伊東の老舗・東海館で 
和室の窓外に、ゆらめく川の{ルビ水面=みなも}を 
一羽の白鷺が横切った 

一枚の枯葉が今 
枝先を離れ、ゆらめく川の水面へ 
身を{ルビ翻=ひるがえ}し宙を舞う ....
暗がりの映画館で 
白黒のスクリーンには 
だぶだぶの燕尾服に
しるくはっとのチャップリン 

ふらりと現れた酔っ払いと 
ふとしたことから口論になり 
胸ぐらつかみ、胸押しあい、もつれ ....
今日という一日に数え切れない
(ありがとう)が、隠れている。  

よく晴れた日の夜空に 
いつのまにか姿を現す 
あの星々のように―― 
石巻の仮設住宅に住む 
Tさんに新年の電話をした 

「あけましておめでとうございます 
 今年もよろしくお願いします  」 

「いよいよ来月から 
 津波に流された場所に、もう一度  ....
ある日、届いた封筒から取り出した紙は 
「わんニャン展」のお知らせで 
三日後にみなとみらいの地区センターの 
展示会場に入るや否や 
平日の人もまばらな空間に 
{ルビ木霊=こだま}する… ....
無精者ゆえに 
手の爪は時折切っても 
足の爪はしばらくほったらかしで 
気づくとひと月過ぎていた  

風呂あがりの軟い爪を 
ぱち、ぱち、と 
広げた新聞紙に、落とす。 
(これを ....
箱のカバーから、背表紙を指で摘み
中身の本を取り出して  
カバーは向かいの空席の、あちらに 
中身の本は目線の下の、こちらに 
置いてみる 

いつか人が(体を脱ぐ)のは 
こういうこ ....
蟻は匂いのある方へ往く   
一瞬、静止して 
触角をぴくり震わせ 
再び――無心に進む
 
(黒い背に小さな太陽を映して)

日常にふと佇む、僕も 
蟻の心で 
何かを受信しようと ....
ある人は白隠禅師の絵を観て、呟いた。 
「ルオーが観たら、何と言うだろう」 

河童のように禿げた頭と 
あばら骨の浮き出た体で 
髭ぼうぼうのお釈迦様 

美術館の空間で 
ひと ....
食卓に置かれた長方形の皿に 
横たわる、くろい目の秋刀魚は  
いつか世を去る 
私の象徴として、この口に入る 

   * 

日常の素朴な場面を絵に描いた 
一枚の布をバケツの ....
みつめれば、みつめるほど 
世界は語る本となり 
行間の道で草花の囁く秘密は 
旅人の背に、託される 
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
私の詩は
日々の呼吸のようなもの 

幾千万も繰り返す 
数え切れない吐息等が 
ふいに光るように 

今日も私は 
まっさらに広げた 
紙のスクリーンに 
日々の場面を浮かべ 
 ....
仕事から帰ると嫁さんが 
「はい、これを見て!」と新聞を手渡した 

※今週の本・Top10※ 
1位… 
2位… 
3位柴田トヨ「くじけないで」 
4位… 
5位… 
6位柴田トヨ ....
この世に生まれてから 
今日に至るまでの一日々々を 
風に捲られてきた暦は 

人生の旅路の果ての
終着駅に至るまで 
捲られる暦は 

どれほどの厚みだろう――? 

産声をあげ ....
薄茶けた昭和の古書を開いて 
ツルゲーネフの描く 
露西亜の田舎の風景から 

農民の老婆の皺くちゃな手は 
搾りたてのぶどう酒が入った器と 
焼き立ての丸い{ルビ麺麭=パン}を 
時を ....
雨の降る公園で 
ずぶ濡れのまま、しゃがみ 
小石を手にした少年は 
地面に絵を描いていた 

通りすがりの僕は 
吸い寄せられるように、公園に入り 
少年の傍らに、しゃがみ 
すっぽ ....
手にした鉛筆に宿る(こころ)が 
白紙に綴る言葉で語り出す時 
柱に凭れて腰かける 
青い瞳の人形は、口を開いた 
日々それぞれの 
場面々々に  
直観の行為、を積み重ねよ―― 

