降りしきる、雨と濃霧の街頭で 
足元に、小銭の入った空き缶置いて 
唄う少女の頬に雨は{ルビ滴=したた}り 
過ぎゆく群に、愛を囁く 

今宵も巴里の夜は更けて 
洋燈の、スポットライトの ....
お風呂上がりで椅子に座る 
目の見えないハルさんが 
ドライヤーで髪を乾かす僕に、言いました。 

「新しい靴もねぇ、 
 毎日々々撫でてやったら 
 だんだん馴染んで来るんだよ・・・」  ....
自宅の階段で転び 
{ルビ痣=あざ}で膨れた顔になり 
10日ぶりにデイサービスに来た 
杖をつく、お婆さん 

手のひらの神経が痛み 
昨日の深夜に目が覚めて 
寝不足のままデイサービ ....
五十歳で転職した新人さんが 
仕事の後に、眉を八の字にして 
僕のところにやって来て 
日々の不安を、打ち明けた。 

物書き志望でベテラン介護士の僕と 
人生をやり直そうとしている彼が  ....
いつも背後で見守っている 
姿の無い彫刻家は 
私という素材の上辺を削ろうと 
鋭く光る刃を、手にしている。 

身を削る、痛みを越えて 
素材の中から彫り出され 
姿をあらわす、人の像 ....
日を浴びて 
風にゆらめく木々の葉は 
風呂に沈んだ我に囁く 


まっ青な、あぁあまりにも、まっ青な 
仰いだ空を、胸に写さん。 


旅先の、風呂の{ルビ水面=みなも}に ....
長い間一人で頭を抱え込み 
開けなかった扉を 
無心で抉じ開け 
小さい一歩を、踏み出したら 

日々一緒に働く仲間達や 
苦手だった上司まで 
不思議なほどに歓んで 
幾人も僕に、声 ....
愛という名の幸せは 
子供の頃の玩具みたいに 
容易く手には、入らない。 

枕辺を涙で濡らした、明け方に 
開いた窓の隙間から 
朝の風はすでに、カーテンをそよがせ 

どしゃ降りの ....
試合前の練習中 
選手たちにノックしようとしたら 
突然彼は胸を抑え、 
バットを握ったまま
グランドに倒れた 

担架に寝かされ、救急車で運ばれた彼を 
原監督が、チームメートが、ファ ....
この世という巨きな檻で 
誰もがひとつの「非常口」を探している 
それぞれの足首に鎖でつながれた 
鉛の玉を、引き摺りながら 

背後から迫る炎の手の、一歩先を 
脇目も振らずまっしぐらに ....
長い間、咲かなかった 
植木鉢のクンシランが数年ぶりに 
草の両腕をひろげ 
橙色の花々を、開き始めた。 

レースのカーテン越しに注がれる 
日のひかりの内に、今はもういない
在りし日 ....
夕暮れの空に 
時折姿をあらわす 
薄っすらと光を帯びた手 

夕凪の風の吹くまま 
まっしろな明日の頁に 
一つの物語は綴られるだろう 

私は、一本の鉛筆の姿で 
夕空を見上げ、 ....
四方を壁に塞がれた夜   
蹲ったまま顔を上げれば 
億光年に瞬く星が、ひとつ 
何かを僕に、囁いた。 

 
こうして休日のベランダに佇み 
干された布団と並びながら 
{ルビ麗=うら}らかな春の日射しを浴びていると 
日頃、誰かを憎みそうな闇の心を 
布団と一緒に、殺菌してほしいと思う。 
わたし自らが灯となる時 
周囲の人の瞳の内に 
不思議なほど無数の灯が 
同時に ぱっ と、ともります。 
長い間、入院している痩せた男は 
夕暮れ時の屋上で 
かつて自分が働いていた 
スモッグの乳色に覆われた 
街の広がりを、眺める。 

見下ろす玄関には今日も 
無数の人々が蟻の姿で 
 ....
塀の上で危なっかしく
好奇心の瞳で這っていた 
三才の私 

新しい家の
まっさらな床を両手で撫でた 
五才の私 

学校という未知の国へ 
鼓動を、高鳴らせていた 
7才の私 
 ....
忙しい日々のレールを脱線するように 
不意に訪れた長い休暇 
病室のベッドに横たわる僕は 
窓外に立つ 
独りの樹の葉群を躍らせる 
風、を視ていた。 

