一輪の花がゆっくりと、蕾を開く、宵の夢 
創造のわざは、私のなかに働く

私を支える茎は背骨、密かな光合成をとめず
今日もわずかに、背丈を伸ばそうとしている

たとえまだ、日の目を ....
庭で夕空を仰いでいると
足下の、少し離れた場所が 
ふいに がさっ と鳴った

古い柿の木から
枯葉の吹き溜まりに
実がひとつ、落ちたのだ

よく熟れた柿は
ほんのりと夕陽に染まり
 ....
夕暮の秋風に吹かれ
すすき野原が{ルビ靡=なび}いている

僕は風に逆らう
なのに遠い夕空は優しい

道は何処までも下り
またどこまでも上り

やがて雲は
夕陽の顔を隠すだろう
 ....
送信の印を、押せば
一瞬で相手に届く 
メールの文面

手紙の文字なら 
その人らしさを表わす一字にも
一つの心臓が、宿るらしい 

令和3年にもなれば
ポケットから取り出した
長 ....
ぽたり、汗は落ち、土に浸みた
しゃがんで草をむしる
炎天下の庭で

ペットボトルの水は
すでに
ぬるま湯 

あとひと息
草の束を
根こそぎ、引き抜いた

土の中がピカッと光っ ....
もし、汝のこころが
本気なら
少々の障壁はもろともせずに

なんのこれしき

{ルビ空=くう}へ向かって、越えてゆく
夏の終わりの港で
堤防にひとり腰かけていた

(このまま海をずっとゆけば
 世界の何処へでも辿り着ける) と

ひとり言は港に置いて
堤防から下りた僕は
歩き始める

やがて秋めい ....
{ルビ古=いにしえ}の詩を{ルビ嗜=たしな}みつつ 
酒を呑み
体なきひと、我に語らん
寺の庭の隅にある
竹筒から……石の器へ
滴る水がしずかにあふれている

そよ風が、頬を撫でる
温かな抹茶を、啜る

僕は今 幸せなのかもしれない
女のお尻は男よりも丸い
僕に耐えられぬ、痛みをも知るひとよ
あのなかにはもしや
青い小さな惑星が回っているやもしれぬ
旅先の温泉の
露天風呂から上がり
室内の入口で
横を向くと
だだっ広い温泉プールがあった


どぼん、と入り
ぴょんと跳ねれば、ふわり
もうひとつ跳ねれば、またふわり
さらに跳ねれ ....
この街に
人はたくさんいるのに
なぜ、ふいに
ぽつんと独りいるのだろう

読者よ 友よ
この紙の向こう側にいるきみよ
わたしの音の無い声は
その耳に届くだろうか?

願わくば
今 ....
すうっと細く、立っている
南天の赤い実たちの中に
一人 空のお日様を
小さく映すものがいた

かわいいね

っていうと、風にゆれ
緑の葉たちも、風にゆれ
ひそやかに舞う
互いのここ ....
     少年と少女
     青年と恋人
  おじちゃんとおばちゃん

       
       今

 
 世界のいたる場所から聴こえる
     くちづけの音に
     ....
久々にひとり旅で、箱根の宿の土産コーナーに
指でたたくとんとん相撲があった
――九才のダウン症児とやったら 
  お相撲さんをつまんで、ポイだなぁ…

翌日、小田原城の中には
玩具の刀がキ ....
或る映画ほど、日々に笑いもなく
或る映画ほど、日々に涙もなく
――ならばこの世は、何処ですか?
――悪女に聖母の宿る部屋 
トイレットペ-パーの残りを
使いきり、ちんと鼻をかむ 

残った芯に
印刷された ありがとうございます
の文字に
僕も呟く ありがとう

最近は鼻づまりがひどくて
なかなか寝つけずし ....
わなわなふるえる
ひびの、よろこびかなしみよ
それがこの世のさだめなら
汝のコインに息を吹きかけ 

明日の行方へ、投げてやれ!

