幻の建築の下で、給仕人等は白い手袋を 
はめる。幻の建築は夕陽に染まり、地面 
に怪しい影を伸ばす彼等が白い手袋で持
つ一つの銀盆にのるリボンを結んだ七面
鳥が焼けた黒い姿で、一声啼いた(その ....
久しぶりの実家へ歩く道の途中で 
幼い頃からあったガソリンスタンドが 
跡形も無い、さら地になっていた 

少年時代にキャッチボールをした 
友達の古い家と庭を塗り潰すように
まあたらしい ....
夜道にぽつり 
焼鳥屋の赤提灯が、揺れて 
暗がりの地面に映る 
丸い灯りの場も、揺れて 

濁った世間の暗闇で 
この両肩にずっしり乗せられたものに 
膝のくず折れそうな、夜 

 ....
仕事帰りに寄るレストランで 
よく頼むキャベツの千切り 
日によっていつも 
ドレッシングのかけ具合が違う 

毎日同じように見えるとしても  
目の前にあるのは 
一生に一 ....
在りし日の詩人が仲間等と 
文学の夢を語った赤煉瓦のCafeで 
独り一篇の詩を綴るひと時 

当時のマスターが 
詩人へ送った葉書のコピーと
花束を捧ぐ想いを込めた詩を
重ねて
鞄に ....
こころの中に 
一つの家を建てよう 

どんなに激しい嵐にも 
どんなに揺れる地震にも 
決して消えることの無い、一つの家を 

地面に膝を落とす、日も 
涙の絞り落ちる、夜も  
 ....
父親の圧迫骨折が悪化して 
日々の介護の不安に 
瞳を曇らせたまま 
嫁さんが布団に入った深夜に 

密かな寝息をたてはじめた寝顔を 
そっとみつめて、心配事の全てを
癒してあげたいと思 ....
一日忙しく働いた後 
たった五分でも本を読めば 
のんべんだらりと過ごしつつ 
一日一冊本を読むより 
開いた頁の一行が輝くかもしれない 

毎日なんにも悩まずに 
呆けた顔をしてるより ....
古書店で偶然みつけた 
昭和二十一年の「 四季 」という詩誌の 
頁を開くと、誰かの髪の毛が一本 
栞になって挟まれていた 

「 すて椅子 」という題の詩の中で 
公園に置かれたすて椅子 ....
今朝のブレックファーストで 
身籠った妻は、{ルビ忙=せわ}しい{ルビ最中=さなか}に 
かしゅっと一つの卵を割って 
暖かいベーコンエッグを 
僕の部屋まで、運んでくれた 

Golde ....
額縁に収まる 
向日葵の絵は 
無数に{ルビ煌=きらめ}く 
ひかりの種子を、{ルビ孕=はら}んでいた 

頬のやつれた青年よ 
いのちの歓びを高らかに 
空へと歌う 
向日葵の絵を、 ....
ふせていた目をふと、上げた 
窓外の庭に 
今年もわすれな草の花々は 
空の太陽に向けて 
青い小さな笑顔達を咲かせている 

去年の今頃は
杖をつき、背中を曲げて 
わすれな草の花々 ....
昨夜も妻は寂しがり屋な夫の手を 
両手で包み 
その指の温もりはすでに 
この不器用な手をゆるしていた・・・ 

翌日、結婚してから初めて、傷心の街を歩いた。 
もうだいぶ昔の春に砕け散っ ....
 葬儀場では僧侶がお経を唱え 
 遺された息子と母親はじっと 
 額縁から微笑むひとに 
 何かを、語りかけていた 

 お焼香の短い列に 
 思いの他早く僕は腰を上げ 
 額縁から微笑 ....
ある日のデイサービス送迎車内にて 
ハンドルを握る所長は 
助手で乗るパート職員に、愚痴をこぼした 

「最近、パートのハットリって奴が 
 妙に俺にたてつくんだよ 
 何であいつがあんな ....
道の遠くから 
何やら呟き続ける男が歩いて来る 
すれ違う瞬間 

「答は{ルビ空=くう}だ、答は{ルビ空=くう}」 

繰り返す呟きは背後に小さくなってゆき 
遠ざかる彼の背なかも小さ ....
私の脳内で指揮者は独り、無人の観客席
の闇に向かって、手にした棒を振ってい
ます。青く浮き出た血管の手がくるり、
棒を一振りすれば、観客席の暗闇に、幼
年期の幸福のしゃぼんが一つ、二振りす
 ....
これからの僕は 
嫌な上司のみみちい小言を、撥ね返す。 
これからの僕は 
苦手な注射も唇結んで、ぐっと耐える。 

どうやら親父になるらしい 
僕は自分の弱さを抱き締めながら 
日常の ....
落合選手は、凄い。 
原選手の引退試合でしっかりと  
糸を引くようなセンター前ヒットを、打った。 
(そのバットは刀の光で、瞬いた) 

