熱血上司は耳をまっ赤にして 
デイサービスのお年寄りを
皆送り終えた、スタッフの中へ 
ふつふつとやって来た。 

「なぜ敬老祝いの紅白まんじゅうを 
 ○○さんに届けないいぃ…!! 」  ....
ごろごろ、ぴか、どかーん 

遂に熱血上司の雷が、頭上に落ちた。 
焼け焦げた姿のまま、そろ…そろり 
逃げ帰ろうと思ったが 
見えない糸に背中を引かれ 
くるり、と引き返す。 

熱 ....
山桜を眺めると、落ち着いてくる 
白い花々は、何処かうつむいているから。 

山桜を通り過ぎると、落ち着いてくる 
派手さは無く、思いをそっと抑えているから。 

遥かな国の方向へ 
さ ....
金の夕陽を反射して 
仄かなひかりを増しながら 
炎の{ルビ矜持=きょうじ}を秘めている 
稲穂の姿に、私はなろう 
友よ、{ルビ覇気=はき}を以って 
日々の場面へ 
いざ、突入せよ―― 
寒暖を繰り返しながらも 
季節は、僕等を乗せた舟のように 
羅針盤の指す方向へ 
今も流れているのでしょう 
異国の日本で差別に苦しみ 
生き延びようと闘った果てに  
牢屋に入った外国の人 

地上に出た新たな日々で 
日本語学校に通い始め 
ある日、掛け算の九九を覚えた 

「3×8は ....
{ルビ深閑=しんかん}とした井戸の底で 
今夜も私は、{ルビ蹲=うずくま}る。  

遥か頭上の丸い出口の雨空に 
嵐はごうごう、吹き荒れて 
木の葉がはらはら、鳴っている 

遥か ....
赤・白・黄色の器を 
ほわっと開いて 
ちゅーりっぷが咲いている 

通りすぎゆく人々の上に 
そっとそそがれる 
天の歌を受け取り 

嬉しそうに 
細い茎を揺らして 


 ....
あなたはそこに 
じっと佇んでいる 
ひとりの貝 
そっと口を開いた奥に 
光の{ルビ珠=たま}を秘めて 
闇をあまねく照らし出す 
――再び発つ、と書いて「再発」という―― 

    * 

「人間はふたたび起きあがるようにできているのさ」 
いつも眼帯をしてる{ルビ達磨=だるま}診療所のヤブ医者は 
片っぽうの目で ....
晴れた日のアスファルトは 
優しい日射しも、照り返す 

雨の日のアスファルトは  
小降りの粒も、無数に弾く 

土のこころを知るならば 
土のこころを知るならば 

空の言葉は我 ....
精子の姿は、魂に似て 
お玉杓子は、音符に似て 
もし、魂が音符なら 
メロディは 
五線譜を泳ぐでしょう 

無数の精子と精子の競争を 
勝ち抜いた選ばれし精子よ 
 
君は辿り着 ....
渋谷の公衆便所に入ったら 
「ほらおとっつぁん、チャックを閉めて」と 
初老の息子は傾く体の親父を支えて、言った。 

なんとか息子に支えられ 
よたつく親父の背中には 
(いたる)と3文 ....
「あんた、マフラー飛んでるよ!」 

ホームのベンチから立ち上がり、叫ぶ男。 
首を後ろに振り向いて、道を戻ろうとする女。 

ぶおおぉん――… 
ホームに入った電車が視界を、遮った。 
 ....
手にした筆で 
ま白い半紙に ○ を、描く。  

○から世界を覗く時  
自らの高鳴る鼓動が聞こえ…  
今・息を吸うては吐いている
いのちの不思議を思う 
うっとりと瞳を閉じて 
光の石を両手に乗せて 
立っている円空さん   

静かないのちの歓びが 
体の隅々まで葉脈を巡らせ  
行き渡っているようです 

森に佇む木の体  
日向 ....
ひとりの木の中に 
微笑み坐る、仏がいる 

人という木の幹の中に 
両手をあわせる、仏がいる 

円空さんが無心で彫った 
木の像が、幾百年の時を越え 
何かを語りかけるように 
 ....
伊東の老舗・東海館で 
和室の窓外に、ゆらめく川の{ルビ水面=みなも}を 
一羽の白鷺が横切った 