くるくると…裏表見せる
放物線のその先は
道 ....
晩酌は水割りのグラスを手に
ピスタチオを口に含み
わった殻を小皿へ落とせば 
ちりん、と鳴る  

世界のあちらこちらに
美しい雑音たちは
今も
音を鳴らしている

さあ明日も ....
シーンを変えろ

問題の周囲は幻で
{ルビ那由多=なゆた}の日々の中心点は
いつも自分自身 

いたずらにふり回される前に
指よ、鍵盤の上を踊れ 

瞬時を歩む、ジャズマンの手のよう ....
あなたの形見のランプは、魂の姿に似て
夜になると書斎の椅子に腰かける
僕の仕事を照らし出す

* * *

あの日
この世の時間と空間を離れ
自らのからだを脱いだあなた ....
川の向こう側にある
瓦屋根の
民家の壁に、ひとつ
白いマークがありました

それは鈴の姿をしており
風が吹くと
小さな余白の中から
音のない音が聴こえます

 ちりりん ちりりん  ....
仕事を終えた電車の中で
ついポケットから取り出すスマホの画面に
誰かからメッセージはないかと、探す

家に着いて
ポストの蓋を開けては
誰かから便りはないかと、探す

忘れた頃に届く
 ....
机の上に延びる
湯呑みの影が
お地蔵さんの姿に視える、夜

――もしや

目に映る風景の
あちらこちらに宿る
心というものか
今日もふらふら
音のない家へ帰る男の背中は
言葉にならない寂しさを{ルビ醸=かも}し出す  

〈人生はひまつぶし〉と嘆く男の一日は
二十四時間ではなく 
長さの計れぬ夜なのだ 

こ ....
令和三年・一月三日 
三が日の間に息子孝行しようと思い 
{ルビ周=しゅう}の小さな手を引いて
川沿いの道をずんずん、歩く

野球場の芝生を
解放していたので
そのまま手を引いて
ずん ....
この街には
音のない叫びが無数に隠れ
僕の頼りない手に、負えない 

渋谷・道玄坂の夜
場末の路地に
家のない男がふらり…ふらり
独りの娼婦の足音が、通り過ぎ 
酔いどれた僕の足音が、 ....
岩には、顔が隠れている
口を開け、叫ぶ顔は恐そうだが
岩の本人は、そうでもなく
案外あかるい、無音の呼び声なのだ

岩と岩のつらなる下に
崩れた岩の口元から、源泉の湯は流れ
心身を温める ....
線路は明日へ、延びてゆく
明日の線路は、過去へ至り
過去はまた道の続きへ

二度とない今日の日を経て
旅の列車は走り始める

恋に傷んだ、町を過ぎ
日々の重さに憂う、町を過ぎ
 ....
僕の存在理由は nothing
君の存在理由も nothing

そう思っていた
僕の頭の空洞に 風は吹き 
風は滝のように体内の通路を下り
魂の器の底に渦巻けば
遠い記憶は……甦る 
 ....
服部 剛(2098)
タイトル カテゴリ Point 日付
自由詩721/12/2 0:35
柿の知らせ自由詩10*21/11/18 23:17
すすき野原自由詩221/10/13 18:20
メール考自由詩221/10/13 18:17
小さな太陽自由詩321/10/13 18:08
自由詩121/9/20 21:17
晩夏の夢自由詩121/9/20 21:15
或る夜の対話自由詩121/9/20 21:11
自由詩121/9/3 0:25
ある夜のメルヘン自由詩721/9/3 0:22
温泉プール自由詩421/7/22 20:55
自由詩421/7/12 0:00
南天ノ声自由詩221/7/11 23:59
石庭自由詩321/7/7 16:18
日々の土産自由詩321/7/4 23:59
田舎司祭の伝言自由詩2*21/7/4 23:58
ありがたや自由詩421/6/7 20:39
道しるべ自由詩321/5/28 0:10
日々の音楽自由詩121/3/31 18:44
ジャズマンの指自由詩321/3/11 20:39
風の吹く午後自由詩321/3/6 22:47
鈴の音自由詩021/3/2 19:22
風を待つ自由詩221/2/2 18:32
ひと影自由詩721/1/24 23:53
夜の信号自由詩321/1/20 18:49
野球場の夢自由詩421/1/7 20:19
Slow Boat自由詩320/12/30 23:19
岩の顔自由詩220/12/10 20:36
「車窓」自由詩320/12/5 21:34
life for a reason自由詩420/11/19 19:21

Home 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 
ダウンロード
ダウンロードされるのはこのページの分(「蕾」から「life for a reason」まで)だけです。
うまくダウンロードできない場合は Windows:右クリックして保存 Mac:コントロールキー+クリック で保存してください。
0.6sec.