日常の何でもない場面の空間に 
ふと、穴があくことがあり 
光の手が(こちらへおいで)と 
私を招いて、呼びかける 

瞳の色が失せた時も 
その手を見ると 
心臓はめらめら燃えて 
 ....
体の無い死者が描いた絵を 
体のある生者は、額縁に    
重ねるだろう 

生者の描いた絵は 
死者が透きとおった額縁に 
重ねるだろう 

震災から一年後 
旅人の僕 ....
夜、自分の部屋に入り 
スタンドの灯をともし 
広げた日記のスクリーンに 
「今日一日」を映してみる 

いちめんの白紙から 
日中の妻の声が聴こえてくる 
「周はパパが好きなのねぇ」  ....
自分の好きな時間割をつくろう 
自分の好きな勉強をしよう 
(チャイムとは、心の中に響くもの) 

ほんとうの時間割は 
先生にもらうものじゃない 
ほんとうの学校は 
決まった通学路の ....
19年前にお線香をあげた 
尾崎豊さんの実家に行ったら 
雨戸と鍵が閉まっており 
古い家はひっそりと沈黙していた 

「せっかく遠くから来たのにねぇ 
 ゆたちゃんのお父さんはご高齢で  ....
車で信号を待つひと時は 
役者が舞台にあがる前の 
あの瞬間、に似ている 

交差点を 
右から左へ、左から右へ 
車はゆき交い 

のたり、杖をつくお爺さんと 
たたた・・・と駆け ....
在りし日の祖母の部屋にて 
スタンドの灯をぽつんと点けて 
幼い頃に玩具で遊んだ 
炬燵の机の細かい傷を 
じぃ・・・っとみつめた

向かいの座布団の上から 
からだの無い 
祖母のに ....
駐車場に停まった
車の助手席から眺める 
スーパーの硝子の向こうで 
ベビーカーを押しながら 
おむつを買っている、妻の姿 

長い間、出逢わなかった 
二つの道が一つになっている 
 ....
庭にじっと佇んで 
土に根を張るあの花は 
いつのまに 
こちらに蕾を開くでしょう 

時というものが 
ぴたりと止まった
{ルビ永遠=とわ}ならば――? 

湖上にぽつんと浮かび  ....
食卓の上に置かれた 
一つの{ルビ匙=さじ}は 
天井のらんぷの灯を映し 
遥かな光をのせている 

この右手を同じ形にして 
そっと宙に、差し出してみる 
目の前に、一本の棒がある。 

誰も高飛びをしろとは言わない 
ただ、越えねばならぬ。 
向こう側に、行かねばならぬ。 
誰もお前の美しい技を待ってはいない 

目の前の、一本の棒を見る ....
一つのものをじっと視ると 
目が熟してゆく 

机上に置かれた 
何の変哲もないコップに宿る 
一つの目が、こちらを視ている 
目の前にまっさらな木の板がある。 
ペンを持つ手があらわれ 
中心に名前を書いていった 

それは一つの遠い約束。 

生まれるよりずっと昔から 
何者かに記されていた 
あなたの名前 ....
地下鉄のホームに 
吹き抜ける風の方に 
貼られたカラー写真の新聞から 
「オリンピックメダリスト・銀座でパレード」に 
押し寄せた人波の歓声が聴こえてきた 

夜明けと共に、眠い目をこす ....
人はそれぞれの会社と、契約する。 
もっと大事な、契約があるかもしれない。 

五感を越えた 
こころの{ルビ襞=ひだ}に沁み渡る 
天の声 

(あなたに託された夢を、吟味せよ――)  ....
いつか何処かで――  
あなたに逢った気がする 

あなたのお母さんと 
歌に生涯を捧げたあなたの思い出を 
初めて語り合った日の夜 

生前のあなたも来たという 
故郷・朝霞にある  ....
あなたの瞳に、僕が映る 
僕の瞳に、あなたが映る 

あなたの中に、僕はいる 
僕の中に、あなたはいる 

あなたの内に、天はあり 
僕の内に、天はあり 
天の内に、僕等はいる 

 ....
嫁さんと周に駅まで送ってもらい 
仙台行きの新幹線に乗る前 
待合室で一人になって、はじめて 
(今日で周は一歳か)という 
思いがじわり・・・と胸に広がった 

毎日嫁さんのやりくりで  ....
木々の葉が周囲に
ざわざわ鳴っている 
{ルビ藁葺=わらぶ}き屋根の山門が 
中天の日に照らされている 

あの門を{ルビ潜=くぐ}った向こうの 
石段を上ってゆけば 
一体何処へ導かれ ....
思いをこめた白球を、無心で投げる。 
霧の向こうから返ってくる白球を、両手で捕る。 
霧の幕が開いてゆく――空白の明日を見据え 
もう一度、白球をにぎる。 
あなたはその(目)を視たことがあるか? 
私はその(目)を視たことがあるか?