一枚の枯葉が今 
枝先を離れ、ゆらめく川の水面へ 
身を{ルビ翻=ひるがえ}し宙を舞う ....
暗がりの映画館で 
白黒のスクリーンには 
だぶだぶの燕尾服に
しるくはっとのチャップリン 

ふらりと現れた酔っ払いと 
ふとしたことから口論になり 
胸ぐらつかみ、胸押しあい、もつれ ....
今日という一日に数え切れない
(ありがとう)が、隠れている。  

よく晴れた日の夜空に 
いつのまにか姿を現す 
あの星々のように―― 
石巻の仮設住宅に住む 
Tさんに新年の電話をした 

「あけましておめでとうございます 
 今年もよろしくお願いします  」 

「いよいよ来月から 
 津波に流された場所に、もう一度  ....
ある日、届いた封筒から取り出した紙は 
「わんニャン展」のお知らせで 
三日後にみなとみらいの地区センターの 
展示会場に入るや否や 
平日の人もまばらな空間に 
{ルビ木霊=こだま}する… ....
無精者ゆえに 
手の爪は時折切っても 
足の爪はしばらくほったらかしで 
気づくとひと月過ぎていた  

風呂あがりの軟い爪を 
ぱち、ぱち、と 
広げた新聞紙に、落とす。 
(これを ....
箱のカバーから、背表紙を指で摘み
中身の本を取り出して  
カバーは向かいの空席の、あちらに 
中身の本は目線の下の、こちらに 
置いてみる 

いつか人が(体を脱ぐ)のは 
こういうこ ....
蟻は匂いのある方へ往く   
一瞬、静止して 
触角をぴくり震わせ 
再び――無心に進む
 
(黒い背に小さな太陽を映して)

日常にふと佇む、僕も 
蟻の心で 
何かを受信しようと ....
ある人は白隠禅師の絵を観て、呟いた。 
「ルオーが観たら、何と言うだろう」 

河童のように禿げた頭と 
あばら骨の浮き出た体で 
髭ぼうぼうのお釈迦様 

美術館の空間で 
ひと ....
食卓に置かれた長方形の皿に 
横たわる、くろい目の秋刀魚は  
いつか世を去る 
私の象徴として、この口に入る 

   * 

日常の素朴な場面を絵に描いた 
一枚の布をバケツの ....
みつめれば、みつめるほど 
世界は語る本となり 
行間の道で草花の囁く秘密は 
旅人の背に、託される 
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
服部 剛(2011)
タイトル カテゴリ Point 日付
まんじゅう事件 自由詩4*13/5/3 19:09
夢の絵 自由詩3*13/5/3 18:53
桜並木の川 自由詩8*13/4/28 22:07
稲穂の人 自由詩213/4/28 21:55
舞台へ続く、通路を歩く自由詩013/4/28 21:42
航路 自由詩413/4/26 23:28
愛の数式 自由詩213/4/26 23:24
井戸の底にて 自由詩6*13/4/16 20:52
春の日溜り 自由詩3*13/4/16 20:47
自由詩4*13/4/16 20:38
達磨診療所 自由詩8*13/4/4 21:54
空の言葉 自由詩4*13/4/1 22:40
精子の旅 自由詩5*13/4/1 22:30
渋谷の公衆便所にて 自由詩613/3/22 20:44
人間の声 自由詩413/3/22 20:31
円窓 自由詩413/3/17 20:58
光の石 自由詩513/3/17 20:46
円空さんの声 自由詩313/3/17 20:32
百年の夢 自由詩413/3/13 23:09
チャップリンの友情賛歌 自由詩313/3/13 22:56
ありがとうの星 自由詩813/3/8 19:03
希望の芽自由詩413/3/8 18:54
遠吼え 自由詩313/3/8 18:24
休日の過ごし方 自由詩4*13/3/3 20:27
あちらとこちら 自由詩4*13/3/3 20:07
蟻の心 自由詩6*13/3/2 20:35
道化師の耶蘇 自由詩113/3/2 19:27
ある哲学者との対話 自由詩2*13/3/2 19:23
旅人の本 自由詩6*13/2/20 18:46
なめくじ親父 自由詩14+*13/2/19 23:42

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