王選手は、凄い。 
刀で宙吊りの紙を 
切り裂 ....
遮断機の棒が塞いだ 
目の前を列車は瞬く間に走り抜け 
突風に泳ぐ前髪は、唄い出す 

{ルビ焦=じ}らすように長い間道を塞ぐ 
赤ランプの音と{ルビ邪=よこしま}な棒が上がる迄 

 ....
原爆が、長崎の教会の前に立つ 
マリア像の首を、吹き飛ばした。 

ミサイルで、バーミヤンの崖に身を隠す 
大仏の顔が、砕け散った。  

暴力の手に 
顔の消えた後も 
マリア像と大 ....
仏像はいつも 
右の掌をやわらかな皿にして 
何かをはかっている 

左の掌を崩れない壁にして 
邪念を払っている 

日々の出来事に惑わされぬように 
同じ姿勢で私も、坐る。 

 ....
深夜一時すぎ 
スタンドの灯の下に 
原稿用紙を広げ 
私は夢の言葉を刻んでいる 

傍らの布団に 
聖母の面影で 
幸せそうに瞳を閉じる 
身ごもった妻よ 

バッヘルベルのカノ ....
金の光を体に帯びた 
釈迦の言葉を聴きながら 
緑の木々の下に坐る弟子達もすでに 
金の光を帯びていた 

夜の森の隅々にまで 
不思議な言葉は沁み渡り 
葉群の{ルビ詩=うた}も
森 ....
磯辺の岩に立ち、風に吹かれていた。 
僕の幻が、波上に輝く道を歩いていった。 
浜辺に坐る妻はじっと、目を細めていた。 

岩の上に立つ僕と 
海の上を往く僕は  
激しい春風に揺さぶられ ....
上野の美術館を出た帰り道 
焼芋屋の車が、目に入った。 

財布の懐が寒いので 
「半切りをひとつ」と言い 
小銭三枚をおじさんに手渡す 

紙袋からほっくり顔を出す 
焼芋をかじりな ....
 三月十一日・午後二時四十六分、彼はデイ
サービスの廊下でお婆さんと歩いていた。前
方の車椅子のお爺さんが「地震だ」と言った
次の瞬間、壁の絵は傾き、施設は揺さぶられ
る海上の船となっ ....
 今夜のチャリティ朗読会を終えた僕は、家路に着く夜遅い電車に乗りながら、今夜Ben’sCafeに皆で集った「チャリティ朗読会」の意味を、感じていました。
 朗読会を終えて、ジュテーム北村さんがかた ....
いのちの綱を両手で握り、彼は崖を登る。 
時に静かな装いで彼は足場に佇む。ふいに
見下ろす下界の村はもう、{ルビ生=なま}の地図になっ
ていた(少年の日「夢」という文字を刻ん 
だ丸石が背後の ....
自分の素顔を忘れそうな日は 
林の中へ吸い込まれ 
木陰に腰を下ろし 
正午の空に輝く太陽を仰ぐ 

まっ青な空に向かって張り巡らせる 
桜の枝先に 
春をずっと待ちながら 
全身にひ ....
服部 剛(2012)
タイトル カテゴリ Point 日付
鳥の霊 自由詩011/6/4 20:26
空からの手紙 自由詩411/5/31 23:59
夜の赤提灯 自由詩211/5/31 23:57
明日の音楽 自由詩511/5/24 23:59
詩人の夢 ー神保町・ラドリオにてー  自由詩411/5/24 23:59
こころの家 自由詩711/5/14 23:55
夫婦まじしゃん 自由詩311/5/14 23:47
夢の種 自由詩611/5/9 23:56
髪の栞 自由詩411/5/9 23:48
Golden Egg 自由詩311/5/7 23:59
太陽の花 自由詩211/5/7 23:53
わすれな草 自由詩311/5/5 7:19
銀の指輪 自由詩211/4/20 0:08
いのちの灯 自由詩311/4/18 23:41
こだまでしょうか?ー所長とパート職員の門答ー 自由詩411/4/13 23:58
壺の音 自由詩411/4/12 23:59
音楽界の夢 自由詩311/4/12 23:50
新米親父の詩 ー胎児の合図ー 自由詩611/4/10 23:38
背番号「8」 自由詩211/4/10 23:08
幕開けの詩 自由詩111/4/6 1:10
首の無い人 自由詩011/4/6 0:59
はかる 自由詩211/3/28 23:48
新しい家族 自由詩4*11/3/27 0:05
釈迦の夢 自由詩211/3/24 21:59
夢の核心 自由詩111/3/24 21:36
芋と言葉 自由詩8*11/3/22 23:55
日の丸の旗 ーSAVE JAPANー 自由詩411/3/17 22:41
チャリティ朗読会の夜散文(批評 ...311/3/14 2:16
今を登る 自由詩411/3/9 11:15
春の夢 自由詩311/2/24 20:20

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