もし――凸凹な
パズルのピースである、僕等が
舞台の上でスクラムを組んだら

明日へ光を放射する
一枚の絵画になるだろう  
久々に一人で実家に帰る、晩
何処か名残り惜しく
幼い息子の肩を抱きつつ
嫁さんに少々草臥れた足裏を揉んでもらう。

  *

久々におふくろの味で腹を満たした、朝
何処か名残り惜しく
 ....
これから幕を開ける
旅の予感を胸に
玄関のドアを開き
月夜の散歩に繰り出す

路面に照らされた
我が影は
我であり
我で無い…誰かのような

いずれにせよ――宇宙に只一人の僕
で ....
私は、白波。
晴天の大海で、一人
遠くから呼ぶ
あの太陽
の熱い眼差しを身に受けて、踊り上がる
私は、白波。

瞬時に見渡す、海面、あちらこちら
それぞれの、個性の、白波等
それぞれ ....
横浜・野毛の老舗「村田屋」の座敷にて
鰯丼の傍らに、置いた
味噌汁の真ん中に
豆腐がひとつ、浮いている

(天井のらんぷを、小さく映し)

澱んだ味噌汁の、只中に
くっきりと、立体的に ....
遠い異国のサクラダファミリア
風変りな教会・巨大な{ルビ獣=けもの}
ガウディの亡き後――今も尚
残された人々の手で創られているという

建物は、ひとりの生きものかもしれぬ
一人ひとりの人 ....
俺は、風を探している。
退屈極まり無い日々を
ぶおおおうっと一掃する、一陣の風を。

――それは、生きてる本を
  開いた頁のすき間から、吹き
――それは、熱いライブを
  終えた無人の ....
私は自分の体温を知らない。
もし、精神の熱があるなら
暖炉の闇に、火をくべて
――私の熱は昇るだろう。

日常の36°5を演じる
仮面に隠れた炎を燃やし
私は私に、火をくべて
――自ら ....
春風に舞う、花吹雪の内側に
激情を秘める…桜の心

そ知らぬ顔の我が精神は
平熱のまま、何者でもなく
花吹雪の傍らを過ぎ往く

金色の風は
あの坂道さえも越え
私を明日へ運ぶだろう
 ....
道の途中の四辻にて
{ルビ運命=さだめ}のように、二人は出逢う

――旅に出るか
――はい

芭蕉と曾良の同行二人は
見送る人々のまなざしを、背に
(川の畔に風は吹き抜け)
旅の小舟 ....
六本木の美術館に、足を運び
蕪村の水墨画の風景で
「東屋に坐るひと」が聴く
滝の音に――耳を澄ます頃

ポケットに入れた携帯電話がぶるっ…と震え
展示スペースの外に出て
「もしもし」と、 ....
日々の芝居に疲れた、夜は…
ちょい横道に逸れて
路地裏のBarの
ドアを潜り――仄暗い
カウンターに、腰かける

旅の途上のおいらだが
今まで越えた峠を、指折り数えりゃ
一つ・二つ・三 ....
私は犬の鼻が欲しい。自分の餌を求める
ままに進む、あの(黒い鼻)が――たと
え犬の鼻を持てなくとも、どうやら人の
第六感には、あの鼻がうっすら内蔵され
ているらしい――今日から私は自らの内
 ....
老舗のジャズ喫茶・ちぐさのドアを開いて
店内の古びた椅子に腰を下ろし、生麦酒を
一杯―― がさっ…! 発泡スチロールの板
に貼りついた Count・Basie のモノクロ
ーム写真が腹の上に、 ....
モナリザの目は、妊婦の目。
腹に掌をそっとあて
――遠い明日をみつめるような
――胎内の子を、見守るような

モナリザの目は、母なる目。
絵画は幾世代も旅をして
今日も世界の何処かで、出 ....
林に入り、風に呼ばれ
目の前に立つ
木の中に渦巻く、年輪と
私の中に渦巻く、運命は
{ルビ縁=えにし}の糸で結ばれ

――遠い記憶は甦る

渦巻く宇宙を身籠っている
木の心と
人の ....
窓から仄かに日の射す部屋で
幸福の手紙を綴る少女は、顔をあげ
無心でキャンバスに向かう男を
ひと時――みつめる