ほんとうの(目)はいつも 
鳥の羽ばたく虚空から 
世界の物語を眺めている 

私はあなたを視たことがあろ ....
周の誕生祝いをした夜 
旅に出て、乗った列車は 
ぐんぐん加速して 
夜の旅路の線路を走る 

周がこの世に生を受けて 
「一歳」という時が
すでに始まっている  

背後に遠のいて ....
2階の窓の下から
ざあっざあっと
枯葉を掃く音が聞こえる 

朝になると
向かいの家のおじいさんが 
箒ではく音だ 

日々の雑念というゴミが 
すぐに溜まる僕の心も 
あのおじい ....
わたしの中に 
ひとりの処女がいる 

わたしが生まれる前の 
まっさらな記憶の目が 
前を見る 

そうして素朴な場面は 
いくつもの不思議を
身ごもるだろう 

生まれる前と ....
茅ヶ崎駅近くのライブハウスにて 
カウンターに並んで座った 
詩友の欣(きん)ちゃんは、店員の女の子に話しかけた 

「名前、なんてゆうの?」 
「かれんです、名前負けしてるんですぅ」 
 ....
葉は、枝があるから葉であり 
枝は、幹があるから枝であり 
幹は、根があるから幹であり 
それらおのおのがつながりあい、初めて 
歓びのうたを風に囁く
ひとりの木 
枝葉の手のひら達を 
 ....
若くして世を去った歌姫よ 
あなたの面影が今も振り続ける 
夢の旗

透きとおったその手と 
肌色のこの手で
握りしめ 
精一杯、振り続けよう 

一つになった僕等の魂は輝きを増し  ....
心の中のゴミを掃く 
ざぁ、ざぁ、という 
あの音を聴け 

塵一つ無くなった心の中の 
真空の庭に 
ひかりの鳩が降りてくる 

そうしてひかりの{ルビ嘴くちばし}は 
開き 
 ....
静かな川の{ルビ水面=みなも}は波紋を広げ 
今日もざわめき歌っている  
その上に架かる橋を 
誰ひとりそ知らぬ顔で渡っている 
帰り道のパン屋で
硝子越しに覗いては 
ランプに照らされていた 
こんがり丸い窯焼きパンを買い 
紙袋に入れてもらう 
今日は、給料日。 

10回の高級料理と 
たった1個の窯焼きパ ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
呼びかけ自由詩612/11/17 22:13
更地のひまわり 自由詩512/11/17 22:03
絵日記 自由詩512/11/16 20:04
夢の教室 自由詩512/11/16 19:55
夢のつづき 自由詩312/11/16 19:38
交差点にて 自由詩1212/11/9 23:23
祖母のにおい 自由詩112/11/9 23:06
家族 自由詩412/11/9 22:58
花の時間 自由詩212/10/24 23:59
匙の手 自由詩412/10/24 23:52
向こう側  自由詩212/10/24 23:45
ものの目 自由詩312/10/15 20:24
名前自由詩312/10/15 20:20
聖火 自由詩212/10/15 20:14
契約 自由詩512/10/8 23:55
盃の音ー蕎麦屋・吾平にてー 自由詩712/10/8 23:47
自由詩512/9/23 23:22
約束 自由詩612/9/23 23:14
山門 自由詩712/9/20 23:25
対話自由詩312/9/20 23:15
目について 自由詩612/9/3 23:47
おさなごの夢自由詩212/9/3 23:31
おじいさんの箒 自由詩512/8/28 23:00
無題自由詩212/8/28 22:46
貯金の音 自由詩512/8/22 21:10
歓びの木 自由詩312/8/21 23:01
夢の旗 自由詩212/8/21 22:50
ひかりの鳩 自由詩512/8/17 21:49
橋の上自由詩212/8/17 21:38
幸いの味 自由詩2*12/8/13 21:56

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