながら
沈みかけた街に
....
逃げ出したくて
吐いた嘘を
骨は知らない
抗いたくて
千切った縁を
骨は知らない
痛んで
悦んで
肉がくたびれていくのを
誤魔化して
宥めすかして
心がたるんでい ....
ゆっくり上がって
ゆっくり下りる
破綻のない円を
描き続ける密室の中
あなたと向かい合った
あなたが指差す方向に
ひきつった笑顔を向けながら
まだ信じることが下手だったわ ....