少女のまなざしは
幾百年を経て
遠い異国の美術館を訪れた、僕へ
届くこ ....
日向の床の足もとで
埃を被ったプラグが、独り
あの電流につながる場所を探してる

――僕は、プラグだ  
テレビの台に、よじ登り
画面の前で「おかあさんといっしょ」を
見ていた3才の周が

  ぴょ―――ん

次の瞬間、ケガの防止に備え
台の下にずらしておいた、ソファが
後ろに飛んだちっこ ....
日々の道に転がっている
いくつもの…丸石や尖った石

どちらを拾うか問われているが
世の重力に押され、屈む私は
つい、感情に流れ
尖った石を、手にしてしまう。

尖った石を拾いそうにな ....
手を広げ…じっとみつめてごらん
言語ではない太古の温もりを
こちらに語りかける
生きものに見えてくる  
集まって来る…不思議な磁力に吸い寄せられて
それぞれの日々の荷物は何処かに置いて、渋谷
駅のhomeを下りて、改札を抜け、宮益の坂
を上った途中の路地の地下室へ

それぞれの笑顔
それぞれ ....
一本道の白線が
遥かな闇の向こうへ――伸びてゆく

若人よ、汝の信じる道を
何処までも――そのままに

夜の靴音を高らかに鳴らし、往くがいい  
遠藤周作の「イエスの生涯」を読み終え
僕は本をぱたん、と閉じた
(密かな息が頬にふれ)

本の中で十字架にかけられ
{ルビ頭=こうべ}を垂らし、息絶えたひとの想いは
{ルビ肉体=からだ}を ....
夜――母が机にそっと置いた麦酒を呑み
頬を赤らめた兄はじっ…と目を閉じ

向かいの席の母もまた、{ルビ面=おも}を上げ
兄を見つつも…掌で涙を隠し

傍らに坐る、幼い私は泣くまじと
兄を ....
夢追い人よ
与えられた今日の日を
踏み台にして
空に向かって、翔べばいい  
あばずれ女が10万ルーブルの札束を
暖炉の炎に、投げ込んだ。

自らの純愛を置き去りに
去りゆこうとする女の狂った有様に
身を震わせる白痴の男の
頬にはひと筋の涙が伝い…

暖炉の周囲 ....
出先の喫茶店で「童心」がお題の
コラムを書いてから、自宅のママに電話した。

――じゃあ、読むよ。
――今、周に聞かせるからちょっと待って。

ママが携帯電話の音量をあげてから
できたて ....
――どうすれば、私は私になれるのか?

日々の舞台を演じる自らの
配役について、想い巡らせていた。
老舗の名曲喫茶にて
ショパンの夜想曲を聴きながら。

ぷつぷつ…と、ノイズ混じりのレコ ....
僕は崖の上に、立つ。
崖の上に立てば、あの風が吹く。
眼下の海の{ルビ潮=うしお}を見れば
意気地無しの足は、すくむ。
すくむからこそ二本の足で、僕は立つ。
わなわなと生に震えながら。
へ ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
Vision 自由詩515/4/29 2:24
名残り・・・について自由詩415/4/20 23:59
月夜自由詩6*15/4/20 23:38
海の合唱自由詩515/4/20 23:20
夕餉の匂い自由詩515/4/5 21:13
自由詩315/4/5 20:54
風の童子自由詩415/4/5 20:38
自由詩415/4/2 22:52
春の夕景自由詩215/4/2 22:38
舟にのる自由詩615/3/31 23:54
日々の味わい自由詩415/3/31 23:38
おいらに乾杯自由詩315/3/27 23:16
黒い鼻自由詩315/3/27 23:01
黄泉のジャズマンとの対話自由詩115/3/24 23:58
モナリザの目自由詩3*15/3/23 19:11
木の記憶自由詩5*15/3/20 18:51
幸福の手紙自由詩215/3/20 18:40
黒いプラグ自由詩615/3/13 23:05
父の祈り   自由詩515/3/13 22:55
石の顔自由詩415/3/13 22:20
自由詩515/2/28 23:59
Home自由詩615/2/25 23:54
靴音自由詩215/2/22 22:01
旅人自由詩315/2/22 21:45
無言歌自由詩515/2/22 21:39
無題自由詩315/2/13 23:42
幸福の秤  自由詩315/2/13 23:37
息子の教育自由詩14*15/2/11 23:48
ショパンの声自由詩415/2/7 18:45
滑稽な顔自由詩315/2/7 18:30

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 
0.09sec.