非常口 
服部 剛

この世という巨きな檻で 
誰もがひとつの「非常口」を探している 
それぞれの足首に鎖でつながれた 
鉛の玉を、引き摺りながら 

背後から迫る炎の手の、一歩先を 
脇目も振らずまっしぐらに 
駆ける人よ 

暗闇の遠くに見える 
「ひかりの扉」の向こうから 
地上の天の面影で、一輪すっと立っている 
花のまぼろしは 
ゆっくりと唇を開いて 

生まれる前の約束を、囁くように 
世界に一人の 
あなたの名前を、呼んでいる 





自由詩 非常口  Copyright 服部 剛 2010-03-24 23:19:14
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