行けば行くほど・・・ 
動けば動くほど・・・  
一つの○い出逢いの場に 
日向はあふれ 

あなたはそこで{ルビ ....
年賀状の写真から 
親戚の一歳のこどもが 
すくっと立って、こちらに 
きょろりとした目で
新年の挨拶をする 

その夜 
嫁さんが皿を洗う音を聞きながら 
一足お先に布団に入った一歳 ....
細長いのっぽビルの 
1階から23階へ 
光のエレベーターは昇りゆく 

23階から1階へ 
光のエレベーターは下りゆく 

祈りとは 
両手をそっと重ね 
天と地をつなぐ交信である ....
背筋を伸ばしたスタンドの顔が 
ジイドの古書の開いた頁を照らす時 
長い間つけていない 
TV画面に映る自分の顔と、目があった 
暗闇の航路を照らすあの灯台に
あなたは、詩人を観るだろう。 
老人ホームで百歳のお婆さんが旅立ちました 
「若い頃桜島が噴火してねぇ・・・ 
 首輪をつながれた愛犬の悲鳴が 
 今も聴こえるんだよ・・・   」 
遠い昔に世を去っても 
お婆さんの心に ....
年の瀬の上野公園は 
家族づれの人々で賑わい 
僕等は3人で 
枯れた葦の間に煌く 
不忍池の周囲を歩いた 

ゆくあてもないような僕等の歩みは 
本郷へと進み 
詩友Fの朗らかな顔に ....
今迄の僕は 
どれほど多くのまなざしに
みつめられてきただろう   
どれほど多くの手に 
支えられてきただろう 

今、僕は、ようやく 
幹の内側からいのちの歓びを{ルビ呻=うめ}くよ ....
なかなかはいはいしなかった周が 
ある日突然、棚に掴まり立ちあがった。 

「すごい、すごい」 
諸手を叩いて、僕は言う。 

「ぱ・・・ぱ・・・、ぱ・・ぱ・・」 
こちらを向いて、周が ....
江戸の町を外れた木々の緑の林道を 
刀一本脇に差し 
首輪を繋いだ愛犬つれて 
{ルビ悠々=ゆうゆう}と風を切り 
西郷どんは、ずんずん歩み往く 

勝海舟の願いを聞いて 
江戸の戦火を ....
帰りの電車に揺られながら、頁を開いた 
一冊の本の中にいるドストエフスキーさんが 
(人生は絶望だ・・・)と語ったところで 
僕はぱたん、と本を閉じて、目を瞑る 

物語に描かれた父と幼子を ....
晩飯のおかずを箸で摘み 
炒めたもやしを、食っていた。 

一本の長く萎びたもやしが 
「風」という文字になり 
誰かの顔のように 
皿にへばりついて、僕を見た。  

もしかしたら  ....
服部 剛(1993)
タイトル カテゴリ Point 日付
百年の夢 自由詩413/3/13 23:09
チャップリンの友情賛歌 自由詩313/3/13 22:56
ありがとうの星 自由詩813/3/8 19:03
希望の芽自由詩413/3/8 18:54
遠吼え 自由詩313/3/8 18:24
休日の過ごし方 自由詩4*13/3/3 20:27
あちらとこちら 自由詩4*13/3/3 20:07
蟻の心 自由詩6*13/3/2 20:35
道化師の耶蘇 自由詩113/3/2 19:27
ある哲学者との対話 自由詩2*13/3/2 19:23
旅人の本 自由詩6*13/2/20 18:46
なめくじ親父 自由詩14+*13/2/19 23:42
紙のスクリーンー私の詩ー 自由詩413/2/19 23:28
柴田トヨさんの声  自由詩6*13/2/14 23:50
日捲りカレンダー自由詩3*13/2/14 23:32
老婆の麺麭自由詩8*13/2/12 21:59
ペガサスの瞳  自由詩3*13/2/12 21:40
人形ノ声 自由詩113/2/12 21:24
木のひと自由詩5*13/2/8 23:55
はつ夢 自由詩3*13/2/8 23:29
ヨコハマの青い夜景ー献杯の詩ー 自由詩4*13/2/6 22:24
自画像 自由詩5*13/2/6 22:09
灯台ノ道 自由詩6*13/2/6 17:52
愛犬の声 自由詩8*13/1/28 21:53
卵の音 自由詩6*13/1/25 23:38
いのちの歓び 自由詩8*13/1/21 21:03
喜びの日 自由詩5*13/1/21 20:52
西郷どんは今日も往く 自由詩6*13/1/17 22:45
天使の声 自由詩10*13/1/14 22:28
風の顔 自由詩6*13/1/13 21:59

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