( きらきらと、協奏曲の奏でる ....
おれは一体、何処へ往く? 
別れを千切って、歩みゆく 
空っぽの缶からを 
虚ろな片手で、握りしめ 

おれは一体、何処へ往く? 
愛しい花を置き去りに 
ひとつの小石を 
震える片手 ....
 皆さんこんにちは。昨日の「黄色の日」は、とても楽しいひと時で、それぞれの詩と朗読と会話が近況報告になるような同窓会の雰囲気で、美味い酒を飲みつつ僕もふだんの「はっとりん」らしい自分が回復されるのを感 .... 世界を見渡す望楼で、彼は何を夢見るか? 
広がる砂漠に現れる蜃気楼の都市で、夢の 
無い、のっぺらぼうの人々の葬列はやがて 
世界の淵の谷底へ、滑り落ちてゆく。   

( 世界は今、まな板 ....
夕餉を終えた書斎にて、らんぷの明かり 
を一つ灯せば、壊れて永い眠りについた 
テレビ画面に映る頬のこけた自画像が、 
見知らぬ人の顔をする(地球という惑星
に来てから、もうどれ程の時間の川が ....
雀等が、音符になって、弾んでる。 
米の蒔かれた、日向の国で。 

    
虚ろな瞳をした、縫い包みの少女。力無
く、窓辺に凭れて。部屋のドアを開いて
入って来た少年は両手にかかえ、胸の蓋
を開いた暗闇の燭台に、マッチの灯をと
もしてそっと、窓辺に戻す。

窓外に ....
夜道に伸びているのは 
棒っきれの姿で立ち尽くす 
私自身の、影でした。 

深夜の川のせせらぎだけが 
無心のうたを囁きながら 
何処か見知らぬ明日の方へ 
流れてゆくのでした 

 ....
一日のつとめを終えた 
きゅうすと、湯呑みがふたつ 
流しの隅の入れ物に 
ひっそりと、身を横たえている。 

時計の針は〇時を廻り 
初老の夫婦はあどけない寝顔で 
薄っすら口を開けな ....
湯呑みというのは 
自らの役を心得て 
いつ出番が来てもいいように 
迷いの無い姿で 
すっとそこに、立っている。  
踊るように、街を歩くひとがいた。 
両手首に輪を嵌めた、杖をつきながら。 

僕の肩越しに密かな風をきり 
横切った、彼の背中はおそらく求めていない  
これっぽっちの、同情も。 

不 ....
僕の履いてる靴の踵は 
ぽっかり穴が、空いており 

電車待ちのベンチや 
仕事帰りのファミレスで 
片足脱いでは 
いつも小石を、地に落とす。 

給料日が来るたびに 
「今月こそ ....
机の上に、一つの箱がある。 
密かに胸の高鳴るまま 
蓋を開けると小人になった、
星の王子様が僕を見上げて 

「ほんとうに大事なものは、目に見えない」 

と呟いてから
煙になって、 ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
ピアフの夢 自由詩010/5/10 22:29
靴と嫁 自由詩610/4/28 23:41
今日という日の、カルカッタ。 自由詩1+10/4/28 23:31
珈琲たいむ 自由詩7*10/4/27 23:44
青年の像 自由詩3*10/4/27 23:24
高井戸温泉にて 自由詩3*10/4/26 23:28
男の背中 自由詩210/4/9 15:48
地平の太陽 自由詩210/4/9 15:40
殉職した野球人に捧ぐ 自由詩510/4/9 15:27
非常口 自由詩610/3/24 23:19
彼岸の花 自由詩710/3/20 17:35
夕空の手 自由詩310/3/14 22:01
星の言葉 自由詩210/3/14 21:33
春のベランダ 自由詩510/3/14 21:25
灯を、ともす。 自由詩610/3/9 22:02
夕景 ー病院の屋上からー 自由詩110/3/9 21:45
走馬灯の夢 自由詩310/3/9 21:24
海の音楽 自由詩910/3/7 18:30
紅い花 自由詩310/3/7 18:14
詩人達の新たな旅路に向けて 〜「黄色の日」の印象的な詩のひと ...散文(批評 ...110/3/7 12:26
塔守の夢自由詩210/3/2 0:15
椿の顔 自由詩010/3/2 0:05
日向の国 自由詩510/3/1 23:51
夜明け自由詩210/2/20 22:45
月夜の道 自由詩6*10/2/16 22:56
結婚記念日 自由詩410/2/14 23:03
湯呑み 自由詩4*10/2/14 22:53
踊り歩くひと 自由詩9*10/2/8 23:52
穴の空いた靴 自由詩810/2/4 19:59
贈りもの自由詩4*10/2/4 19:23

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