道の先には置き忘れた  
少年の靴が、ひとつ   
夏の日に照らされ輝いていた。  

靴は近づき、通りすぎ、遠のいて――  
ふり返るとやっぱり輝いている  
あの少年の靴  

い ....
どうすれば僕は  
急坂さえも一気にのぼる  
機関車男になれるだろうか?  

この腹に内蔵された  
エンジンの蓋を開けたら  
思いの他にぼうぼうと     
炎は燃えていたのです ....
目の前に、焼きたての 
丸い{ルビ麺麭=ぱん}がある。    

何の変哲もないその麺麭は 
その少し凹んだ丸みは 
その味わいは、きっと 
世界の何処にもない
たった一つの麺麭である。 ....
無数の髪は今日も伸び 
目は開き 
耳は聞き 
鼻は吸い 
口は吐く 
首は支え 
手は掴み 
左の胸は一生涯とくり、とくり、と脈を打ち 
腹は昼頃、鳴るだろう 
そしてお尻はもよお ....
心を見た人はいません。  
心に手をふれた人もいません。  
それでもみんな 
心の場所を知っています。 

もしも心がなかったら 
今日のあなたは、笑わない。 
昨日の私は、涙を流さな ....
生後数ヶ月で両目を摘出してから 
声と言葉を発しなくなった彼女は 
木の世界の土壌に根を下ろし 
大人になってゆきました 

ある日、遠くから来た旅人は 
人に話せぬ深い悩みを打ち明け 
 ....
僕がある記事を書いて 
入ったお金を 
そのままぽんと、妻に渡そう。 

なぜなら妻は、もうすぐ2歳の周を抱えつつ 
僕の書いた原稿を活字に打ってくれたり 
郵便ポストに入れたり
手づく ....
緑の庭の階段で 
座る少女に 
覆いかぶさる葉群から 
木漏れ日はふりそそぎ 

何かを両手に包む、少女は 
嬉しそうにこちらをみつめ 

テラスの椅子は
かたかたっ…と風に揺れ 
 ....
暑中お見舞い申し上げます――  

越後湯沢の詩友から届いた風の 
便りには自筆で風鈴の絵が描い
ており、葉書の真中の空白から 
ちり〜ん
と風に靡く紙の下から密やかな
鈴の音が、鼓膜の ....
明日は誰にもわからないので 
次の{ルビ頁=ページ}の空白に 
栞を挟み、ぱたんと閉じて 
日向の机に置いておく―― 
僕、という人の 
頭蓋骨にぴし、と亀裂が入ったら 
無数の 存在 という二文字があふれ出て 
ばらら、ばら、ばら 
僕の周囲に散らばり、落ちた。 

ふいにしゃがんだ、僕は 
 存在 と ....
雨は、あなたを育むでしょう 
私もいろいろな雨に、降られました 
きりさめ 
にわかあめ 
長い長い雨だれの音が 
ぽつり、ぽつり、と滴るごとに――  
潤う土の根を伝い 
茎を伝い 
 ....
谷中ぎんざの通りには 
石段に腰を下ろした 
紫の髪のお婆さんが 
せんべいを割り 
群がる鳩に蒔いていた。 

向かいの屋台は 
木の玩具屋で、おじさんは
「ほれっ」とベーゴマを   ....
私は人に、まかせます。 
一つの大事なお仕事を。 

おまかせするということは 
人のこころにいらっしゃる 
神におまかせすることです。 

そうして神のお返事は 
日々、目の前にあら ....
朝、カーテンを開いたら 
眼下に広がる野原に幾千人のブタクサが 
黄色い房の身を揺らし皆で何かを言っている。 

物書きを志す{ルビ故=ゆえ}に  
家族に慎ましい日々を送らせてしまっている ....
口下手で悩んでいた、僕は 
ある日突然、目の前にいる人が 
?の文字を秘めている 
黒い人影に視えてきた 

その人の瞳の奥にある  
不思議を求め 
些細な一つの質問で 
もしも、口 ....
名曲喫茶ライオンの店内は  
五十年前のコンサートが流れ 
ブラームスの魂が 
地鳴りを立てた、後の{ルビ静寂=しじま}に―― 

(ごほ…ごほ…) 

無名の人の、{ルビ堪=こら}え切 ....
風を入れよう 
部屋の窓を開けて―― 
カーテンが膨らみ 
風が巡れば 
生々発々と充ちてくる 
我が心はまっさらな 
空になる 
弘法の池の隅にある 
小さい洞窟の中に 
水に身を浸し、両手を合わせる 
弘法大師が立っていた 

揺らめく水面に映る 
弘法大師は目鼻の無い顔で 
鏡の世界から
こちらを視ていた 
 ....
心象の野原に並ぶ 
秋桜の群のひとりは 
しきりに、揺れて 
無音の声で僕をみつめ、囁いている 

花弁の淡い唇をみつめるほどに 
野原は時のない国になり―― 
若き日の父母の間に 
 ....
僕をみつめる妻の目に、炎がめらめら燃えている。 

「人の意見に惑わされずに 
 あなたの道を、往きなさい」 

「椅子の足の一本が折れたらどうなる? 
 あなたの姿を、信じなさい」 
 ....
梅干の種には、味がある。 
檸檬の種にも、味はある。 
誰にも固有の種があるように。 
高層ビルの屋上から 
ロープに吊り下げられた 
ゴンドラに乗り 
清掃員は10階の窓を拭く 

(決して、下を見てはならない) 

気紛れな北風に 
ゆさぶられ 
風の刃は頬に冷たい ....
この胸にぽつん、と備わっている 
暗闇のメトロノームは 
絶え間なく、高鳴ってゆく―― 
もし、緑の台の上に 
停まっている、黄色い玉が 
あなたなら 

男が狙いを定めた、棒の先に 
打とうとしている 
あなたの{ルビ運命=さだめ}は 
一体何処へ転がるだろう? 

黄 ....
あの紅葉に燃える木の下にいってみよう 
あのみどり深い木の下にいってみよう 
あの石橋の向こうの赤い屋根の家の窓から
ひょいと顔を出して、世界を眺めてみよう  
戻ってきたら、石橋の(絵の中心 ....
「二十世紀」と「ラ・フランス」は 
親しげに肩を並べ 
(互いにちょっとの、すき間を空けて) 
顔も無いのによろこんで、佇んでいる。 

「偶然だねぇ」 
「ふしぎねぇ」 

ほの青さ ....
犬が一人きり、吼えている。  
見知らぬ国の 
誰も行ったことのない森の 
ごわごわ風に身を揺する 
名も無いみどりの木の下で 

その遠吼えは 
あまりに切なく 
心を貫き、刺すよう ....
なんだかわからない(イチモツ)を持ち、 
浮かない顔で、うす暗い町を漂っている。 
病のような、玉のような、見えないもの― 
コイツを断ち切れたら、どんなに{ルビ晴々晴々=せいせいはればれ} 
 ....
俺は 
俺以上でも 
俺以下でも 
無い 
みじめな俺も、俺。 
時折かっこイイ俺も、俺。 
どちらも、俺。 
ならば? 
悩みの全ては外面上の(夢)であり 
俺は俺として、俺を背負 ....
服部 剛(2142)
タイトル カテゴリ Point 日付
少年の靴  自由詩1213/8/31 23:38
機関車男  自由詩1213/8/18 18:55
日々の麺麭  自由詩9*13/8/13 23:34
神殿  自由詩713/8/2 23:59
地球の夢  自由詩8*13/8/1 22:39
木のひと 自由詩1013/7/23 23:39
聖銭(ひじりぜに)  自由詩313/7/23 23:22
風のひと 自由詩9*13/7/16 20:42
風鈴の絵 自由詩9*13/7/16 20:10
窓辺の日記 自由詩213/7/14 23:15
精神の木 自由詩313/7/14 23:04
水彩画 自由詩613/7/14 22:51
谷中日和  自由詩1013/6/24 21:30
まかせる 自由詩213/6/24 21:15
朝の声援 自由詩3*13/6/24 20:51
質問箱自由詩613/6/21 23:59
ブラームスの海 自由詩413/6/21 23:36
窓を開ける 自由詩113/6/20 21:41
弘法の池 自由詩113/6/20 21:37
朝の目覚め 自由詩413/6/11 22:33
NOMOの生き方 自由詩613/6/11 22:21
種子 自由詩013/6/11 22:11
窓を拭くひと自由詩213/6/8 22:18
心音自由詩113/6/8 22:05
ビリヤード自由詩213/6/8 21:58
絵画の中を歩く 自由詩10*13/6/5 23:30
果物夫婦自由詩7*13/6/5 23:19
空の波紋 自由詩4*13/6/5 23:11
悩み解消法 自由詩313/5/29 23:59
重力の在る世界で 自由詩513/5/29 23:47

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